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2007.04.30

学者もわからない?内部統制監査の意見形成論(ダイレクトレポーティングの不採用)

 こんにちは、丸山満彦です。昨日につぐき現代監査No.17の論文からです。井上善弘教授は、「日本的内部統制監査の特質」の中で、ダイレクトレポーティングの不採用の持つ意味について検討しています。すなわち、「ダイレクト・レポーティングの不採用は、ダイレクト・レポーティングを導入した場合と比較して、監査対象の範囲や監査実施・報告の方法等にどのような影響を及ぼすのか。」を検討しているわけですが、両脚にある2つの考え方について検討してみるとし、二つの説があることを示唆しています。ということは、制度が始まるのに、監査意見形成をどのようにすべきか学者も理解できていないことなのでしょうかね。。。

 
【第一説】
 ダイレクト・レポーティングの不採用ということは、文字通り監査人が内部統制監査報告書において財務報告に係る内部統制の有効性それ自体に関して意見表明をしないことだけを意味する。

 

 これは、監査人は内部統制の有効性についての経営者の判断とは別に独自に内部統制の有効性を判断するが、その結果については意見を表明しないという考え方です。
 この考え方は、監査意見形成過程はダイレクト・レポーティングを採用するかどうかには係りなく同じで、監査意見を述べる段階で、監査人が直接内部統制の有効性について意見を述べないだけという考え方です。

 

 この考え方にたつと、ダイレクト・レポーティングを採用するかしないかに係らず、実施すべき監査手続は同じとなりますから、監査コストはダイレクト・レポーティングを採用しなくてもダイレクト・レポーティングを採用した場合と論理上は同じになります。

 

【第二説】
 内部統制監査における監査対象は財務報告に係る内部統制に関して経営者が決定した評価範囲、評価手続及び評価結果にあくまでも限定され、財務報告に係る内部統制は意見表明の対象とならないだけでなく、評価対象にもならないという考え方です。
 
 この考え方は、監査意見形成過程において、経営者が選択した評価範囲が正しければ経営者が評価範囲としなかった部分については、意見表明対象とならないので、当然に監査人の評価の対象とはなりません。

 

 この考え方にたつと、ダイレクト・レポーティングを採用することにより。実施すべき監査手続はダイレクト・レポーティングを採用しない場合より減ることになるので、監査コストはダイレクト・レポーティングを採用する場合よりも減ることになります。

 

 しかし、この考え方にたつと、監査人は、内部統制の基本的要素が適切に機能しているかを判断するために、監査要点に適合した監査証拠を入手しなければならない(基準三・3・(4))、という部分の説明がやや困難となる。すなわち、内部統制の基本的要素が適切に機能しているかを判断するためには、経営者の評価結果を評価するだけでなく、経営者とは別の視点で内部統制の運用状況を評価する必要もあると考えられるからです。
=====
(4) 業務プロセスに係る内部統制の評価の検討
監査人は、経営者による業務プロセスに係る内部統制の評価の妥当性について検討する。監査人は、この検討に当たって、経営者による全社的な内部統制の評価の状況を勘案し、業務プロセスを十分に理解した上で、経営者が統制上の要点を適切に選定しているかを評価しなければならない。
監査人は、経営者が評価した個々の統制上の要点について、内部統制の基本的要素が適切に機能しているかを判断するため、実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性及び表示の妥当性等の監査要点に適合した監査証拠を入手しなければならない。
なお、業務プロセスにおける内部統制の基本的要素が機能しているかどうかを判断するに当たっては、内部統制の整備及び運用状況(ITへの対応を含む。)についても十分に検討しなければならない。
=====

 

 実務的には第一説で行くんじゃないでしょうかね。。。だって、経営者評価の範囲外で内部統制上の不備があり、それが重大な欠陥につながるような不備であり、監査人がそれを看過していたということになれば、そもそも経営者評価の範囲の決定が妥当でないということになるので・・・

 

【参考】このブログ
・2006.12.02 米国 内部統制評価と監査制度 負担の緩和

・2006.10.05 内部統制監査 米国とは違う道を歩む日本?

・2006.09.06 監査がダイレクトレポーティング方式でも言明方式でも経営者評価の手間は関係ない

・2006.08.06 監査人が「内部統制は有効であると監査意見を述べる場合」と「内部統制は有効であるという報告書の内容が適正であるという監査意見を述べる場合」の監査対象(保証又は証明対象)の違い

・2006.06.12 PCAOB監査基準2号改正の方向性

 

 

 


 

 

【過去の今日】
・2006.04.30 総務省 「職場外のパソコンで仕事をする際のセキュリティガイドライン」の公表 ・2005.04.30 「サイバーテロリズム」という言葉の乱用を批判 ・       事件は現場で起こっているんだ!でも原因は役員室にあります (2)

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