厚生労働省 パブコメ 「ブレインコンピュータインターフェースシステムの評価指標(案)」(2026.01.16)
こんにちは、丸山満彦です。
厚生労働省から、「ブレインコンピュータインターフェースシステムの評価指標(案)」について意見募集がされています。
ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)は脳信号を計測・解読し、運動機能や意思伝達を補完する技術で、BMIの一部といえますね、起源は1970年代で、AIの進化により実用化が進んできています。日本におけるBCI研究は、2000年代後半から重度障害者(ALS、脳幹梗塞、脊髄損傷など)の意思疎通支援や環境制御を主目的として進められてきているようですね...
今回のパブコメ対象は、植込み型ブレインコンピュータインターフェース(BCI)システムの安全性・有効性を確保するためのガイドラインの案です。超人的強化や疾患治療目的の神経刺激機器(DBS、RNS)は除外されています。また非植込み型・入力型BCIも対象外となっていますね。
そして評価指標は、植込み型の計測ユニットを含めた出力型 BCIシステムを利用した医療機器を対象とし、当該医療機器の製造販売承認申請に向けた評価に際して、現時点で留意が必要と思われる事項を示したものということのようです。今後の技術革新や知見の集積等を踏まえ改訂が必要なものであり、個別製品の医療機器製造販売承認申請内容等に関して拘束力を有するものではないとされていますね...
評価項目は、
- 基本的事項の評価
- 非臨床試験の評価
- in vitro (ベンチテスト)
- in vivo (動物試験)
- 臨床試験の評価
と分けられていますね...
評価項目ごとに次のように言われていますね...
(1) 基本的事項の評価
BCI システムの開発の経緯、臨床的位置づけ、開発品目の仕様、開発品目及び類似品の国内外での使用状況、装置の設計と BCI システムの原理(アルゴリズムを含む)、標準的な使用方法等を明確に示すこと。
(2) 非臨床試験の評価
非臨床試験の目的は、臨床試験実施のための倫理的・科学的に妥当な判断根拠を取得すること、及び許容できないリスクを否定することである。以下の項目を参考に、非臨床ベンチテストや動物試験等を通して、BCI システム全体及び各ユニットの有効性及び安全性の評価を、必要に応じて関連するガイドラインや認証基準等に準じて適切に行うこと。また、予想される BCI システムの使用環境条件下や使用方法において、BCI システムの性能及び安全性が維持されることを検証すること。
(3) 臨床試験の評価
1)人的要因及びユーザビリティ
BCIシステムでは、機器の誤作動や故障によらず、患者が機器を正しく使用できないことに起因するハザード(使用関連ハザード)に留意する必要がある。このためBCIシステムの臨床開発に際しては、可能な限り早期から人的要因(例えば、機器使用の手順を理解することの困難さ、機器使用前の不十分な訓練)に関する知見を得て、ユーザーインターフェースの最適化を図ることが重要である。2) 臨床試験実施の妥当性説明に際しての先行研究の要約
BCI システムの特性上、模擬信号等の非臨床試験のみで臨床試験実施の妥当性を説明するには限界がある。したがって、臨床試験の実施に際して、開発品のヒト適用蓋然性を説明するために、関連又は類似する BCI システムの先行臨床研究及び臨床試験等の情報を体系的に整理することも重要である。当該情報は、開発品の POC の根拠や安全対策の検討にも重要である。3)臨床試験
臨床試験計画の策定においては、一般的な臨床試験のガイダンス等を参考にするとともに、以下の点に留意すること。また、個人情報の取扱いについては、個人情報の保護に関する法律その他の関連法令・ガイドラインに基づき、別途適切に対応すること。
BCIシステムの構成は次のように想定されていますね...
①計測ユニット
リード線や電極、アンプ、無線通信、無線給電等のコンポーネントにより構成され、脳信号を計測する装置。主要な部分は体内に植え込まれる。②解読ユニット
計測ユニットが計測した脳信号から意図を解読するためのソフトウェアと関連するハードウェアを含む、信号処理をおこなう装置。③制御ユニット
解読ユニットが解読した結果に基づいて制御対象ユニットを制御するための信号を生成する装置。④制御対象ユニット
制御ユニットから信号を受け、最終的に BCI システムとしての効能、効果をもたらす装置等。
サイバーセキュリティ、リスクマネジメントについては、次にようになっていますね...
(1) 基本的事項の評価
13)サイバーセキュリティ
患者の行動や意思決定を第三者が介入操作するリスクを踏まえた上で、サイバーセキュリティの対策を講ずる。
参考: 「医療機器の基本要件基準第 12 条第3項の適用について」(令和5年3月 31 日付け薬生機審発 0331 第8号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知)、等14)リスクマネジメント
装置に限らず、臨床現場における事故等、ワーストケースを想定した場合の対応について検討する必要がある。
参考:JIS T 14971
なお、医療機器におけるサイバーセキュリティについては
● 厚生労働省 - 医療機器におけるサイバーセキュリティについて
基本要件基準第12条第3項
プログラムを用いた医療機器のうち、他の機器及びネットワーク等と接続して使用する医療機器又は外部からの不正アクセス及び攻撃アクセス等が想定される医療機器については、当該医療機器における動作環境及びネットワークの使用環境等を踏まえて適切な要件を特定し、当該医療機器の機能に支障が生じる又は安全性の懸念が生じるサイバーセキュリティに係る危険性を特定及び評価するとともに、当該危険性が低減する管理が行われていなければならない。
また、当該医療機器は、当該医療機器のライフサイクルの全てにおいて、サイバーセキュリティを確保するための計画に基づいて設計及び製造されていなければならない。
・[PDF] 令和5年厚生労働省告示第67号[162KB]
● e-Gov
・2026.01.16「ブレインコンピュータインターフェースシステムの評価指標(案)」に関するご意見の募集について
・・[PDF] ブレインコンピュータインターフェースシステムの評価指標(案)
これは、国立医薬品食品衛生研究所のBrain Computer Interface 利用機器審査 WGの報告書の一部ですね...
これから、ニューロテクノロジー (neurotechnology)とそれに関する倫理などの問題はこれから重要となってくるのでしょうね...
以下の資料に参考となる文献がありますね...
・2025.06.30 [PDF] 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会ライフサイエンス委員会 脳科学作業部会(第9回) - ニューロテクノロジーの倫理に関する動向について(福士 珠美(東京通信大学 人間福祉学部))
| # | 機関名称 | 国・地域 | 報告書等 | 公表年 | URL |
| 1 | Information Commissioner’s Office | 英国 | Emerging Neurotechnologies: Insight and foresight | 2023 | ● |
| 2 | Digital Future Society | スペイン | Humanistic neurotechnology: a new opportunity for Spain | 2023 | ● |
| 3 | Nuffield Council on Bioethics | 英国 | Neurotechnology Literature Review | 2024 | ● |
| 4 | National Institute for Health and Care Research | 英国 | Horizon Scanning Report: Neurotechnology for Mental Health, Healthy Ageing and Physical Disability | 2024 | ● |
| 5 | ICFG / IoNX | 欧州・米国 | Towards Inclusive EU Governance of Neurotechnologies | 2024 | ● |
| 6 | Neurorights Foundation | 米国 | Safeguarding Brain Data: Assessing the Privacy Practices of Consumer Neurotechnology Companies | 2024 | ● |
| 7 | Australian Human Rights Commission | オーストラリア | Protecting Cognition: Background Paper on Human Rights and Neurotechnology | 2024 | ● |
| 8 | US Senate | 米国 | Letter to U.S. Federal Trade Commission | 2025 | ? |
| 9 | American Medical Association | 米国 | Resolution 503 | 2025 | ● |
| 10 | European Brain Council | 欧州 | European Charter for the Responsible Development of Neurotechnologies | 2025 | ● |
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