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2026.01.08

米国 CSET A米国のAI外交戦略 - 湾岸諸国との取引から国際枠組みへ (2025.10)

こんにちは、丸山満彦です。

昨年やり残していたことをしばらく...サイバー空間と新興技術に関する安全保障政策を主導する組織である米国のワシントンDCにあるCenter for Security and Emerging Technology:CSET(安全保障・新興技術センター)[wikipedia]から公表されている報告書をいくつか紹介します... 

 

AI資源を外交に使おうという発想です。AIは広い意味でも生産性向上の不可欠な要素となってきています。現在のところAIサービスを提供する能力という意味では米国が圧倒的に有利な状況にいて、各国がそれを追いかける状況となっています。特に中国は米国の影響をできる限り避けるためにも国をあげて独自のAI開発を進めていますよね...もちろん、欧州も欧州連合がイニシアティブをとって進めていますし、英国もそうです。日本ももちろんそうなのですが、まだピリッとした感じがしないのは気のせいですかね...

さて、米国の立場からするとこの状況をうまく外交のカードとして使うことが重要となってきます。特に中国や欧州が台頭してくる前に有利な状況を作っておく必要があると言えます。そこでAI外交戦略が重要となってきているのかもしれません...

CSETが10月に公表した報告書では湾岸諸国でのAI関連の国家的取り組みについての分析を通じてAI外交戦略の立案の重要性が説明されています。特に米国の立場だと法の支配と民主主義的な価値観(ちょっと揺らぎつつあるのかもしれませんが...)をベースとした価値観とパッケージ化し、AI資源を、ここのケースに応じた1企業対外国政府という形態から、国家戦略に基づくAI外交フレームワークに基づいた戦略的な国際枠組みに変えていくことが重要となっています。要は、米国の利益のためのAI資源をどのように使うのか?ということになります。

で、この報告書での提案...

1. Establish a Structured, Rules-Based Framework for Access to U.S. AI 1. 米国AIへのアクセスに関する構造化されたルールベースの枠組みを確立する
2. Build a Layered Governance Architecture for AI Infrastructure   2. AIインフラのための多層的ガバナンス構造を構築する  
3. Align Institutional Capacity with Strategic Objectives  3. 戦略目標と機構的能力の整合化 
4. Launch an AI Cooperation Forum to Build Strategic Alignment  4. 戦略的連携を構築するための AI 協力フォーラムを立ち上げる 

もっともな話だと思います。おそらく、今後米国はAI資源を外交のカードとして利用してくると思います。そうなったときに日本はどうするのか?ということになります。

日本が取りうるオプションはいくつかあるとは思います。例えば、(1)日米垂直統合(日本が米国のAI資源の不可欠な一部になる)、(2)日本完結(日本が独自のソブリンAIをつくり運用する。ハード、ソフトとも揃える)、(3)多国間協力(多国間での連携体をつくり開発・運用する)

 

(1)はおそらく米国がYesと言わないのでありえないと思います。となると、(2)か(3)。

どちらも難しいですが、早く決めないとオプションがどんどん減っていくかもですね...

 

CSET

・2025.10 U.S. AI Statecraft - From Gulf Deals to an International Framework

U.S. AI Statecraft - From Gulf Deals to an International Framework 米国のAI外交戦略 - 湾岸諸国との取引から国際枠組みへ
Recent U.S.-Gulf AI partnerships represent billions of dollars in strategic technology deals, but they raise critical questions about governance, oversight, and long-term influence. This analysis examines four major AI initiatives with Saudi Arabia and the United Arab Emirates, discussing critical issues including fragmented oversight, technology diversion, and AI sovereignty. It proposes a framework to transform ad hoc dealmaking into principled, transparent, and rule-bound AI statecraft that advances U.S. interests, strengthens technology relationships with allies and partners, and establishes durable governance mechanisms for U.S. AI deployments abroad. 最近の米国と湾岸諸国とのAI提携は、数十億ドル規模の戦略的技術取引を意味するが、ガバナンス、監督体制、長期的な影響力に関する重大な疑問を提起している。本分析はサウジアラビアおよびアラブ首長国連邦との4つの主要AIイニシアチブを検証し、断片化した監督体制、技術の転用、AI主権といった重要課題を論じる。その上で、米国利益の推進、同盟国・パートナーとの技術関係の強化、海外における米国AI展開のための持続可能なガバナンス体制構築を実現するため、場当たり的な取引を原則・透明性・ルールに基づくAI外交へと転換する枠組みを提案する。

・[PDF]

20260105-123547

・[DOCX][PDF] 仮訳

 

目次...

Introduction 序論
Overview of Major U.S.–Gulf AI Initiatives (2024–2025) 主要な米国・湾岸諸国AIイニシアチブ概要(2024-2025年)
Microsoft–G42 Partnership (UAE, 2024) マイクロソフト–G42提携(UAE、2024年)
Stargate UAE AI Campus (UAE, 2025) スターゲートUAE AIキャンパス(UAE、2025年)
AWS–HUMAIN AI Zone Initiative (KSA, 2025) AWS–HUMAIN AIゾーン構想(サウジアラビア、2025年)
NVIDIA–HUMAIN Partnership (KSA, 2025) NVIDIA–HUMAINパートナーシップ(サウジアラビア、2025年)
Structures of U.S.–Gulf AI Partnerships 米国と湾岸諸国間のAIパートナーシップ構造
What Remains Uncertain, and Why It Matters 不透明な点とその重要性
Policy Recommendations: A U.S. Framework for an International AI Infrastructure 政策提言:国際AIインフラのための米国枠組み
Conclusion: From Transactions to Frameworks 結論:取引から枠組みへ
Endnotes 脚注

 

 

 

 

 

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