欧州 耐量子暗号への移行のための調整された実施ロードマップ (2025.06.23)
こんにちは、丸山満彦です。
一般社団法人 量子技術による新産業創出協議会 (Q-STAR) の監事をしているわけですが、先日(2025.09.09)、Q-STARとG-QuAT (国立研究開発法人 産業技術総合研究所 量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター) 共同シンポジウムに参加しました。
産官学によるエコシステムにより、技術開発(人材開発を含む)、産業創出(ユースケース開発、人材開発等を含む)、標準化を進めていっています。国内だけでなく、海外(有志国といっていましたが)との連携も含めて活発に活動している状況が理解できました。
現実的には、量子ゲート方式は超伝導、シリコン、光タイプなどを進めていくような感じですかね...それぞれの方式に一長一短があるのでそれでも、開発スピード、開発コスト、運用コスト等も含めるとどれが本命かは難しいようなかんじですかね...
自民党の総裁選がおこなわれることになったこのタイミングで林議員(官房長官)が挨拶に、懇親会には木原議員等も挨拶に立たれていたので、それなりにいろいろとあるのでしょう。
さて、政治的な話(主に政府予算?)はともかくこの分野は、各国鎬を削っている分野ですが、米国、中国、欧州、英国、オーストラリア、カナダ等もそれぞれ課題を抱えながら推進しているのでしょうね...技術人材が国の規模に比しておそらく不足している日本で、どのように成功ができそうか?というのは気になるところですね。。。
さて、量子ゲート方式によるコンピュータが実用化されると、既存の暗号が破られる可能性が一気に高まるわけで、量子コンピュータの開発を進めつつ、一方で、耐量子暗号の実装も進めていかないといけないという状況がきていると思います。
ということで、欧州の耐量子暗号移行のための実施ロードマップの紹介...
これは企業としてのロードマップではなく、加盟国のロードマップ...
すべての加盟国が、2026年末までにファーストステップに従った国内PQC移行戦略を開始し、EUレベルでの取り組みを調整することが推奨される。同時に、リスクの高いユースケースはできるだけ早く、遅くとも2030年末までにPQCに移行すべきである。さらに、量子安全アップグレードはデフォルトで有効にし、PQC移行計画は、特に推奨される「次のステップ」の実施によって、より洗練されたものにすべきである。2035年までに、 、現実的に可能な限り多くのシステムで移行を完了させるべきである。
リスクの高いもにについては、2030年12月31日までに、その他のものついても2035年12月31日までに移行。
● European Commission
プレス...
・2025.06.23 EU reinforces its cybersecurity with post-quantum cryptography
| EU reinforces its cybersecurity with post-quantum cryptography | EU、耐量子暗号技術でサイバーセキュリティを強化 |
| The EU Member States, supported by the Commission, issued a roadmap and timeline to start using a more complex form of cybersecurity, the so-called post-quantum cryptography. | 欧州委員会(EC)の支援を受けたEU加盟国は、より高度なサイバーセキュリティ技術であるポスト量子暗号技術の導入に向けたロードマップとタイムラインを発表した。 |
| Designed with complex algorithms, this is a key milestone to deflect advanced cyber threats. | 複雑なアルゴリズムで設計されたこの技術は、高度なサイバー脅威を回避するための重要なマイルストーンとなる。 |
| Henna Virkkunen, Executive Vice-President for Technological Sovereignty, Security and Democracy, said: | 技術主権・安全保障・民主主義担当執行副委員長、ヘナ・ヴィルクネン氏は次のように述べた: |
| “As we enter the quantum era, post-quantum cryptography is essential to ensure a high level of cybersecurity, fortifying our systems against future threats. The post-quantum cryptography roadmap provides a clear direction to ensure the robust security of our digital infrastructure." | 「量子時代を迎えるにあたり、耐量子暗号技術は高度なサイバーセキュリティを確保し、将来の脅威からシステムを強化するために不可欠です。耐量子暗号のロードマップは、デジタルインフラの堅牢なセキュリティを確保するための明確な方向性を示すものです」と述べた。 |
| Quantum technologies can perform complex tasks and lead to solutions for today’s global challenges, including climate change, detecting natural disasters, and finding new solutions in healthcare. The potential of quantum tech to deliver societal benefits is accompanied by risks its misuse can pose to the cybersecurity of our communications and connected infrastructure. An effective solution to these challenges is post-quantum cryptography, which uses encryption methods based on complex mathematical problems that even quantum computers find difficult to solve. | 量子技術は複雑なタスクを実行可能にし、気候変動対策、自然災害検知、医療分野における新たな解決策など、現代の地球規模課題への解決策をもたらす。量子技術が社会に利益をもたらす可能性は、コミュニケーションや接続インフラのサイバーセキュリティに対する悪用リスクを伴う。これらの課題に対する効果的な解決策は、量子コンピュータでさえ解決が困難な複雑な数学的問題に基づく暗号化方式を採用した、耐量子暗号である。 |
| All Member States should start transitioning to post-quantum cryptography by the end of 2026. At the same time, the protection of critical infrastructures should be transitioned to PQC as soon as possible, no later than by the end of 2030. | すべての加盟国は、2026 年末までに耐量子暗号への移行を開始すべきです。同時に、重要インフラの防御は、2030 年末までに、できるだけ早く PQC へ移行すべきである。 |
| In a response to the Commission's Recommendation published on 11 April 2024, the NIS Cooperation Group developed the strategy, reflecting the need for Europe to act now, as the development of quantum computers advances rapidly. | 2024年4月11日に公表された欧州委員会の勧告を受けて、NIS 協力グループは、量子コンピュータの開発が急速に進んでいることから、欧州が今すぐ行動を起こす必要性を反映した戦略を策定した。 |
| Read more information about the roadmap on post-quantum cryptography. | 耐量子暗号に関するロードマップの詳細については、こちらを参照 |
・2025.06.23 A Coordinated Implementation Roadmap for the Transition to Post-Quantum Cryptography
| A Coordinated Implementation Roadmap for the Transition to Post-Quantum Cryptography | 耐量子暗号への移行のための調整された実施ロードマップ |
| The EU Member States, supported by the Commission, issued a roadmap and timeline to start using a more complex form of cybersecurity, the so-called post-quantum cryptography (PQC). | EU 加盟国は、欧州委員会の支援を受けて、より複雑な形式のサイバーセキュリティ、いわゆる耐量子暗号(PQC)の使用を開始するためのロードマップとスケジュールを発表した。 |
| Quantum computing has been identified as a threat to many cryptographic algorithms used to protect the confidentiality and authenticity of data. This threat can be countered by a timely, comprehensive and coordinated transition to Post-Quantum Cryptography (PCQ). | 量子コンピューティングは、データの機密性と認証を防御するために使用される多くの暗号アルゴリズムに対する脅威であると識別されている。この脅威は、耐量子暗号(PCQ)へのタイムリーかつ包括的かつ協調的な移行によって対処することができる。 |
| Therefore, on 11 April 2024, the Commission has published a Recommendation on a Coordinated Implementation Roadmap for the transition to Post-Quantum Cryptography. For the development of this Roadmap, the Commission recommended to establish a work stream on PQC with the NIS Cooperation Group. This document is the first deliverable and is meant to be a first high-level paper aimed at Member States. It includes a set of recommendations that Member States need to implement for a synchronised transition to PQC, as well as measures to ensure that all stakeholders are well informed on the quantum threat to cryptography. | そのため、2024年4月11日、欧州委員会は、耐量子暗号への移行に関する調整された実施ロードマップに関する勧告を発表した。このロードマップの策定にあたり、欧州委員会は、NIS 協力グループと PQC に関する作業部会を設立することを推奨した。この文書は、その最初の成果物であり、加盟国向けの最初のハイレベルな文書となることを意図している。この文書には、PQC への同期的な移行のために加盟国が実施すべき一連の勧告、およびすべての利害関係者が暗号技術に対する量子脅威について十分な情報を得られるようにするための措置が含まれている。 |
・[PDF]
Q-STAR・G-QuAT共同シンポジウム 2025が始まる前...
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