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2025.05.06

デジタル庁 地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化 「先行団体の事例から得られた移行作業における留意事項」(2025.05.02)

こんにちは、丸山満彦です。

デジタル庁が進めている地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化について、このブログではあまり話題にしてこなかったのですが、

大規模なシステム移行ということで、大変な作業ということはみなさま理解はしていると思いますが、どれほど大変なのかについて、現場の方、デジタル庁側で議論を進めている方と、大きな旗を振っている方の間で(大きな?)隙間があるような気もして、少し心配になってきました...

ということで、少し紹介です...

基幹システムの移行ということで最近でも、お菓子製造業でも物流が止まり、「プリンがない!」とトラブルになった事例は記憶にあるかもしれません。

それほど大規模なシステム移行でなくても、機能追加といったよう比較すると規模が大きくないシステム開発や保守作業であっても、ATMが止まったり、ETCが使えなくなったりとトラブルがありますよね(ほとんどの場合はうまくいっているのですが...)

自治体の場合は、20+αの業務について、理論的には1,700余の自治体を対象とする移行の話となるので、それだけ聞いても大変ですよね...もちろん、各自治体で独自の政策も行っているわけですしね...2025年度末の移行完了に向けて進められていますね...

過去、大規模システムの移行に伴うシステム開発の開発過程監査や、システム開発の失敗に関わる訴訟等に関わった経験からいうと、システム移行等の大規模開発の失敗の原因はそんなに多くはないです。

大体は、最初から無理な計画をごり押しして進めたら案の定、うまくいかなかった。現場は、うまくいかないのはわかっていたが、上からは必達だと言われるので仕方なく進めていた。内心はうまくいかないのはわかっているので、早くプロジェクトから抜け出したいと思っている。上は、さらに上が決めたことなので、メンツを保つためにもなんとかしなければならないと、檄だけ飛ばす。。。(失敗しても上は責任を有耶無耶にするケースが多いかも...)

次に多いと思うのは、途中で問題が発生し、現場が上に報告したが、上がさらに上に上げずに握りつぶして(リソースの手当て等をせずに)、そのままプロジェクトが破綻していく...

もう一つ追加しておくべきは、十分なテスト時間をとらずに本番移行し、トラブルが発生し、大きな損害を出す。(これは表にでるので目立ちます...)

 

このようなプロジェクトの失敗をしないためには、次の5つの理解(腹落ち)が重要なのだろうと思います。

 

1. 理論的に無理なことは、根性を持ち出したり、忖度してもどうしようもない。諦めるものは諦める。(大和で沖縄に突っ込む計画をたてても、途中で沈められる)

2. リソース(人、金、時間を含む)を十分に与えられれないのに、命令しても開発はすすまない。(十分な食料を与えずに戦場に兵をだしても、飢え死にして成果は上がらない)

3.「 万に一つの成功の可能性がある」からと進むのはよいが、その場合、重要なのはうまくいかなかった場合の代替策を念入りに立てる(代替策になる可能性が高いので)

4. 想定外のことは必ず起こるので、リソース(人、金、時間を含む)には余裕を持たせる(余裕がないと臨機応変な対応ができず、想定通りの目的を完遂できない)

5. 忖度せず、情報は正直にすべて適切な粒度で全体に共有されること(特にネガティブな情報ほど)

 

この5つのポイントで重要なのは、判断する層(経営層、政治家や省庁の幹部)と作業をする層(現場)の間の信頼関係だと思います。正しい情報を適切に伝えると、理論的に適切な対応がされる。という当たり前の状況を作ることだと思います。。。

あと、大規模プロジェクトは、走りながら考えるではかなり無理な部分もあるので、最初にきっちりと計画を立てるのが重要かと思います。。。最初の計画が重要!

 

ということを頭の片隅にいれながら...

 

デジタル庁地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化

・2025.05.02 [PDF] 先行団体の事例から得られた移行作業における留意事項

20250506-70327

 

業務に関する留意事項

  1. 業務視点でのチェックは所管課が自ら行う必要がある。
  2. 仕様の変更により窓口運用が大きく変わる可能性がある。
  3. 機能追加等による効率化を踏まえた業務フローを検討する。

スケジュールに関する留意事項

  1. リカバリ・リスケを想定したスケジュールを組む。
  2. 十分な確認時間の確保の必要性

帳票に関する留意事項

  1. 帳票が変わることに伴い住民への案内も変更になる場合がある。
  2. 帳票要件以外の帳票も確認する。
  3. 帳票の出力テストをどこまで本番と同じ環境で行うか。

データに関する留意事項

  1. 同一ベンダでの移行であっても、データが原因で想定外の動きをすることがある。

データ連携に関する留意事項

  1. 連携方法が変わる場合は、どのような変更があるか理解する。
  2. 過渡期連携の調整は入念に行う。

ガバメントクラウド・ネットワークに関する留意事項

  1. ネットワーク構成の検討は、庁内環境とクラウド環境の全体像を捉えて行う。

ベンダに関する留意事項

  1. 対面での調整が少ない場合は、よりコミュニケーションを密にする。
  2. Gapの代替案についてはベンダにも協力してもらう。

テスト・本稼働に関する留意事項

  1. パターンの数だけ確認する必要性
  2. 検証環境の構築は、利便性を優先するか事故防止を優先するか検討する。
  3. 本番稼働時の処理時間を意識して確認を行う。
  4. 障害の切り分けをどこまで自分で行う必要があるか、事前に確認を行う。
  5. 特異なケースの確認

 

大規模システム開発、基幹業務のシステム移行については、金融機関は経験が豊富で、いろいろ参考になることが多いと思いますので、

こちらは是非参考に...

 

● 金融庁

・2019.06.21 「システム統合・更改に関するモニタリングレポート」の公表について

・[PDF] システム統合・更改に関するモニタリングレポート

20250506-71510

 

 

で、標準仕様書は...

・2025.04.30 [XLSX] 地方公共団体の基幹業務システムの標準仕様書改定状況一覧(令和7年4月30日時点)

20250506-70757

全体をみるとそこそこ変更がありますね...

 


 

地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化

・・標準準拠システムへの移行が令和8年度(2026年度)以降とならざるを得ないことが具体化した場合の措置


標準準拠システムへの移行が令和8年度(2026年度)以降とならざるを得ないことが具体化した場合の措置

以下のような理由により令和8年度(2026年度)以降の移行とならざるを得ないことが具体化したシステムを「特定移行支援システム※」としています。

  • 現行システムがメインフレームで運用されているもの
  • 現行システムがパッケージシステムではない個別開発システムで運用されているもの
  • 現行事業者が標準準拠システムの開発を行わないとしているシステムであり、かつ代替システム調達の見込みが立たないもの
  • 事業者のリソースひっ迫による開発又は移行作業等の遅延の影響を受けるものなど

このような特定移行支援システムについてデジタル庁、総務省及び制度所管省庁は、地方公共団体から把握した当該システムの状況及び移行スケジュールも踏まえて、標準化基準を定める主務省令において、所要の移行完了の期限を設定することとし、概ね5年以内に標準準拠システムへ移行できるよう積極的に支援することとしています。

※地方公共団体情報システム標準化基本方針(令和6年12月24日閣議決定)において、従来の移行困難システムが特定移行支援システムと改められました。

特定移行支援システムの状況とその対応

2023年10月に全団体に対し、移行困難システムの把握に関する調査を実施し、2024年3月に調査結果の公表を行いました。その後も継続して調査を行い、デジタル庁と総務省において標準準拠システムへの移行が令和8年度(2026年度)以降とならざるを得ないことが具体化したシステムの申し出があった団体にヒアリング等を行ったうえで、結果の精査等を実施しました。
その結果、標準化の対象となる全34,592システムのうち、2025年1月末時点で2,989システム(8.6%)が特定移行支援システムに該当する見込みであることが判明しました。団体数では1,788団体のうち554団体(31.0%)が特定移行支援システムを有します。9システム(6団体)については、特定移行支援システムに該当せず、判定を保留とし、引き続き状況を調査していきます。
今後も調査を継続して行い、移行状況予定に変更が生じた時点で速やかに、各団体へ調査票の提出を求め、必要に応じてデジタル庁と総務省においてヒアリングを実施する予定です。

また、特定移行支援システムを有する地方公共団体のうち、現行システム提供事業者の撤退等により、次期事業者の選定に至っていない地方公共団体へのフォローアップとして、地方公共団体が次期事業者を選定する際の参考となるよう、事業者に関する情報提供を実施していきます。

  • デジタル庁において、事業者協議会を通じて、事業者における特定移行支援システムを有する地方公共団体への対応可否を確認し、対応が可能な場合には、その受け入れ検討条件をアンケート調査により収集
  • 地方公共団体に対して、次期事業者を選定する際の参考情報として収集した情報を提供

 

 

こちらも参考に...

地方公共団体の基幹業務等システムの統一・標準化に関する関係省庁会議

 

 

失敗しているのに成功したことにした政策とならないように(^^::

 

 


 

まるちゃんの情報セキュリティ気まぐれ日記

・2023.12.09 デジタル庁 地方公共団体におけるアナログ規制の見直しに係る課題調査事業の報告書 (2023.12.04)

・2023.06.25 デジタル庁 デジタル社会の実現に向けた重点計画 (2023.06.09)

・2022.06.13 デジタル庁 デジタル社会の実現に向けた重点計画 (2022.06.08)

・2021.12.30 総務省 デジタル時代における住民基本台帳制度のあり方に関する検討会報告書

・2021.06.28 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」 at 2021.06.18

・2021.05.13 参議院 デジタル社会形成基本法案等を議決 デジタル庁設置、個人情報保護法改正、地方自治体システム標準化等。。。

・2021.02.10 内閣官房 IT総合戦略室が「デジタル社会形成基本法案」「デジタル庁設置法案」「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」を国会に提出しましたね。。。

・2020.12.31 自民党デジタル社会推進本部 デジタル庁創設に向けた中間提言 at 2020.12.22 (小林史明議員公式サイト)

 

 

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