日本銀行金融研究所 検証可能クレデンシャルにおける本人紐づけを巡る論点:適用事例にみる対応方法と金融分野への含意(佐古和恵先生)
こんにちは、丸山満彦です。
大山永昭先生がなくなったというニュースに触れました。大山先生とは、厚生労働省の保健医療福祉分野における公開鍵基盤(HPKI)認証局の整備と運営に関する専門家会議において、私とも関係がありました。2005年から2023年3月まで委員長としてその任にあたって頂いていました。ご冥福をお祈りいたします。
2023年4月からは、松本勉先生が委員長としてその任を引き継いでおられます。そして、この委員会の委員として、これから紹介する論文の著者の佐古先生も参画されています。
で、佐古先生の属性証明に関わる論文の紹介...
著者の佐古先生は、会議の席でも本当に論理だった適切な議論をされる方です。
今回紹介する日本銀行金融研究所の論文は、まさにHPKIともかかわってくる属性情報の正しさを発行者が保証する電子的な証明書(検証可能クレデンシャル(Verifiable Credential: VC))の話です...
業務を進めていく上で、社会的に必要なプロセスをデジタル上で実装する上で必要不可欠となってくる話です。HPKIではすでに運用されていますが、さまざまな国家資格を含む属性の証明をする上で重要となってくる話ですね。
そして、この論文、とてもわかりやすく書かれています。(さすが佐古先生です...)
● 日本銀行金融研究所
・2024.12.20 ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2024-J-22
・[PDF] 検証可能クレデンシャルにおける本人紐づけを巡る論点:適用事例にみる対応方法と金融分野への含意
要旨...
検証可能クレデンシャルにおける本人紐づけを巡る論点:適用事例にみる対応方法と金融分野への含意
佐古和恵
検証可能クレデンシャル(Verifiable Credential: VC)とは、ある対象(人、モノ、組織など)の属性情報の正しさを発行者が保証する電子的な証明書であり、その技術的な中核はデジタル署名である。VCは属性証明の汎用的なツールとして、社会で流通する情報の信頼性を向上させる潜在能力を持ち、金融をはじめとするさまざまな産業分野において活用が期待される。他方、VCはデジタル・データゆえに、従来の紙の証明書と異なり、実活用にあたり注意すべき点がある。例えば、ある人物から「自分の証明書」として「〇山A子」と記載された証明書が送られてきたが、相手は本当に〇山A子なのだろうか。あるいはその証明書をB県が発行したと記載されているが、本当にB県が発行したものなのだろうか。このような、(1)証明書の提示者実体が証明書に記載された提示者と同一人物であることの紐づけと、(2)証明書の発行者実体が証明書に付与されたデジタル署名の発行者と同一であることの紐づけにおける正確性確保は、技術のみでは解決できない課題である。そこで本稿では、エンティティ(実体)とVCに記載された情報との紐づけにおける正確性確保の論点を解説したうえで、VCの適用事例としてワクチン証明書と資格証明書を紹介し、金融分野などの産業応用におけるVCの有用性と運用上の留意点について考察する。
キーワード:検証可能クレデンシャル、デジタル・アイデンティティ、認証、公開鍵
図表...
図1:2つの紐付け
性別が女性であり、住所が B 県であると記述された VC
図2:VCの構成要素
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