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2023.11.30

公認会計士協会 「循環取引に対応する内部統制に関する共同研究報告」(公開草案)

こんにちは、丸山満彦です。

日本公認会計士協会が、日本監査役協会、日本内部監査協会と協力して、「循環取引に対応する内部統制に関する共同研究報告」(公開草案)を公表し、意見募集をしていますね。。。

循環取引は、複数の組織が共謀して商品の転売や役務の提供を繰り返し、取引が存在するかのように仮装し、売上や、ある期間における利益を過大に計上することになり、適切な会計ではありませんね。。。

パターンとしては、報告書案では、


・ スルー取引
自社が受けた注文について、物理的・機能的に付加価値の増加を伴わず他社へそのまま回し、帳簿上通過するだけの取引をいう。複数の企業が共謀して売上を水増しするために実施されることが多い。

・ Uターン取引(回し取引)
商品・製品等が、最終的に起点となった企業に戻ってくる取引をいう。複数の企業を経由する間に手数料等が上乗せされた状態で、商品・製品等が起点となった企業へ還流される。還流している、すなわち、循環しているという意味で、狭義の循環取引ということがある。

・ クロス取引(バーター取引)
複数の企業が互いに商品・製品等を販売し、当該相手方の商品・製品等を在庫として保有し合う、又はある企業が在庫せずに他の複数の企業に対し相互にスルーする取引をいう。取引相手と共謀して自社の商品・製品等を高い価格で販売する代わりに、実需に基づかない相手の商品・製品等についても通常価格よりも上乗せした価格にて購入することで、互いに売上を良く見せようとすることが多い。


ただ、これが複雑なスキームでくまれていると、循環取引を見つけることが難しいので、監査上はしばしば問題になってきました。。。

私が会計士として監査をしていたのは、だいぶ前になりますが、それでも、食品関係、工事関係、コンピュータ関係の売買の循環取引を見つけたことがありますから昔から多くあった話です。。。

では、どのような取引において循環取引がおこりやすいかというと、報告書案にあるように、モノが動かないのに売上が立つようなものは、確かに私がみたのもそういうのもありましたから、一つありますね。。。


《③ 循環取引のリスクが高い取引》

70.自社倉庫等を経由せずに販売する直送取引や、ある商流の間に入るだけの取引等、商流の上流からエンドユーザーへの納品が把握しづらい取引も現物の把握が困難であることや帳簿だけの取引となるため、循環取引のリスクが相対的に高いとされる取引形態の一つである。

71.また、担当者以外の知識や経験が少ないため関係者が制限される専門性の高い取引や、担当者以外の関係者が取引に関与する機会が著しく制限される秘匿性の高い取引等、一部の関係者のみで実行され他者の目に触れる機会が少ない取引も、循環取引のリスクが相対的に高いとされる取引形態である。


 

発覚の経緯が事例として載っていますが、、、

  • 税務調査の過程で、一部取引について納品の事実が確認できない疑義があるとの指摘を受けたことから調査委員会を設置し、調査の結果、発覚に至った。

  • 多額の売掛金の滞留が存在していることに対して親会社が内部監査を実施したところ、不適切な売上計上が発見されたことから調査委員会を設置し、調査の結果、発覚に至った。

  • 当時担当していた会計監査人に対して、取引先より通報が入ったことから調査委員会が設置され、調査の結果、発覚に至った。

もっと、事例をたくさん記載し、発覚の経緯についても多くの種類を載せるとよいと思います。。。

 

ちなみに、私が、ものが動かない直取引のようなもので、発見の経緯は、

・ある部門の売上、利益率の期間比較で、直近2年で売上が急に増えたにも関わらず、利益率が急激に下がっていた

というところからですね。。。売上が多い企業と仕入れが多い企業を調べ、その期間推移を作りました。そして、それらが特定の部署で行われていたので、サンプル調査という口実で、ヒアリングに行き、関連書類(契約書等)を入手し、いろいろと確認したところ、ほぼスルー取引ということがわかりました。。。内部監査部門、監査役も交えて調査をした結果、売上先と仕入先が資本関係はないものの、同一グループの企業でしたね。。。

推移を見て分かったのは、分析期間中に循環取引が生じたからですが、それでなくても、部署ごとサービスごとの売上、利益率の比較をすればわかりやすいかもしれません。モノがある場合は、在庫回転率なども参考になるかもしれませんね。。。

循環ではないスルー取引の場合は、売買取引に仮装した金融取引(運転資金の貸付)という場合もありますね。。。これも、売上高と利益率の推移等をみれば発見できました。。。

今はデータ監査がやりやすいので、そういうのを活用するのは重要かもしれませんね。。。

AIを使った循環取引などの不正会計を見つけるという取り組みも監査法人単位では進んでいると思うので、AIの活用も含めて監査の高度化というのは重要なテーマになりますね。。。

 

日本公認会計士協会

・2023.11.27 「循環取引に対応する内部統制に関する共同研究報告」(公開草案)の公表について

・[PDF

20231130-61158

 

 


 

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