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2023.01.15

読みました! 「偽情報戦争」

こんにちは、丸山満彦です。

JPCERT/CCの小宮山さんも執筆者に加わっている「偽情報戦争」[amazon] を読み終えました。。。

 

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まず、専門書ではないです。これからの議論のきっかけとなるための書物という感じでしょうか。。。とても、読みやすく、スラスラとあっという間に読めました。

読みやすし、きっかけに是非一読を。。。というのが私のコメントです。。。

全体としては、認知戦に関する話で、その認知戦にIT技術(AI等)、サイバー空間(SNS等)が手段としての重要性を帯びてきている現状をどのように理解したら良いのだろうか?ということで書かれているように思いました。。。

この正月休みに、司馬遼太郎の「ロシアについて」、陳舜臣の「中国五千年」を読んだところだったので、ロシア、中国の認知戦の話についても興味深く読むことができました(あまり関係ないですが...)。

最初に表1外交・安全保障における世論形成手段を示してくれているので、素人には言葉による誤解が防げてよかったです。。。

パブリック・ディプロマシー Public Diplomacy 自らの国益に資するべく、相手国世論に直接働きかけ、自国のイメージやプレゼンスを向上させる。公共外交や広報外交などともいわれる(外務省は広報文化外交としている)。透明性があり、相手を魅了するための外交手段とされる。実行形態として①Listening(傾聴)、②Advocacy(立場の主張)、③Cultural Diplomacy(文化外交)、④Exchange Diplomacy(交流外交)、⑤International Broadcasting(国際放送)に区分されることが多い。
プロパガンダ Propaganda 不特定多数の大衆を一定の方向に導き、行動を起こさせるため、社会心理的な手法で特定の考え方や価値観を植え付ける組機的な活動。
影響工作 Influence Operation 平時から有事、そして紛争後に、相手国世論の意見や態度を自らの国益と目的を促進させる方向に醸成するため、外交、軍事、経済、サイバー、情報、その他の能力を統合・連携させ適用すること。
戰略的コミュニケーション Strategic Communication 国家目標を推進するために、協調的行動、メッセージ、イメージ、その他の形態のシグナリングまたはエンゲージメントによって、特定の聴衆に情報発信し、影響を与え、説得しようとすること。単なる広報活動や情報操作、世論操作と異なる。
情報作戦 Information Operations 電子戦、コンピュータ・ネットワーク作戦、心理作戦、オペレーション・セキュリティ、欺瞞作戦の中核的能力を、特定の支援・関連能力と連携して統合的に活用し、敵対する人間や自動意思決定に影響を与え、混乱させ、あるいは奪し、同時に自国の意思決定を保護する作戦。米国防総省が行う作戦との解釈もされる。
情報戦 Information Warfare 自国の情報空間をコントロールし、自国の情報へのアクセスを防護しながら、相手の情報を取得・利用し、情報システムを破壊し、情報の流れを混乱させることで相手に対して優位に立つ作戦。一方、中国の指す情報戦は平時の影響工作や心理戦など幅広く含まれるとの解駅もされる。
ディスインフォメーション・キャンペーン Disinformation Campaigns 経済的・政治的目的を達成するため、意図的に世論を敷くために作り出されたディスインフォメーション(偽情報)を拡散し、公共に害を与える活動。民主的な政治や政策決定に対する脅威につながる。
認知戦 Cognitive Warfare ターゲットとなる国民、組織、国家を干渉または不安定化させることを目的とし、ターゲットの考え方や選択に影響を与え、意思決定の自律性を弱体化させるために用いられる作戦。認知戦に係る活動は軍事に限らず政治、経済、文化、社会など人々の日常生活全体に適用される。ディスインフォメーションも用いられる。
ハイブリッド戦 Hybrid Warfare 国家および非国家の在来型手段と非在来型手段の相互作用や融合を伴う戦争。戦争と平時の境界線が不明瞭になるといった特徴を持つ。
三戦 Three Warfares 世論戦、心理戦、法律戦を指し、軍事的および経済的手段であるハードパワーを用いることなく敵を弱体化させる戦術。2003年に中国人民解放軍政治工作条例に記載された。
シャープパワー Sharp Power 権戚主義国家が強制や情報の歪曲、世論操作などの強引な手段を用い。主に民主主義国家の政治環境や情報環境を「刺す」「穿孔する」ことで、自国の方針をのませようとする力。

 

小宮山さんが、民主主義の危機を気にされていますね。。。

個人的には、民主主義を守るのは、(1)民主主義を守る目的を達成するために必要となる知的情報処理能力の個人個人の高さとその分布の問題と(2)その結果に基づいて行動を起こすことだろうと思っています。。。民主主義は高尚な思想かつ勇気がいる仕組みなのです(^^)。

多くの情報に溢れている(玉石混淆の)現在社会において、個人個人が適切に情報を処理し、適切な行動を起こせるようになるかが重要なのだろうと思っています。そのためには、個人個人がそれなりに思慮深く、かつ行動を起こせないといけないように思います。。。そのような、人間が育つ、あるいは育てるような社会になっているか。。。ということが問題なのかもしれませんね。。。

 

 


 

平和博さんのブログ新聞紙学的も是非是非です。。。

 

まるちゃんの情報セキュリティ気まぐれ日記

日本ファクトチェックセンターの話...

・2022.09.30 日本ファクトチェックセンター

 

グローバルリスクでも、偽情報はそれなりのポジションです。。。

・2023.01.12 世界経済フォーラム (WEF) The Global Risks Report 2023 18th Edition グローバルリスク報告書2023

・2022.01.14 世界経済フォーラム (WEF) The Global Risks Report 2022 17th Edition - 2022年のグローバルリスクのトップは、気候変動への適応の失敗と社会的危機

・2021.01.21 世界経済フォーラム The Global Risks Report 2021 16th Edition - 世界は長期的リスクへの対応に目覚めるべきである

 

中国のDeap Fake等に対する対策など...

・2022.12.23 中国 インターネット情報サービス深層合成管理規定についての専門家のコメント... (2022.12.12)

・2022.12.17 中国 インターネット情報サービス深層合成管理規定 (深層合成で作ったものにはマークを...)(2022.11.25)

・2022.09.12 中国 インターネットポップアップ情報プッシュ型サービス管理規定と偽情報の取締り

・2022.08.15 中国 国家サイバースペース管理局 インターネット情報サービスのアルゴリズム申請に関する情報公開の公告

・2022.01.30 中国 国家サイバースペース管理局 意見募集 インターネット情報サービスの深層合成の管理に関する規定(意見募集稿)

・2022.01.05 中国 インターネット情報サービスのアルゴリズム推奨管理規則

・2021.08.28 中国 意見募集 国家サイバースペース管理局 「インターネット情報サービスのアルゴリズムによる推奨に関する管理規定」

 

その他。。。

・2022.12.18 国家安全保障戦略が閣議決定されましたね。。。(2022.12.16) 対英訳付き...

・2022.12.14 ENISA 外国人による情報操作と干渉(FIMI)とサイバーセキュリティ - 脅威状況

・2022.11.28 防衛省 防衛研究所 中国安全保障レポート2023 ― 認知領域とグレーゾーン事態の掌握を目指す中国 ―

・2022.10.30 米国 国防総省:サイバー軍 CYBER101 - Defend Forward and Persistent Engagement (2022.10.25)

・2022.10.11 米国 FBI 中間選挙を前にサイバーセキュリティについて議論

・2022.08.27 米国 サイバー司令部:米サイバー軍とNSAは中間選挙をどう守るか。一つのチーム、一つの戦い

・2022.08.26 スイス ETH Zürichsで公表されている最近のサイバー作戦、サイバー攻撃等、サイバー関連の最近の記事、論文

・2022.08.14 米国 国土安全保障省 監察官室 国土安全保障省は偽情報キャンペーンに対する統一的な戦略が必要

・2022.08.01 MITRE 誤情報・偽情報の研究課題調査:主要なテーマ

・2022.07.21 カナダ サイバーセキュリティセンター 「サイバー脅威報告:ロシアのウクライナ侵攻に関連するサイバー脅威活動」 (2022.07.14)

・2022.06.06 NATO CCDCOE 選挙干渉への対抗をテーマにしたイノベーションチャレンジ(52大学から56チームが参加)

・2022.04.01 ロシア 外務省 米国とその衛星国による継続的なロシアへのサイバー攻撃についての声明

・2021.12.23 CSET AIと偽情報キャンペーンの未来 パート1:RICHDATAフレームワーク

・2021.12.16 CISA 新しいサイバーセキュリティ諮問委員会の設立会合を開催(委員長等の選任と5つの小委員会の設立)

・2021.12.07 2021.12.09,10開催予定 Summit for Democracy 民主主義サミット + 中国的民主主義 + ロシアの批判 + EUの参加報告書+米国政府まとめ

・2021.08.10 EU議会 STUDY ヨーロッパの政策におけるディープフェイクへの取り組み at 2021.07.30

・2021.07.01 防衛研究所 中国が目指す認知領域における戦いの姿

・2021.06.04 欧州検査院 特別報告書 EUに影響を与える偽情報:対処しても対処しきれない

・2021.05.24 自動で偽の情報を作成するマシーンはできるのか?

・2021.05.03 U.S. CISA 偽情報・誤情報の脅威とその対応方法についての(いかにもアメリカンな)漫画

・2022.01.26 英国王立学会 オンライン情報環境(フェイク情報は削除すべき、削除すべきでない?)at 2022.01.19

・2021.01.26 RAND研究所 真実の崩壊に対抗するためのメディアリテラシー標準についての報告

・2021.01.18 新聞紙学的(平和博さんのブログ) - ディープフェイクスにどれだけ騙される? 意外な実験結果とは

・2020.12.07 民主主義を守るための偽情報との戦い

・2020.11.28 国連(UNICRI) テロリスト、過激派、組織犯罪グループがソーシャルメディアを悪用しCOVID-19対応中の政府への信頼失墜をさせようとしている

・2020.11.04 情報ネットワーク法学会 第20回研究大会

・2020.08.08 Interpol COVID-19により在宅勤務に関連する脆弱性と経済的利益が増加し、今後サイバー犯罪はさらに増える?

・2020.03.31 英国政府はCOVID-19に関する偽情報(misinformation)を取り締まるチームを設置したようですね。。。



 

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