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2022.12.29

損保総研レポート 国家の関与するサイバー攻撃とサイバー保険の戦争免責条項について

こんにちは、丸山満彦です。

公益財団法人損害保険事業総合研究所が発行している損保総研レポートの2022.12号に「国家の関与するサイバー攻撃とサイバー保険の戦争免責条項について」という論考が掲載されていますね。。。

戦争免責条項を根拠として保険金支払を拒絶した損害保険会社を提訴した事例や、サイバー保険の料率が上がってきているという話もあり、興味深い報告書だと思いました。。。

 

損害保険事業総合研究所 - 機関誌「損保総研レポート」

・2022.12.24 2022年12月 第141号

 ・[PDF] 国家の関与するサイバー攻撃とサイバー保険の戦争免責条項について

20221228-225605


目次...

1.はじめに

2.サイバー保険市場の概況
(1)全世界における市場規模
(2)元受保険業界の状況
(3)再保険会社等の対応

3.国家の関与によるサイバー攻撃
(1)過去のサイバー攻撃の事例
(2)ロシアによるウクライナ侵攻の影響

4.従来の戦争免責条項

5.戦争免責条項の適用を巡る訴訟事例
(1)Merck 対 Ace American など
(2)Mondelez International 対 Zurich American

6.LMAのサイバー戦争免責条項およびロイズの指示
(1)LMA のサイバー戦争免責条項
(2)免責条項への反応
(3)ロイズの市場参加者への指示

7.研究機関による提案
(1)ジュネーブ協会等による提案
(2)カーネギー国際平和基金による提案

8.戦争リスクなどへの補償提供策
(1)国家によるバックストップ
(2)カタストロフ・サイバーリスク市場
(3)保険リンク証券(ILS)

9.おわりに


要旨

近年、世界的にサイバー攻撃が多発、激化しているが、特に 2022 年 2 月のロシアによるウクライナ侵攻以降、「国家の関与によるサイバー攻撃」に対する懸念が広まっている。国家の関与によるサイバー攻撃に係るリスクは、一般的に広域に同時多発的に被害をもたらし、巨額の損害を発生させる可能性があり、個々の損害保険会社では、対応が困難なリスクの 1 つとなっている。

損害保険業界は、これまでサイバー保険のみならず、ソルベンシーに重大な影響を及ぼすリスクを補償対象から除外する対応の一環として、ほとんどすべての損害保険契約に戦争免責条項を付帯している。

2017 年に世界的に大損害をもたらしたサイバー攻撃により、被害を受けた保険契約者が、戦争免責条項を根拠として保険金支払を拒絶した損害保険会社を提訴した事例が、米国で複数発生している。既に一部の裁判では、原告(保険契約者)の主張を認め、被告(保険会社)に保険金支払を命じた一審判決が出ている。

このような状況を踏まえ、ロイズ保険協会(LMA)などでは、「サイバー戦争免責条項」など新たな免責条項案を作成しているが、これらも課題が指摘されており、更なる改善が望まれる。

技術革新に伴い、サイバーリスクを巡る状況も常に「進化」していることから、わが国の損害保険業界も、最新のサイバーリスクの動向や、諸外国の保険業界の動向を注視しつつ、約款における戦争免責条項のあり方に関する検討など、適切な対策を採る必要がある。


 

参考

2022年2月 第138号

 ・[PDF] 米国を中心とするサイバー保険市場の動向

 

2021年1月 第134号

 ・[PDF] 米国を中心とするサイバーインシデント・サイバー保険市場の動向

 

・2019年1月 第126号

 ・[PDF] サイレント・サイバーリスクを巡る動向 -米国・イギリスを中心に-

 

2018年1月 第122号

 ・[PDF] サイバーセキュリティ対策-人材対策を中心に-

 

2017年7月 第120号

 ・[PDF] 米国におけるサイバー保険の動向

 

・2016年7月 第116号

 ・[PDF] サイバーリスクとサイバー保険-米国の動向を中心として-

 

2015年1月 第110号

 ・[PDF] 米国のサイバー・インシュアランスの動向

 

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