防衛省 防衛研究所 中国安全保障レポート2023 ― 認知領域とグレーゾーン事態の掌握を目指す中国 ―
こんにちは、丸山満彦です。
防衛省 防衛研究所が 中国安全保障レポート2023 ― 認知領域とグレーゾーン事態の掌握を目指す中国 ― を公表していますね。。。
日本語版のみならず、英語版、 もあります。。。
・2022.11.25 中国安全保障レポート『中国安全保障レポート2023』を掲載しました
・中国安全保障レポート2023 ― 認知領域とグレーゾーン事態の掌握を目指す中国 ―(本文)(要約)·(表紙·奥付)
目次...
中国安全保障レポート2023
目次
要約
略語表
はじめに
第 1 章 中国の軍事組織再編と非軍事的手段の強化
1. 改革前の軍事組織の問題点
(1)改革前の党軍関係の基本構造
(2)問題点
2. 習近平の軍事改革における党軍関係の強化
(1)中央軍事委員会主席責任制の再確立
(2)強調される党委員会の指導
(3)軍内監察部門の独立
(4)巡視制度の導入
(5)政治工作部の役割の縮小
3. 戦略支援部隊の設置
4. 人民武装警察部隊と海警の改編がもたらすもの
(1)中央軍事委員会の一元指導を受ける武警
(2)警種部隊、公安系統部隊を切り捨ててスリム化した武警
(3) 14個機動師団の解体と機動総隊の新設
(4)人民解放軍に倣った武警総部の再編
(5)武警隷下に入った海警
(6)共産党統治のための武警
第 2 章 活発化する中国の影響力工作
1. 中国の影響力工作
2. 中国共産党の心理・認知領域をめぐる闘争
(1)宣伝工作
(2)統一戦線工作
(3)ソーシャルメディアにおける活動
(4)秘密裏の活動
(5)組織
3. 人民解放軍の心理・認知領域における闘争
(1)人民解放軍の情報化戦争における心理・認知領域
(2)三戦(輿論戦、心理戦、法律戦)
(3)認知領域作戦
4. 事例研究 : 台湾における中国の影響力工作の展開
(1)サイバー攻撃の事例
(2)メディアの報道を利用した圧力
(3)台湾人を利用した影響力工作の展開
(4)多国籍企業や軍関係者への工作
第 3 章 海上で展開される中国のグレーゾーン事態
1. 中国が展開するグレーゾーン事態
2. 進展する海上民兵の組織化
(1)海上民兵の組織、指揮命令系統、党との関係
(2)海上民兵の役割
3. 海警と海上民兵の活動の積極化
(1)海警の装備強化と活動拡大
(2)海上民兵に対する支援・組織化
(3)海洋アクターの協調
4. 東シナ海と南シナ海におけるグレーゾーン作戦の相違点
おわりに
要約 第 1 章 中国の軍事組織再編と非軍事的手段の強化
習近平の軍事改革によって中国の軍事組織の再編が進み、その中で党の指導が強化されてきた。中国共産党 による直接的コントロールがより強調され、特に中央軍委主席責任制の徹底と軍内党委員会が重視されており、 また軍内における法やルールによる統治も強調されている。党の指導は人民解放軍だけでなく、その他の軍事組 織においても強化されており、軍とそのほかの政府アクターの協調メカニズムが発展しつつある。これは非軍事 的手段を積極的に活用するという現代的な紛争形態への対応でもある。
影響力工作については、戦略支援部隊が設置された。戦略支援部隊はサイバー、電磁スペクトラム、宇宙に関 わる機能を統合するだけでなく、心理・認知領域の戦いにも深く関与しているとみられる。
グレーゾーン作戦については、武警と海警の再編が行われた。武警が中央軍事委員会の単独指導下に置かれるとともに、海警が武警隷下となることで、海警も軍の指導下に置かれた。武警再編によって武警の機能を平時 における治安維持に特化すると同時に、有事における人民解放軍の統合作戦に寄与しやすい組織へと改編した。
要約 第2章 活発化する中国の影響力工作
中国は、心理・認知領域における闘争として党全体の影響力工作と関連する軍の活動を活発化させている。中国にとって、情報と影響力をめぐる争いは、米欧とのイデオロギー上の安全と優位性をめぐるものである。中国に とって、欧米の「誤った見方」を正すだけでなく、中国の観点、中国側のナラティブを内外に積極的に広めること が重要となっている。中国のナラティブが国内外の議論を支配することで、米欧のイデオロギー浸透の試みに対 抗できる。こうして中国は、国内と国外の両方に向けて影響力工作を強化している。そのために、宣伝工作や統 一戦線工作、さらにソーシャルメディアにおける活動が活発化している。
党の影響力工作が主に戦略レベルの活動であるのに対して、軍の活動は戦略レベルにも作戦レベルにもまたが るものである。人民解放軍は、心理戦を重視する伝統を持っており、さらに近年では輿論(よろん)戦、心理戦、法律戦の「三 戦」を重視している。現在、三戦は、さまざまなレベルのさまざまな軍関連組織において実施されると考えられる。 三戦専門の基地もあれば、各部隊において実施されるものもある。近年では党の活動と軍の活動は、重複する 部分が増えている。近年では、人工知能など新興技術の発展に伴い、これを駆使した知能化戦争への移行が模 索される中で、心理戦の延長として認知領域における作戦という概念が登場している。
こうした心理・認知領域における闘争が最も顕著に表れているのが、台湾に対する影響力工作である。サイバー 空間や人脈を通じたフェイクニュース拡散、軍関係者を含む台湾人への働きかけなど、党・人民解放軍による影 響力工作が幅広く行われており、台湾にとって大きな脅威となっている。
年度 | 副題 | 章 | テーマ |
2023 |
認知領域とグレーゾーン事態の掌握を目指す中国 |
1 | 中国の軍事組織再編と非軍事的手段の強化 |
2 | 活発化する中国の影響力工作 | ||
3 | 海上で展開される中国のグレーゾーン事態 | ||
2022 |
統合作戦能力の深化を目指す中国人民解放軍 |
1 | 中国人民解放軍の統合作戦構想の変遷 |
2 | 改編された中国人民解放軍の統合作戦体制 | ||
3 | 軍改革における統合作戦訓練・人材育成体制の発展と党軍関係強化の模索 | ||
2021 | 新時代における中国の軍事戦略 | 1 | 情報化戦争の準備を進める中国 |
2 | 中国のサイバー戦略 | ||
3 | 中国における宇宙の軍事利用 | ||
4 | 中国の軍民融合発展戦略 | ||
2020 | ユーラシアに向かう中国 | 1 | 中国のユーラシア外交 |
2 | 中央アジア・ロシアから見た中国の影響力拡大 | ||
3 | ユーラシアにおけるエネルギー・アーキテクチャ | ||
2019 | アジアの秩序をめぐる戦略とその波紋 | 1 | 既存秩序と摩擦を起こす中国の対外戦略 |
2 | 中国による地域秩序形成とASEANの対応 ――「台頭」から「中心」へ | ||
3 | 「一帯一路」と南アジア――不透明さを増す中印関係 | ||
4 | 太平洋島嶼国 ――「一帯一路」の南端 | ||
2018 | 岐路に立つ米中関係 | 1 | 中国の対米政策 |
2 | 米国の対中政策 | ||
3 | 地域における米中関係の争点 | ||
2017 | 変容を続ける中台関係 | 1 | 中国の台湾政策の変遷 |
2 | 台湾から見た中台関係 | ||
3 | 米国にとっての台湾問題 | ||
4 | 中台関係の変容と「現状維持」 | ||
2016 | 拡大する人民解放軍の活動範囲とその戦略 | 1 | 遠海での作戦能力強化を図る中国海軍 |
2 | 空軍の戦略的概念の転換と能力の増大 | ||
3 | ミサイル戦力の拡充 | ||
4 | 統合的な作戦能力の強化 | ||
2014 | 多様化する人民解放軍・人民武装警察部隊の役割 | 1 | 中央国家安全委員会創設とその背景 |
2 | 人民武装警察部隊の歴史と将来像 | ||
3 | 人民解放軍による災害救援活動 | ||
4 | 軍事外交としての国連平和維持活動 | ||
5 | ソマリア沖・アデン湾における海賊対処活動 | ||
2013 | 1 | 中国の対外危機管理体制 | |
2 | 中国の危機管理概念 | ||
3 | 危機の中の対外対応 | ||
2012 | 1 | 「党軍」としての性格を堅持する人民解放軍 | |
2 | 深化する軍と政府の政策調整 | ||
3 | 軍と政府が連携を深める安全保証政策 | ||
4 | 政策調整の制度化を求める人民解放軍 | ||
2011 | 1 | 海洋に向かう中国 | |
2 | 南シナ海で摩擦を起こす中国 | ||
3 | 外洋に進出する中国海軍 | ||
4 | 対外園で発言力を増す人民解放軍 | ||
創刊号 | 1 | 中国の対外姿勢 | |
2 | 拡大する活動範囲 | ||
3 | 役割を増す軍事外交 | ||
4 | 進む装備の近代化 |
● まるちゃんの情報セキュリティ気まぐれ日記
・2021.11.28 防衛省 防衛研究所 中国安全保障レポート2022 ― 統合作戦能力の深化を目指す中国人民解放軍 ―
・2020.11.14 防衛省 防衛研究所 「中国安全保障レポート2021 ― 新時代における中国の軍事戦略 ―」は中国のサイバー戦略についての章がありますね
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