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2022.10.19

自民党 わが国が目指すべき 経済安全保障の全体像について~新たな国家安全保障戦略策定に向けて~ (2022.10.04)

こんにちは、丸山満彦です。

自民党の経済安全保障推進本部が、「わが国が目指すべき 経済安全保障の全体像について~新たな国家安全保障戦略策定に向けて~」という提言を公表しています。。。

国として、国際社会において「政治経済の主要プレイヤー」となっていたい。そのために、「国家安全保障戦略に掲げる国益※を経済面から確保する」ことが(政治、外交等以外の手段のみならず)必要なので、それを確保するためにどうするか、考えてみた。。。ということなのでしょうかね。。。

 

自民党

・2022.10.04 わが国が目指すべき 経済安全保障の全体像について~新たな国家安全保障戦略策定に向けて~

・[PDF] (downloaded)

20221019-44703

 


【経済安全保障の理念】
自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった基本的価値を重視し、開かれた国際経済システムを維持しつつ、産業界や学術界など様々な関係者が主体的に関与する形で、わが国の安全の確保と持続的な繁栄を実現するとともに、わが国は国際社会の発展のために政治経済の主要プレイヤーとして寄与していく。


【経済安全保障の定義・目標】
国家安全保障戦略に掲げる国益※を経済面から確保すること。わが国の経済安全保障を進める上で基本となる概念は、

①わが国の社会経済活動の維持に不可欠な基盤を強靱化することにより、いかなる状況の下でも他国に過度に依存することなく、国民生活の持続と正常な経済運営を実現する「自律性の確保」と、

②国際社会全体の産業構造の中で、わが国の存在が国際社会にとって不可欠であるような分野を戦略的に拡大していくことにより、わが国の長期的・持続的な繁栄及び国家の安全を確保する「優位性・不可欠性の維持・獲得」、更には、

③自律性と優位性・不可欠性の向上により、わが国の国際社会におけるプレゼンスを高め、同盟国・同志国との戦略的な連携の下での国際ルール形成の主導

である。

※ 現行の国家安全保障戦略に掲げられている国益とは下記の3点である。すなわち、①わが国自身の主権・独立を維持し、領域を保全し、わが国国民の生命・身体・財産の安全を確保することであり、豊かな文化と伝統を継承しつつ自由と民主主義を基調とするわが国の平和と安全を維持し、その存立を全うすること、②経済発展を通じてわが国と国民の更なる繁栄を実現し、わが国の平和と安全をより強固なものとすること、そのためには、自由貿易体制を強化し、安定性及び透明性が高く、見通しがつきやすい国際環境を実現すること、③自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった基本的価値やルールに基づく国際秩序を維持・擁護すること

...

【経済安全保障の8つの全体像】
経済安全保障の全体像を構成する8つの戦略的アプローチについて、それぞれの設定理由及び具体的課題を以下に示す。なお、戦略1(経済成長の強化・持続化)は経済安全保障の全体像における最上位概念、戦略2~5(自律性の向上、優位性・不可欠性の獲得、競争環境の整備、対外発信・広報の確立)は中核をなすアプローチ、そして、戦略6~8(情報収集・集約・分析・管理(インテリジェンス)の強化、体制の整備、経済安全保障を担う人材育成)はこれら戦略1~5を支える基盤となるものである。


 

8つの戦略...

【最上位概念】
戦略1.経済成長の強化・持続化

【中核をなすアプローチ】
戦略2.わが国の他国に対する経済的依存構造の低減、及びその他脆弱性への対応の強化(自律性の向上)
戦略3.他国のわが国に対する経済的依存構造の構築(優位性・不可欠性の獲得)
戦略4.「公正な」競争環境の整備(国益にかなう国際秩序・ルール形成)
戦略5.戦略的な対外発信・広報の確立

【戦略1~5を支える基盤】
戦略6.情報収集、集約、分析、管理(インテリジェンス)の強化
戦略7.体制の整備
戦略8.経済安全保障を担う人材育成

 


サイバーセキュリティやセキュリティクリアランスの話に行く前に、国をどうしたいのかという議論がきっと重要なんでしょうね。。。この提言の立てつけ(戦略的アプローチ)において、戦略1(経済成長の強化・持続化)を経済安全保障の全体像における最上位概念においていることからそうなのだろうと思います。

米国のような広大な国土にある程度の天然資源を有している国と、シンガポール、スイスといった狭い国土に限られた資源した有しない国では、国として存続するための戦略は大きく異なるのだろうと思います。日本をはじめ多くの国は、この両者の中間的なところにあるわけですが、どのような戦略をとるのかについての議論がもう少し深まればよいのではないかと思っています。

かつて?日本は貿易立国として、製造技術を中核にして、資源を海外から求め、高度な技術でものを作り付加価値をつけて、海外に販売するという形で成功をしていたように思います。しかし、成長の過程で国力が増すと円高、人件費の高騰等もあり、より効率的に付加価値を高めるために、製造技術は日本で考えるが、製造自体は発展途上国でやっていこうという形になり、やがて製造技術も海外で培われるようになったところに、IT技術による革新が進み、その変革スピードに乗り遅れた日本が今にあるという感じですかね。。。それを後押しするように、教育制度がイマイチですしね。。。

このような状況の背景には、日本の政治経済が、民主主義+自由経済ではなく、人的関係主義?により行われていることが影響しているのかもしれませんね。。。お友達を重視した政治+選挙で票が集められる産業の維持といった感じでしょうか。。。それを支える知識が浅い標準化された人間の育成システム。。。

産業的に重要性が相対的に低下していて、本来であればこれから伸びる分野に「張っていく」べきなのに、既得権益のある業界に予算をつけ、これから伸びる分野への予算が相対的に少なくなっていて、産業転換が進まない、、、というのが国として産業が伸びていかない理由なのかもしれません。ということであれば、自民党がこういう提言をしても、結局...ということが見えていて、わかりやすく成果が見える「クリアランス制度」とかの整備に走ってしまうのかもしれませんね。。。(守るべき産業がないのに、クリアランス制度だけあっても他国はやりやすくなるかもですが、日本にとっては...)

てなことを考えながら、この提言の戦略1にもあるように経済成長というのが経済安全保障にとっては一番重要なんだろうなぁ。。。と思ったりしました。。。(経済成長すれば、同じGDP1%でも使える防衛費は増えますからね。。。軍事力という面からも強化できますしね。。。)

さて、人口が減る中で社会全体の高齢化が進むことが確定している日本において、どのような経済成長を実現できるのでしょうかね。。。(岸田内閣の成長戦略、昨年の成長戦略ポータル、これまでの成長戦略

 

米国も最近、国家安全保障戦略を発表していますね。。。

競争国を明確に設定し、それに対してどのように対応をしていくのかを検討しているのが、特徴かもしれませんね。。

・2022.10.14 米国 国家安全保障戦略

 

 

 

 

 

 

 

 

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