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2021.07.01

防衛研究所 中国が目指す認知領域における戦いの姿

こんにちは、丸山満彦です。

防衛省の研究所である防衛研究所 [wilipedia] が「中国が目指す認知領域における戦いの姿 」という報告書を公表していますね。。。

人間の脳を攻撃対象とする...

AがBを打ちまかしたいと考えた場合、Aが直接Bを攻撃するよりも、BをB1とB2にわけてお互いに戦わせるほうがAにとっては、被害も少く、効率的でありますよね。。。敵対国を分断し、互いに戦わせて消耗させる。。。

 

防衛研究所

・2021.06.28 [PDF] 中国が目指す認知領域における戦いの姿

20210630-184403

 


はじめに

中国では、人工知能(AI)技術をはじめとした「ゲームチェンジャー」となりうる新たな技術の急速な発展と、その軍事への応用が進展することによって、将来の新たな戦争の形態として「智能化戦争」が現出するとの議論が盛んに行われている。この「智能化戦争」をめぐる中国での議論においては、高度なAI技術を活用して能力を飛躍的に向上させた無人機が戦場における主役となることや、量子コンピューティング技術などの進展を背景に優れた情報分析能力を獲得した機械が人間の指揮官による決定を補助する「人機共同決定」が主流となることなどに加えて、戦争が行われる領域として「認知領域」が重要になるとの指摘がなされている。例えば、認知領域を「新興の作戦領域であり、感知、理解、信念、価値観といった意識が構成するバーチャルな空間」と定義する海軍工程大学の李大鵬は、智能化戦争においては認知領域の役割と地位がこれまでになく高まると指摘している。本小論では、認知領域における戦争に関する中国での議論を整理することを通じて、中国が将来の戦争において認知領域でどのような戦いを目指しているのかを分析する。


「智能化戦争」における認知領域での戦い

...将来の認知領域での戦いの帰趨を大きく左右するものとして、「脳コントロール技術(控脳技術)」にも注目が集まっている。敵の認知をコントロールすることを目指す認知領域での戦いにおいては、認知の究極的な主体である人間の脳を直接コントロールすることができれば、圧倒的な優位に立てるからである。敵人の脳を支配する「制脳権」の奪取を目的とした「制脳作戦」が将来の戦争における新たな姿として想定されるのである。軍事科学院の王金霞は、脳コントロール技術を用いた作戦として、以下のような具体例を挙げている。第一は、神経剤などを用いて敵の人員の精神と肉体に支障を与えるものである。第二は、電磁波を用いて敵の人員の脳波をコントロールし、五感に支障をもたらすものである。第三は、電磁刺激技術を用いて、人間の認知機能を向上させるものである。大脳に電極を挿入して刺激を与えることで、指揮官の決定能力や、パイロットなどの注意力や認知力の水準を高めることが目指される。将来の戦争においては敵を殺傷するだけでなく、「脳対抗」を通じて敵の思想と行動をコントロールすることが必要であり、人間の脳は主要な攻撃目標となるため、人間の脳の知能をめぐる対抗が激化するといわれるのである。


おわりに

これまで見てきたように、中国では戦争が行われる空間としての認知領域の重要性が以前から認識されており、人民解放軍によっても「三戦」の実行などを通じて活用されてきた。「智能化戦争」をめぐる議論の中で、AIや脳科学などの技術の進歩が、認知領域における戦いの手段を増大させ、その効果を飛躍的に向上させる可能性が認識されたことによって、将来の戦争における認知領域の重要性が改めて注目されたものと思われる。中国で議論されているような認知領域における戦いの姿が現実化するか否かは、今後の関連技術の発展動向に大きくされるため、見通すことは困難である。しかし、現時点でのAIや情報通信技術を使えば、ディープ・フェイクを用いた偽情報をソーシャル・ネットワークなどを通じて拡散させるといった「心理戦」や「輿論戦」を展開することは可能であり、実際に認知領域における作戦として実行に移されているとの指摘もある。中国が想定する「智能化戦争」への理解を深め、それへの対応を準備するうえで、宇宙やサイバー、電磁といったいわゆる新領域に加えて、認知領域における中国の軍事的動向にも大いに注意を払う必要があるだろう。




 

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