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2021.07.01

防衛研究所 バイデン政権と中国

こんにちは、丸山満彦です。

防衛省の研究所である防衛研究所 [wilipedia] が「バイデン政権と中国」という報告書を公表していますね。。。

防衛研究所

・2021.06.28 [PDF] バイデン政権と中国

20210630-183236


1. はじめに

... バイデン政権は多面的かつ長期的な競争を前提とした対中政策を展開していくだろう。 「反トランプ=対中強硬路線からの脱却」や、「オバマ政権初期への回帰=対中関与の継続」といったイメー ジでバイデン政権の政策方針を予測するのは適切ではない。たしかにバイデンはワシントン DC の政策エリー ト(エスタブリッシュメント)の中でキャリアを築いてきた政治家であり、同盟国との協調を重視する伝統的な国際主義、ひいてはリベラルな国際秩序の守護者としてアメリカを位置づける姿勢は、トランプ政権のよう にセンセーショナルな変化を感じさせるものではない。しかし 2010 年代を通じて急激に悪化した対中認識に 基づき、バイデン政権もまた、潜在的なパートナーというよりも競争相手ないしは挑戦者として中国をとらえ るのが基本方針となっている。その意味では、トランプ政権からの連続性もたしかに存在しているといえよう。


5. おわりに

バイデン政権の外交政策チームは民主党の歴代政権に携わってきた経験豊富な面々が顔を揃えているだけでなく、要職を占める人物らは異口同音に中国に対する不信感・警戒感を示しており、対中政策の方向性について政権内で一定のコンセンサスがあるものと思われる。中国との戦略的競争は、いまや 米国の政策エリートたちの間で広く共有されたテーマであり、...バイデン政権の根本的な対中政策方針にはトランプ政権からの連続性も大いにみられる。...バイデン政権が伝統的なリベラル国際主義に則っている点であろう。「民主主義による平和」や経済的相互依存、そして経済的自由化が政治的自由化にもつながるというロジックで長らく対中関与政策を支えてきたリベラル 国際主義は、あくまでアメリカ主導の国際秩序を前提としている。その前提を揺るがすパワーを持つにいたった権威主義国家が台頭してきた時点で、それは封じ込めのロジックへと変貌しうる。...辛抱強く関与政策を続けてきたアメリカの善意を中国が裏切ったというナラティブに基づいた現状認識であるとすれば、なおさらであろう。「紛争ではなく競争」というように、中国との無益な対立や衝突を求めているわけではないが、バイデン政権の方針はアメリカの世界的な影響力ないしは指導的地位を維持すべきであるという根本的な信念に基づいている。これはトランプ政権の誕生によって揺るがされたアメリカの国際主義を再確認しつつ、戦略的競争を見据えているものといえよう。...対中強硬路線が地域の同盟国に不安を与えてしまうのではないかという懸念のため、対中戦略を内密に議論しているともいわれる。...バイデン政権が同盟国との関係を重視しつつ中国との戦略的競争にそれほどコミットしているとすれば、中国に対する決意のシグナルが弱すぎるために抑止が破綻するリスクは抑えることができるだろう。...現段階で観察される範囲では、バイデン政権が中国に伝達しているメッセージは極めて明確である。中国の行動を善意的に解釈し、政治的自由化および友好関係の恒常化を期待するという意味での関与政策は終わったのである。


おわりに

これまで見てきたように、中国では戦争が行われる空間としての認知領域の重要性が以前から認識されており、人民解放軍によっても「三戦」の実行などを通じて活用されてきた。「智能化戦争」をめぐる議論の中で、AI や脳科学などの技術の進歩が、認知領域における戦いの手段を増大させ、その効果を飛躍的に向上させる可能性が認識されたことによって、将来の戦争における認知領域の重要性が改めて注目されたものと思われる。中国で議論されているような認知領域における戦いの姿が現実化するか否かは、今後の関連技術の発展動向に大きくされるため、見通すことは困難である。しかし、現時点での AI や情報通信技術を使えば、ディープ・フェイクを用いた偽情報をソーシャル・ネットワークなどを通じて拡散させるといった「心理戦」や「輿論戦」を展開することは可能であり、実際に認知領域における作戦として実行に移されているとの指摘もある。中国が想定する「智能化戦争」への理解を深め、それへの対応を準備するうえで、宇宙やサイバー、電磁といったいわゆる新領域に加えて、認知領域における中国の軍事的動向にも大いに注意を払う必要があるだろう。


 

 

 

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