「失敗を恐れると何もできない!」?
こんにちは、丸山満彦です。
よく大企業や政府のような大きな組織では、「ミスや失敗を恐れて思い切った改革ができない」、とか「ミスや失敗を恐れて新しい技術の活用が進まない」という話を聞くことも多いように思います。
一方、スタートアップベンチャーでは、「失うものはないので、思い切って新しい技術を活用して新しいことにチャレンジをしよう」という話も聞かれます。
ここでいう失敗ということは何かということをよく考えずに、単に「失敗を恐れると」ということにすると本質を見誤るような気がしています。大企業や政府とベンチャーとでは社会に与える影響とか違いますしね。。。
さて、ここで2つのことがあるように思います。
まずは、本質的な意味は次のようなことではないかと思います。
①「取り返しがきくような小さな失敗」を重ねて経験を積み、「取り返しのきかない大きな失敗をしない」で成功する
失敗せずに目的を達成するためには、そのプロセス上での取り返しがきく小さな失敗も経験の一つとして重要なこともある。なので、プロセス上での取り返しがきく小さな失敗を恐れるな、ということなのではないかと思います。
社会全体でみたら、小さな組織でする局所的な失敗は取り返しのきく失敗というケースが多いかもしれませんね。政府や巨大インフラ企業がする失敗は社会全体から見ると無視できずに取り返しが効かないようなケースも多いかもしれません。。。
さらにいうと、このように成功のために重ねてきた失敗を蓄積整理し、分析し、同じような失敗を繰り返さずに目的を効率的に実現するということも重要なのだろうと思います。
次は、失敗の仕方というような話です。
②成功確度を上げるために決められたプロセスを遵守しても生じた失敗と、そういうプロセスを遵守せずに生じた失敗は違うだろう
ということです。特に過去の成功の蓄積がある場合は、その成功確度を上げるための決められたプロセスというのがあることが多いと思います。そのようにして決められたプロセスを遵守せずに失敗するというのは、失敗を恐れるなという話とは違う話のような気がします。
ただ、この決められたプロセスというのは、過去の成功が前提にあるので、現在の状況が過去の成功とは違う前提であれば、そもそもそのプロセスの改善が必要かもしれません。前提が違うのに、過去の成功を前提としたプロセスを遵守しても目的を達成する(成功する)ということは難しいでしょうからね。
「失敗を恐れず、どんどんなんでもしろ!」と無邪気にいうのはよくないのかもしれません。
参考
● 失敗学 [wikipedia]
●NPO 失敗学会
● TechTarget Japan
・2013.08. 29 英省庁主導のITプロジェクトでアジャイル開発が失敗した理由
英国労働・年金省(DWP)が新給付制度のITプロジェクトでアジャイルソフトウェア開発を中止した原因は、DWPにその気がなかったからか、DWPの体制がアジャイル向きではなかったためか?
● Gigazine
・人間の給与計算部門をまるごとクビにして入れ替えたIBMのシステムが820億円の損失を生み出す
カナダ政府は2008年、部門の人員コストを削減するために給与計算部門を廃止し、IBMから給与計算システム「Phoenix Pay System」を導入しました。しかし稼働したシステムは正常に職員たちの給与を計算せず問題となり、事態を終息させるために現カナダ政府が約10億カナダドル(約820億円)を投入する事態にまで発展しています。
● CNet Japan
・2013.12.20 オバマケア--大失敗したITプロジェクト(前編)
・2013.12.27 オバマケア--大失敗したITプロジェクト(後編)
● 読売新聞
・2021.03.10 昭和六十六・海上保安長長官…つまずくデジタル関連法案、ミス45か所
● まるちゃんの情報セキュリティ気まぐれ日記
・2005.03.24 失敗知識データベース これはイイ
・2005.04.15 論よりRUN
・2011.03.29 これも仕分けられたん? 「失敗知識データベース」サービス終了
・2011.03.29 金融庁 みずほ銀の事故の根本原因を検査
・2020.02.26 高信頼性組織を思い出そう!
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