« IPA 「情報システム・モデル取引・契約書」第二版を公開 | Main | NIST SP 1800-24 画像のアーカイブ及び通信システムの保護:医療セクターのサイバーセキュリティ »

2020.12.23

総務省 「発信者情報開示の在り方に関する研究会 最終とりまとめ」及び意見募集の結果の公表

こんにちは、丸山満彦です。

総務省が「発信者情報開示の在り方に関する研究会 最終とりまとめ」及び意見募集の結果を公表していますね。。。この研究会が始まった背景というか制度における課題は、研究会の第1回での資料や、最終報告書にも書かれていますが、

  • 発信者を特定できない場面の増加
  • 発信者特定のための裁判手続の負担

ということですね。。。

● 総務省

・2020.12.22 「発信者情報開示の在り方に関する研究会 最終とりまとめ」及び意見募集の結果の公表

・・[PDF] 別紙2 発信者情報開示の在り方に関する研究会 最終とりまとめ

・・[PDF] 別紙1「発信者情報開示の在り方に関する研究会」最終とりまとめ(案)に対する意見募集結果

課題を検討する際に、制度の法益をちゃんと考えようと報告書には書かれていて良いですね。。。


まず、発信者情報開示請求に係る制度の見直しに当たっては、発信者情報開示請求権によって確保を図ろうとする法益は何か、を確認した上で、その実現のための具体的な方策の在り方について検討を深めることが適当である。

具体的には、発信者情報開示請求に係る制度の趣旨は、裁判を受ける権利の保障という重要な目的を達成するために、発信者の表現の自由、プライバシー及び通信の秘密を制約する上で、当該制約を必要最小限度のものにとどめる必要性があるという前提を踏まえ、権利侵害を受けたとする者(「被害者」)の救済がいかに円滑に図られるようにするか、という点(被害者救済という法益)と、適法な情報発信を行っている者の表現の自由、プライバシー及び通信の秘密をいかに確保するか、という点(表現の自由等の確保という法益)との調和を適切に確保することにあると考えられる。

したがって、具体的な制度設計に当たっては、常にこの観点に留意しながら検討を深めることが適当である 9

 

9 その他、プロバイダの負担という観点にも留意が必要である。


つまり、法益としては、

被害者救済

表現の自由党の確保という法益

の調和を図ることが重要であるということですね。。。

で、脚注9があるのですが、これは、意見募集で楽天株式会社から


被害者救済という法益と、表現の自由等の確保という法益だけでなく、中間とりまとめと同様、プロバイダの手続負担の軽減という要素も本とりまとめに明記すべきである。
(理由)
プロバイダが関与することを前提とした制度とする以上、手続に関与する主体としてのプロバイダに対し、負担を課すような制度設計を行ってはならない。発信者と契約関係にあるとはいえ自ら表現行為を行うものではないプロバイダに過度の負担を課すことは、産業の発展を阻害する。本とりまとめにおいては、発信者の表現の自由と、被害者の救済という利益のみがとりあげられ、プロバイダの手続負担の軽減という要素が欠落しているが、当該要素も制度設計にあたって当然に考慮されなければならないと考えるため。
【楽天株式会社】


意見が出されたためですね。

法益ではないけれども、制度として社会に実装する際には、利害関係者総和のコストは避けられない観点ですから、脚注として記載しておくくらいは良いのだろうと思います。

世の中では「規制はなんでも悪」的な見方をする人もいるかもしれませんが、完全競争市場が実現していれば確かに規制は必要ないですが、完全競争市場が実現していない以上、規制は必要ですよね。外部不経済になっている部分を補正するという意味で。。。ただし、そうなっていない規制は改善する必要があると思います。

つまり、規制があることが悪いのはなく、悪い規制を放置していることが悪いということですね。。。

 

報告書の目次


第1章 発信者情報開示に関する検討の背景及び基本的な考え方について
1. 検討の背景等
2. 発信者情報開示の概要
(1) プロバイダ責任制限法における発信者情報開示制度の概要
(2) 発信者情報開示の実務の現状
(3) 現状の発信者情報開示の実務における課題

3. 検討に当たっての基本的な考え方

第2章 発信者情報の開示対象の拡大
1. 概要
2. ログイン時情報
(1) 発信者の同一性
(2) 開示の対象とすべきログイン時情報の範囲
(3) 開示請求を受けるプロバイダの範囲

3. まとめ

第3章 新たな裁判手続の創設及び特定の通信ログの早期保全
1. 非訟手続の創設の利点と課題の整理
2. 実体法上の開示請求権と非訟手続の関係について
3. 新たな裁判手続(非訟手続)について
(1) 裁判所による命令の創設(ログの保存に関する取扱いを含む。)
(2) 新たな手続における当事者構造
(3) 発信者の権利利益の保護
(4) 開示要件
(5) 手続の濫用の防止
(6) 海外事業者への対応

4. まとめ

第4章 裁判外(任意)開示の促進


 

総務省 - 発信者情報開示の在り方に関する研究会


 


● まるちゃんの情報セキュリティ気まぐれ日記

・2007.03.01 テレサ協 「プロバイダ責任制限法 発信者情報開示関係ガイドライン」を公開

・2007.01.12 テレコムサービス協会 パブコメ プロバイダ責任制限法 発信者情報開示関係ガイドライン(案)

・2006.07.01 総務省 パブコメ インターネット上の違法・有害情報への対応に関する研究会最終報告書案

|

« IPA 「情報システム・モデル取引・契約書」第二版を公開 | Main | NIST SP 1800-24 画像のアーカイブ及び通信システムの保護:医療セクターのサイバーセキュリティ »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« IPA 「情報システム・モデル取引・契約書」第二版を公開 | Main | NIST SP 1800-24 画像のアーカイブ及び通信システムの保護:医療セクターのサイバーセキュリティ »