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2020.03.17

日本銀行 2020年度考査実施方針

こんにちは、丸山満彦です。

日本銀行の2020年度考査実施方針が、公表されていました。

日本銀行

・2020.03.13 2020 年度の考査の実施方針等について

 

● 2019年度考査で確認された事例

① 各種リスクテイクの積極化に伴いリスクプロファイルが変化しているにもかかわらず、管理体制の見直しが十分でない事例

② 収益力の低下が続いているにもかかわらず、中期的な収益力の把握と対応策の実行が十分でない事例

③ 内外金融市場の急変時に、機動的な意思決定を行い得る体制が整備されていない事例

④ デジタライゼーションの進展に対し、サイバーセキュリティ対策や情報管理が追い付いていない事例

 

● 2020 年度の考査の実施方針 基本的な考え方

第一に、内外金融経済情勢などの外部環境に対する経営陣の認識と中長期的な経営戦略のもとでの、収益力および経営体力に関する経営管理の実効性を点検する。
その際には、

中長期的な収益力および経営体力に関する認識が的確であるか、

②これを踏まえて、非資金収益の強化や経営効率化、戦略投資の実施など、適切な施策を講じているかについて、経営陣との対話を深めていく。デジタライゼーションをどのように位置付け、業務改革や新規業務にどう活かそうとしているのかも確認する。併せて、

③貸出・有価証券運用のリスク・リターン分析や、事業本部・エリア別の収益性分析など、収益管理の枠組みが適切に整備されているかも点検する。また、

④信用コストの増加が明確化していることや金融検査マニュアルが廃止となったことも踏まえて、貸倒損失の見通しを検証するとともに、金融経済環境の変化等に応じた適切な償却・引当方法についても対話を深める。さらに、

各種ストレス事象を想定した場合の自己資本や期間収益への影響を適切に把握し、対応策を整備しているかを点検する。

先行きの収益力や経営体力に懸念が認められる先との間では、将来にわたり安定的に金融仲介機能を発揮していくための自己資本水準や、これを確保するための経営方針、有価証券評価益の活用や配当などの資本政策のあり方について、経営陣との対話を重点的に行う。考査終了後も、オフサイトモニタリングにおいて、収益力や経営体力等に関する課題と具体的な対応策について、経営トップとの対話を継続していく。

このほか、LIBOR の恒久的な公表停止については、時限性がある中で必要となる対応が幅広いことから、工程管理を含めて適切に対応が進んでいるかを点検する。気候変動問題、SDGs や ESG については、経営上の位置付けと取り組みを確認する。

第二に、金融機関のリスクプロファイルについて、足もとの状況と先行きの方向性を把握したうえで、リスク管理の実効性を点検する

信用リスクについては、大手金融機関における大型のクロスボーダーM&A 関連貸出やレバレッジド・ローン等の海外与信、地域金融機関におけるミドルリスク企業向け貸出や不動産業向け貸出など、金融機関が注力している分野を中心に、審査・管理の適切性、与信ポートフォリオのリスク特性の分析状況を点検する。

市場リスクについては、大手金融機関では CLO(Collateralized LoanObligation)やバンクローン・ファンドなどの海外クレジット商品等、地域金融機関では投資信託等を通じ、リスクテイクを積極化する動きがみられていることから、有価証券ポートフォリオが内包するリスクを点検する。

オペレーショナルリスクについては、重要性を増しているサイバーセキュリティ管理やマネー・ローンダリング対策等の体制整備の状況などを点検する。

また、大手金融機関については、海外関連資産の拡大を踏まえて、外貨流動性リスク管理の適切性を点検する。なお、新型コロナウィルスの感染拡大への懸念から、足もと内外金融市場で不安定な動きがみられるとともに、経済の先行きに対する不透明感が高まっている。こうしたもとで、金融機関が債務者の業況を適時適切に把握しつつ、その経営課題に的確に対応しているか、また、内外金融市場の変化に対して、市場リスク管理体制が有効に機能しているかを点検する。

第三に、経営管理やリスク管理の実効性を確保するために必要なガバナンス体制の整備状況や有効性について点検する

経営管理やリスク管理が有効に機能するために必要な情報把握体制や、業務の適正性を確保するうえで重要な内部監査の機能度を点検する。

また、持株会社形態の金融グループについては、グループベースでの統制状況を、グローバル展開する大手金融機関については、海外拠点に対する統制状況を点検する。

第四に、考査運営は、リスクの所在や収益力・経営体力の状況等に応じて、調査にめり張りをつけることを基本方針とする。

また、新型コロナウィルスを巡る最近の状況を踏まえ、感染拡大防止などの観点から、金融機関の実情に最大限配慮しつつ、考査運営面でも所要の対応を講じる。この間、グローバルに展開する大手金融機関については、海外拠点をはじめ主要グループ企業も必要に応じて対象とする。

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