判決文 東京地裁 平成27(ワ)34010 マイナンバー(個人番号)利用差止等請求事件
こんにちは、丸山満彦です。
2020.02.25に判決が出された東京地裁 平成27(ワ)34010 マイナンバー(個人番号)利用差止等請求事件の判決文が公開されていますね。
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・2020.02.25 東京地裁 平成27(ワ)34010 マイナンバー(個人番号)利用差止等請求事件
・判決文
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⑶ 結論
以上検討したところによれば,番号利用法及び同法に基づく個人番号制度 は,行政運営の効率化,社会保障に関する公平・公正な負担と給付の確保,国民の利便性向上という正当な立法目的に資するものであるが,その裏返し として,社会保障,税務等の分野に関わる一定の私事性・秘匿性を有する個 人に関する情報を取り扱うものといえる。
一方で,番号利用法及び同法に基づく個人番号制度に基づいて取り扱われる個人番号や特定個人情報については,様々な限定やその保護のための措置,具体的には,一元的な情報管理システムを採用せず,情報連携に利用できる事務や情報を取り扱える者を一定の範囲に限定し,個人番号自体を情報連携には使用しないこととし,独立性を有する個人情報保護委員会による監督の 制度を設けるなど,その情報の重要性に見合った情報の保護措置を講じていることが認められる。また,万が一,個人番号が流出したり漏えいしたりした際にも,それによって直ちに個人に関する情報の名寄せ等が行われないような対策を施していることが認められる。
そうすると,番号利用法及び同法に基づく個人番号制度により,個人番号 を付番された原告らの個人に関する情報がみだりに収集若しくは利用され,又は第三者に開示若しくは公表される具体的な危険が生じているということはできない。
したがって,原告らの,個人の私生活上の自由の一つとしての個人に関する情報をみだりに収集若しくは利用され,又は第三者に開示若しくは公表されない自由が侵害されているものとは認められない。
また,原告らは,原告らのうち,性同一性障害を有する者については,個人 番号制度が導入されたことによって,平穏に生活する権利等が侵害されたと主張し,同旨を述べる陳述書を提出する。
しかしながら,個人番号制度は,戸籍上の性別について,何ら新たな取扱い を定めたものではない。戸籍上の性別は,現に個人識別情報として広く利用さ れているところ,当該情報について,特に性同一性障害等を有する者に関しては慎重な取扱いがされるべきであることはもちろんであるが,行政機関等においても,手続の性質等に応じてそのような慎重な取扱いが浸透しつつある(一例として,「性同一性障害に係る児童生徒に係るきめ細やかな対応の実施等につ いて」平成27年4月30日文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知参照)。個人番号制度それ自体は,こうした状況を何ら変更するものではないから,個人番号制度によって直ちに当該原告らの平穏に生活する権利等が侵害されたとは認められない。また,個人番号カードには戸籍上の性別が表示されるものではあるが,同カードを利用しないことも可能であること,同カードの性別欄をマスキングするようなケースを併せて配布するなどの対策が講じられていることに照らせば,やはり,個人番号制度の導入によって当該原告らの権利等が侵害されたものと認めることは困難である。
以上によれば,番号利用法及び同法に基づき導入された個人番号制度が,原告らの権利等を侵害するものとは認められない。
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●NHK
・2020.02.25 “マイナンバーは憲法に違反していない” 訴え退ける 東京地裁
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(省略)25日の判決で東京地方裁判所の男澤聡子裁判長は「マイナンバー制度は、個人情報が正当な目的の範囲を逸脱して利用されたり、第三者に漏えいしたりしないよう、法制度やシステム技術で対策が講じられている」と指摘しました。
そのうえで「個人情報がみだりに利用される具体的な危険は生じていない」として、憲法に違反していないと判断し、市民グループの訴えを退けました。
(省略)
訴えを起こした1人で、東京 国立市の市議会議員の関口博さんは「個人情報を一元的に管理することの危険性を司法の場で訴えてきたが、判決では情報が漏えいする危険性はないと判断されてしまった。個人情報はどれだけ管理をしていても人的なミスなどによって、必ず漏えいが起こるということを理解してほしかった」と述べ、控訴する考えを示しました。(省略)
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