会計士協会 IFRS導入に向けた「豪州調査報告」を公表
こんにちは,丸山満彦です。先日,京都大学で内部統制等の講義をしましたが,大学の先生等とIFRSに関する情報の共有などもしました。いろいろと参考になることが多かったです。。。IFRS導入は会計の問題か政治の問題,法律的にはどうか,などなど。。。
ところで,会計士協会が公開している,IFRS導入に向けた「豪州調査報告」はなかなか参考になりますね。。。そもそもオーストラリアは国際会計基準とほぼ同じであったわけですが,それでもいろいろと課題があったようですね。。。
■日本公認会計士協会
・2009.11.11 【お知らせ】IFRS導入に向けた「豪州調査報告」公表される
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豪州におけるIFRS導入の概要
・ 2002年にIFRS導入が決定され、2005年から強制適用されている。IFRSの適用対象は、全てのentityであり、単一の基準が採用されている。非営利企業や豪州政府等の公的機関にも、IFRSが適用されている。
・ AASB(豪州会計基準委員会)が会計基準を設定し、FRC(財務報告審議会)がその活動を監督している。企業によるIFRSの適用状況は、ASIC(豪州証券投資委員会)によって、監視されている。IFRSを全面的に導入した現在、会計基準設定主体としてのAASBの主要な役割は、IASBに対して積極的に意見発信を行い、IFRS設定のプロセスに関与し貢献することである。
・ 豪州の会計基準はもともと原則主義であり、IFRS導入以前からIFRSとの調和を取っていたため、IFRSへの移行は基本的にスムーズに行われた。また、英国と法制度が類似しており、言語も同じ(英語)であることも、スムーズな導入を可能とした理由であると考えられる。
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もともと原則主義で,英国の制度との類似性もあったというのが,ひとつポイントで日本との違いでしょうね。。。
気づいた点としては,(カテゴリーは丸山の任意どす)
【教育関係】
・監査人の教育をIFRSだけにできるので,楽になった。
・経営層への認識向上は、十分に対応できなかった分野である。教訓として、日本ではこの点により焦点を当てるべきである。また、より多くの場所で個別分野や産業に焦点を絞った研修も実施すべきであった。
【システム投資】
・豪州基準とIFRSでは近しいとは言え,金融商品の会計では違いがあり,その違いのため金融機関はシステム投資が必要となった。(20~25%くらいの増加)
・IFRSへの移行時にシステム変更が必要になることから、ソフトウェアの購入について税務上の恩典が与えられた。(ACCI)
【原則主義】
・ビック4と規制当局で会計基準の解釈は共通であるので,原則主義の導入は大きな問題とはならなかった。
・原則主義の運用にあたっては、監査事務所内で、豪州ローカル事務所がグローバル本部に問い合わせることがあり、企業への質問の回答に時間がかかることが多かった。
【普及】
・豪州独自のガイドラインはないため、各企業はAccounting Policy Manualを作成したが,その際には会計士のサポートが必要だった。
・マスメディアがIFRSに対する正しい理解を持つよう誘導することが重要である。
・大学教育におけるカリキュラムの変更は制度変更に追いついていなかった。
【制度導入】
・IFRSを採用するのであれば部分的な採用は避け,丸ごと取り入れるべき。
・IFRSの採用は、中小企業にとっては余りベネフィットでなかったと考えられる。(ASIC)
・IFRS導入により不正が増加したという報告はない。(FRC, Treasury, Alumina)
システム投資に税務上の恩典を与えたようですね。。。
システム投資に対する税務上の恩典があったらしいですよ。。。
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