公認会計士協会 パブコメ 監査・保証実務委員会研究報告「公認会計士等が行う保証業務等に関する研究報告」
こんにちは、丸山満彦です。公認会計士協会から監査・保証実務委員会研究報告「公認会計士等が行う保証業務等に関する研究報告」についてのパブコメの募集がありましたね。。。
【日本公認会計士協会】
・2008.08.08 監査・保証実務委員会研究報告「公認会計士等が行う保証業務等に関する研究報告」(公開草案)の公表について
・前書文 (PDF ・1P・14KB)
・本文 (PDF ・40P・121KB)
国際会計士連盟の国際保証業務基準ISAE3000をベースにしたものですね。。。
ダイレクトレポーティングと言明方式については、次のように説明されています。
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(2) 保証業務の分類
① 主題情報に対する保証業務と直接報告による保証業務
保証業務は、業務実施者が行う評価又は測定の対象である主題情報の有無により、主題情報に対する保証業務と直接報告による保証業務に分類される。
ア.主題情報に対する保証業務
主題情報に対する保証業務は、主題に責任を負う者が、一定の規準によって主題について自ら評価又は測定を行い、その主題を評価又は測定した結果を表明する情報に対して、業務実施者が当該主題情報の客観的な規準への準拠性について独立した第三者の立場で評価又は測定し、自ら入手した証拠に基づき規準に照らして判断した結果を結論として報告する業務である。主題情報は、保証報告書とともに、想定利用者に提示される。
例えば、金融商品取引業者の分別管理の検証業務では、分別管理の法令遵守に関する経営者報告書において、基準日現在において金融商品取引法第43条の2第3項及び関連法令・規則を遵守して顧客資産を分別管理していた旨の記述が主題情報である。この主題情報に対して公認会計士等が信頼性を付与する。
イ.直接報告による保証業務
直接報告による保証業務は、業務実施者が、主題に責任を負う者からの主題情報を入手することなく、主題それ自体を直接客観的な規準に照らして評価又は測定した結果を結論として報告し、もって主題に対して一定の信頼性を付与する業務である。
公認会計士等が行う保証業務は、通常、主題情報に対する保証業務である。
主題情報に対する保証業務の場合、業務実施者は、主題に責任を負う者から主題情報を文書で入手する。
主題情報を文書によって入手できない場合、業務実施者は、直接報告による保証業務として実施することができるかどうかを検討することになるが、その際、主題に対して一定の信頼性を付与するために十分かつ適切な証拠が入手可能かどうかを慎重に検討することとなる。
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あと気になるのは、内部統制報告制度の導入に伴い一部混乱が生じているという話も聞きますが、もしそうであれば、それは保証業務の5つの要素
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(1) 業務実施者、主題に責任を負う者、想定利用者を含む保証業務に関わる三当事者関係
(2) 保証業務における適切な主題
(3) 主題を評価又は測定するのに適した規準
(4) 十分かつ適切な証拠
(5) 合理的保証又は限定的保証を表現するために適切な様式により書面をもって提供される保証報告書
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のうちの「(3) 主題を評価又は測定するのに適した規準」に関わる問題ではないかと思っています。
学者の方には特にこの点についての研究が深めていただけたらと思います。
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7.保証業務に関する規準の必要性とその要件
公認会計士等が行う保証業務の信頼性を確保するためには、保証業務の主題情報を作成又は実施する規準(以下「作成等の規準」という。)と、財務諸表監査における監査の基準のような保証業務を実施するための基準(以下「業務実施基準」という。)が必要である。
(1) 作成等の規準
作成等の規準は、業務実施者にとっては、主題を評価、測定及び判断するための規準となる。
作成等の基準は、業務実施者による結論の報告に際して、当該結論を形成するための根拠として重要であることから、職業的専門家としての公認会計士等が、合理的に結論を導き出せるものであって自らの期待、判断及び個人的な経験を用いることは適切ではない。そのための適切な規準としての要件は、次のようなものが考えられる。
① 目的適合性
保証業務の目的に応じた想定利用者による意思決定の合理的な結論を導き出すのに役立つもの(目的適合的であれば、作成等の規準には表示及び開示の規準が含まれる。)
② 完全性
保証業務の目的を達成できるようにするために、必要な要因が網羅的に織り込まれたものでなければならず関連する要因のいずれもが省略されていないもの
③ 信頼性
同一の環境で利用した場合、主題の評価又は測定を合理的にかつ首尾一貫した結論に至るよう信頼できるもの
④ 理解可能性
明瞭にして包括的であり、保証報告書の想定利用者が重大な解釈の誤りをする余地を与えないようなもの
⑤ 客観性
想定利用者が保証報告書の結論を受容できるほど客観的かつ中立的なもの作成等の規準は、制度として確立されたもの(法令・規則等によって定められたもの、幅広い関係者による公正かつ透明性のある適切な手続を通じて権威ある又は認められた機関によって公表されたもの)及び主題に応じて特別の目的のために作成されたものに区別することができる。権威ある又は認められた機関とは、例えば、監督機関、想定利用者、主題に責任を負う者、公認会計士等から構成される外部性の高い基準設定主体が想定される。
特別の目的のために作成された規準の適切性を評価するに当たっては、業務実施者は規準の作成手続の適切性と上記の規準としての要件を満たしているか否かについて慎重に検討する。
特定の保証業務に対するそれぞれの要件の相対的重要性は、業務実施者の判断事項である。この場合、業務実施者は特別の規準についてその設定過程及び設定の際に用いられた尺度や指標の妥当性を評価し業務実施者のための準拠可能性を判定する。
(2) 想定利用者の利用可能性
主題がどのように評価又は測定されているのかを理解するためには、想定利用者にも規準が利用可能であることが求められる。想定利用者にとって利用可能な規準とは、以下のような規準である。
① 公表されている規準
② 主題情報において明示されている規準
③ 保証報告書において明示されている規準
④ 広く一般に理解を得られている規準
規準が特定の想定利用者のみに利用可能である場合、又は、特定の目的のみに適合するものである場合には、当該規準に基づいた結論を報告する保証報告書の利用は、当該特定の利用者又は特定の利用目的に制限される。この場合には、本研究報告の「13.保証報告書(4)保証業務報告書の記載事項⑥保証業務報告書の利用制限」によりその事実を明示する。
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【参考】このブログ
・2006.03.11 日本の保証基準
Comments
「主題情報」ですか。
制度を外国から輸入するときに、的確な日本語が当てはまるかどうかが、概念の混乱を回避し制度が円滑に導入され普及する上でとても重要ですね。
以上、飲み屋(パブ)からのコメントです。
Posted by: 閑人 | 2008.08.17 14:47
閑人さん、コメントありがとうございます。
国際監査基準のFrame work パラグラフ25では
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The responsible party is the person (or persons) who:
(a) In a direct reporting engagement, is responsible for the subject matter;
or
(b) In an assertion-based engagement, is responsible for the subject matter
information (the assertion), and may be responsible for the subject
matter.
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となっていますよね。。。
Posted by: 丸山満彦 | 2008.08.19 11:55
Subject Matterですか。
被保証(証明)対象となっている情報(事項)と訳せばいいですね。
哲学書ではないので原書に当たらなければ理解できないのでは閑人凡人は困ります。
Posted by: 閑人 | 2008.08.19 16:28
閑人さん、コメントありがとうございます。
保証業務についての理論的な枠組みというのは、会計士の中でも理解している人は少ないでしょうね。学者でもその分野を専門としている人は少ないと思います。
なので、閑人さんがよくわからなくても心配はいりません。学者や会計士といった専門家が一般の人にも分かりやすく解説していく必要があるのでしょうね。。。
それが、専門家としての努めのひとつだと思います。。。
Posted by: 丸山満彦 | 2008.08.19 18:40
どうも周りで話をしていると、ダイレクトレポーティングとインダイレクトレポーティングの違いは(いまだに)十分に理解されていないようです。
日本の制度では、(財務報告に係る)内部統制に重要な欠陥があっても、内部統制監査では無限定適正意見はもらえますよ、といってもピンと来ていない方が多いように感じます。
ダイレクトとインダイレクトのどちらが良いのか、というのはさておいて、まずこの両者の違いを専門家が分かりやすく解説をして欲しいものだと思います。
これも全社統制に関わることといってしまえばそれまでなのですが、下の人間から説明しても、全く理解しようとしない上の人間もいますので、ぜひとも専門家の方には一般向けの分かりやすい説明を考えて頂きたいです。この手のタイプは、専門家がそう言っています、の一言で態度がすぐ変わりますので。
実務現場における理論軽視が、こういった事態を招いている原因の一つであるような気がします。
Posted by: FN | 2008.08.20 01:37