監査の品質
こんにちは、丸山満彦です。閑人さんから「監査の品質」についてコメントをいただいたので普段考えていたことの備忘録で・・・
そもそも品質管理っていうけど、監査の品質管理って言う場合に、
・「グレードを向上させる」ことなのか
・「ばらつきを減らす」ことなのか
また、
・「Quality Management」なのか
・「Quality Control」なのか
を混乱して利用されている場合がありそうです。
情報の整理を・・・
■JISQ9000:2006における品質に関する定義
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3.1 |
品質に関する用語 |
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3.1.1 |
品質 |
本来備わっている特性(3.5.1)の集まりが,要求事項(3.1.2)を満たす程度。 |
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3.1.2 |
要求事項 |
明示されている,通常,暗黙のうちに了解されている若しくは義務として要求されている,ニーズ又は期待。 |
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3.1.3 |
等級 |
同一の用途をもつ製品(3.4.2),プロセス(3.4.1)又はシステム(3.2.1)の,異なる品質要求事項に対して付与される区分若しくはランク |
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3.2 |
マネジメントに関する用語 |
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3.2.1 |
システム |
相互に関連する又は相互に作用する要素の集まり。 |
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3.2.2 |
マネジメントシステム |
方針及び目標を定め,その目標を達成するためのシステム(3.2.1) |
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3.2.3 |
品質マネジメントシステム |
品質(3.1.1)に関して組織(3.3.1)を指揮し,管理するためのマネジメントシステム(3.2.2) |
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3.2.4 |
品質方針 |
トップマネジメントによって正式に表明された,品質に関する組織の全体的な意図及び方向付け。 |
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3.2.5 |
品質目標 |
品質に関して,追求し,目指すもの |
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3.2.6 |
マネジメント,運営管理,運用管理 |
組織(3.3.1)を指揮し,管理するための調整された活動 |
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3.2.8 |
品質マネジメント |
品質(3.1.1)に関して組織(3.3.1)を指揮し,管理するための調整された活動。 |
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3.2.9 |
品質計画 |
品質目標(3.2.5)を設定すること,ならびにその品質目標を達成するために必要な運用プロセス(3.4.1)及び関連する資源を規定することに商店をあわせた品質マネジメント(3.2.8)の一部。 |
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3.2.10 |
品質管理 |
品質要求事項を満たすことに焦点を合わせた品質マネジメントの一部 |
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3.2.11 |
品質保証 |
品質要求事項が満たされるという確信を与えることに焦点を合わせた品質マネジメントの一部。 |
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3.2.12 |
品質改善 |
品質要求事項を満たす能力を高めることに焦点を合わせた品質マネジメント(3.2.8)の一部。 |
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3.2.14 |
有効性 |
計画した活動が実行され,計画した結果が達成された程度。 |
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3.2.15 |
効率性 |
達成された結果と使用された資源との関係。 |
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3.3 |
組織に関する用語 |
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3.3.1 |
組織 |
責任,権限及び相互関係が取り決められている人々及び施設の集まり。 |
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3.3.2 |
組織構造 |
人々の責任,権限及び相互関係の配置。 |
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3.4 |
プロセス及び製品に関する用語 |
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3.4.1 |
プロセス |
インプットをアウトプットに変換する,相互に関連する又は相互に作用する一連の活動 |
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3.4.2 |
製品 |
プロセス(3.4.1)の結果。 |
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3.4.5 |
手順 |
活動又はプロセス(3.4.1)を実行するために規定された方法。 |
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3.5 |
特性に関する用語 |
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3.5.1 |
特性 |
そのものを識別するための性質。 |
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3.5.2 |
品質特性 |
要求事項(3.1.2)に関連する,製品(3.4.2),プロセス(3.4.1)又はシステム(3.2.1)に本来備わっている特性(3.5.1)。 |
■日本公認会計士協会
・2008.01.21 品質管理委員会 委員会報告 「平成19年度上半期における品質管理レビューの概要」の公表について 本文
・2007.10.25 品質管理基準委員会 委員会報告1 号 「品質管理基準委員会報告書第1号「監査事務所における品質管理」の一部改正」の公表について 本文
■利害関係者の期待という意味も含めて、行政による規制も関係しますよね。。。
【参考】このブログ
・2008.05.02 金融庁 パブコメ 「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方」の改訂(案)
Comments
何となくですが、現時点では「ばらつきを減らす」ことに主眼が置かれている気がします。
valuableかどうかは、一定の品質レベルをクリアしてからのお話でしょうし。
Posted by: namineko | 2008.05.07 01:33
naminekoさん、コメントありがとうございます。
品質管理はばらつきを減らす話ですよね。。。
そのためには手順を定めて標準化をしていくことが重要となりますよね。。。
Posted by: 丸山満彦 | 2008.05.07 07:47
そうですね。標準化、というのは一つの手法と考えます。標準化が弊害を生む場合もあります。
教科書に書いてある通り、監査は一方的なものではなく、被監査企業と協力し合ってするものでし、監査の品質を一定レベル以上にすることは、監査人側の努力だけでは何ともならないのではないと思います。そこが監査の品質管理という命題の核心であり、困難さを生み出す部分なのでしょうね…。
Posted by: namineko | 2008.05.07 21:34
「品質を維持するためには一定の監査時間が必要である」というのは、ある事象に対する手続や判断にばらつきがないようにするという意味での理解は、監査サービスの提供者の論理として非常に分かりやすいのですが、どうも受ける側はそのように受け止めていないような感じです。
無料配布物の内容とか、往査者がいろいろなことを知っていて何でもよく聞けるとか、そういう受け止め方をしている向きがいらっしゃいませんか。
Posted by: 閑人 | 2008.05.07 21:39
naminekoさん、閑人さん、コメントありがとうございます。
標準化という場合には、何をどこまで標準化するかということを意識する必要があるかもしれませんね。
方針レベル、目標レベル、プロセスレベル、もっと具体的な手順レベル。。。いろいろとあるのでしょうね。。。
クライアントの期待と監査報告書利用者の期待というのが必ずしも一緒ではないと思うので、監査の品質って難しいのかもしれませんね。
社会的に監査の品質レベルって合意されているのでしょうけど。。。
Posted by: 丸山満彦 | 2008.05.12 11:20
>社会的に監査の品質レベルって合意されているのでしょうけど。。。
そういう「前提」で社会は動いていますね。
本来は、開示情報の「品質」が先に議論されるべきですが、「適正」「不適正」だけでばっさり割り切る割にはその境目がハッキリしていないところに問題ないのでしょうか。
Posted by: 閑人 | 2008.05.14 05:43
閑人さん、コメントありがとうございます。
> 開示情報の「品質」が先に議論されるべきですが、「適正」「不適正」だけでばっさり割り切る割にはその境目がハッキリしていないところに問題ないのでしょうか。
いわれてみればそのとおりですね。。。
Posted by: 丸山満彦 | 2008.05.14 14:35