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2008.04.20

粉飾を見抜けなかった監査法人に損害賠償を認める判決

 こんにちは、丸山満彦です。事実関係だけを羅列します。さまざまな分野の専門家により、さまざまな角度から分析され、よりよい社会になるとよいと思います。。。

 
 各方面から苦情がでないような書き方となるように注意はしていますが・・・

 

【報道】
■日経新聞
・2008.04.19 ナナボシ粉飾決算 トーマツ監査に過失 大阪地裁1700万円賠償命令(朝刊)

 ・・・管財人の辰野久夫弁護士によると、上場企業の法定監査で監査法人の過失を認めた判決は極めて異例。辰野弁護士は「企業ぐるみの粉飾決算といえど、監査法人に一定水準の監査を求めた判断として評価できる」と話している。
 ・・・稲葉重子裁判長は「監査法人は財務上に不自然な兆候があった場合、原因解明する追加の監査手続きをすべきで、怠れば責任を免れない」と指摘。その上で01年三月期について、監査意見をつけた同年六月末までに工事代金の入金がなかった点について「工事が実在するかなどに疑念を抱き、追加の監査手続きをすべきだった」と判断した。
 98年-00年の三月期は入金が確認されていたため過失を否定した。
 損害については、監査意見を踏まえて株主総会で配当を決めていることから、一年分の違法配当約8500万円と算定。ただし、粉飾決算が組織ぐるみで「責任の八割は旧経営陣にある」として二割分の賠償を命じた。
 社外流出金は「監査意見を付けなければ支出を阻止できたという関係にない」として損害を認めなかった。
 トーマツ側は「ナナボシが粉飾の意思を隠して監査契約をした」として契約無効も主張したが、稲葉裁判長は「監査契約には経営陣の不正を正す目的も当然含まれており、財務諸表が正確か虚偽かを監査するのが監査法人の責務」と退けた。
・・・

・2008.04.18 ナナボシ粉飾決算、トーマツに賠償命令・大阪地裁

 経営破綻した発電設備工事会社「ナナボシ」(堺市、民事再生手続き中)の粉飾決算事件に絡み、同社管財人が「粉飾を見抜けず会社に損害を与えた」として大手監査法人のトーマツに約10億1900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は18日、一部について「監査手続きに過失が認められる」として約1700万円の賠償を命じた。・・・

 

■朝日新聞
・2008.04.19 監査法人に賠償命令 大阪地裁 粉飾見抜けず(朝刊)

 粉飾決算が発覚して01年に破綻した発電設備工事会社「ナナボシ」(堺市)=民事再生法の適用を受け生産中の監査で粉飾を見抜けず会社に損害を与えたとして、同社の管財人の弁護士が、監査人だった監査法人大手「トーマツ」(東京)に焼く10億円2000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が18日、大阪地裁であった。稲葉重子裁判長は、01年3月期の決算の監査について、公共工事の受注を装った売り上げ形状を虚偽と無抜くべきだったと指摘し、約1700万円をし春用トーマツに命じた。
 日本公認会計士協会によると、上場企業の会計監査をめぐって監査法人の過失を認めた判決は確認できる限り前例がない。管財人の辰野久夫弁護士は「証券市場に対する信頼性が問われるなか、粉飾決算が企業ぐるみのものであっても、監査法人にも責任があると認めた画期的な判決だ」と評価している。
・・・
 判決はトーマツが通常の監査だけでなく、追加監査をするべきだった時期について検討した。「00年決算までは工事代金を装う入金がなされていたが、01年決算では入金の遅れを指摘しながら理由を調査しなかった」と指摘。工事が実在するかどうか調べなかったことについて「実施すべき監査手続きを満たしたとは言えない」と判断した。
 トーマツの過失が発生した01年3月期に株主に違法に配当された約8500万円をナナボシの損害と認定。賠償額について粉飾決算は上場企業の対面を保つという利己的な動機から、組織ぐるみで実行された」と指摘した上で同社自身の過失が8割、トーマツ2割として算定した。・・・

 

・2008.04.18 粉飾見抜けず 監査法人トーマツに賠償命令 大阪地裁

・・・
 判決によると、ナナボシは95年に大証2部に上場したが、まもなく事業の失敗で赤字に転落。98~01年の3月期決算で、和歌山県の土地改良区などから工事を請け負ったように装って売り上げを計上する方法で決算を粉飾した。管財人はこの4年間にわたって、トーマツが粉飾を見抜けず、「会計は適正」との監査意見を出した責任を問い、04年に提訴した。
・・・

 

■読売新聞
・2008.04.19 粉飾決算見落とした監査法人に1700万賠償命令…大阪地裁

 

■毎日新聞
・2008.04.19 ナナボシの粉飾決算:トーマツに賠償命令 粉飾決算見過ごす--大阪地裁

 

■産経新聞
・2008.04.18 粉飾見抜けず「トーマツ」に賠償命令 大阪地裁

 

 

【ブログ】
●ビジネス法務の部屋
・2008.04.19 大手監査法人に粉飾決算事例で初の賠償命令

 

●Matimulog
・2008.04.19 jugement:粉飾決算による損害は監査法人に賠償させろ

 

●会計や監査の話などなど。
・2008.04.19 「粉飾見抜けず 監査法人トーマツに賠償命令 大阪地裁」

 

●クレイジーパパ
・2008.04.19 粉飾上場会社の監査法人に初の賠償命令

 

●個人的な備忘記録・注目記事
・2008.04.19 監査法人トーマツに賠償命令 「粉飾見抜けず損害」認定

 

●Japan Law Express
・2008.04.19 ナナボシ粉飾決算問題で大手監査法人トーマツに損害賠償命令

 

●investor7の投資日記
・2008.04.20 トーマツに賠償判決

 

●Grande's Journal
・2008.04.19 トーマツ ナナボシ裁判で賠償命令

 

【2チャンネル】
【会計監査】ナナボシ粉飾決算、トーマツ監査に過失・1700万円賠償命令…大阪地裁 [08/04/19]

 

 

=====
【参考】
■金融庁
・2006.03.30 監査法人及び公認会計士の懲戒処分について ・・(別紙2)ナナボシ事案の概要(PDF:59K)

 

■参考?判例
●東京地方裁判所(第一審)
平成18年9月27日判決
事件番号:平成14年(ワ)第16955号 監査法人トーマツに対する福徳銀行・なにわ銀行有価証券報告書虚偽記載(無限定適正意見)損害賠償請求事件判決

 

●宇都宮地方裁判所
平成18年12月7日第1民事部判決
事件番号:平成16年(ワ)第322号
旧中央青山監査法人に対する足利銀行監査注意義務違反損害賠償請求事件判決

 

●大阪地方裁判所
平成17年2月24日民事第七部判決
事件番号:平成10年(ワ)第5877号
損害賠償請求事件(山一證券)

 

●大阪地方裁判所
平成19年4月13日判決
事件番号:平成11年(ワ)第12705号
損害賠償請求事件(長銀)

 

 

【裁判所】
判例検索

 

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Comments

丸山先生

弁護士の山口です。貴重な情報ありがとうございました。判例の件につきましては、参考にさせていただきます。(とくに足利の件は間違った情報につき、拙ブログの該当箇所を訂正しておきます)
この問題については、専門家と中小も含めた会社の財務責任者が垣根を越えて検討していくべき問題だと思っております。ブログを含め、私自身の立場もわきまえながら発言をしていきたいと思っていますので、どうかまた(できる範囲で)ご意見等、よろしくお願いいたします。

Posted by: toshi | 2008.04.20 11:41

山口先生、コメントありがとうございます。
LEXのデータベースから検索しています。
足利銀行の件ですが、訴えの変更があるので、複数ありますよね。
=====
宇都宮地方裁判所平成16年(ワ)第322号,第347号,第390号,第423号,第442号,平成17年(ワ)第60号
=====
となるようです。。。

Posted by: 丸山満彦 | 2008.04.20 12:06

山口先生、追加です。最後は和解です。

http://www.ashikagabank.co.jp/pdf/abk_q742.pdf

=====
平成19 年7 月2 日
各 位
民事提訴事件の一部和解について
株式会社足利銀行(頭取 池田憲人)は、「平成13 年3 月期決算における違法配当事案」にかかる損害賠償請求訴訟において、被告みすず監査法人(旧中央青山監査法人)および旧監査
役4名との間で、宇都宮地方裁判所の和解勧告に従い、本日下記のとおり和解が成立いたしましたので、お知らせいたします。

1. 損害賠償請求訴訟の概要
提 訴 日 平成17 年2 月4 日、平成17 年9 月16 日
事 件 名 宇都宮地方裁判所 平成17 年(ワ)第51、477 号(違法配当事件)
(平成19 年1 月31 日 併合)
被 告 柳田美夫、飯塚眞、仲山茂、羽川紀敏、田中隆、長安正、池田壯(旧取締役)
里見繁、沼口菊郎、田島一郎、石嶋吉造(旧監査役)
みすず監査法人(旧中央青山監査法人)
請求金額 1,135,800,000 円
2. 和解の概要
(1) 責任の明確化
上記被告のうち、被告みすず監査法人においては、同監査法人が会計監査を行い適法の監査意見を表明した弊行の平成13 年3月期決算に関し、果たすべき役割を全うするに至らなかった責任を認め、弊行に対し和解金を支払うこととしました。
また、被告旧監査役4 名についても、果たすべき役割を全うするに至らなかった責任を認め、弊行に対し和解金を支払うこととしました。
(2) 和解金額
みすず監査法人 2 億5,000 万円
旧監査役4 名(総額) 1,200 万円
3. 今後の対応
本件訴訟のうち、みすず監査法人および旧監査役4 名を除く被告にかかるもの、ならびに別件にて提起している個別融資事案に関する訴訟については、宇都宮地方裁判所にて継続して審理が行われており、引き続き預金保険法第116 条に基づき、旧経営陣の責任を明確にすべく対応してまいります。
以 上
=====

Posted by: 丸山満彦 | 2008.04.20 15:54

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