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2007.11.05

日本経団連 財務報告に係る内部統制報告制度に関する調査結果概要

 こんにちは、丸山満彦です。日本経団連が「財務報告に係る内部統制報告制度に関する調査結果概要」を公表していますね。。。経団連の会員企業の一部の企業(75社)に送付し、37社から回答を得たもので、経営者評価を行う、又はその経営者評価について監査を受ける立場として、非常に示唆に富む意見が載っていますね。一般論として制度設計に係るもの、監査人とも参考にするとよいでしょうね。。。
 
【日本経団連】
・2007.11.02 財務報告に係る内部統制報告制度に関する調査結果概要

課題の抜き出し・・・

公表文書等の記載事項に関し、監査人との解釈の相違が生じているため、明確化が必要な事項

内容及び影響

解決のための要望

・監査人は監査証拠の直接入手(サンプル数増)を増加させようという傾向が強い。具体的にはJICPA実務指針の確定を受け、監査法人内の基準が作成の模様だが、その方向を危惧している。

・経営者が基準等に従い、テストを実行し、正当に入手した証拠を監査人が経営者から入手した場合、監査人が検証して明らかに信頼性を欠くもの以外は、監査人が直接入手した証拠と同等に、監査人の意見形成の基礎とすることは認められることを規定していただきたい。

・決算・財務報告プロセスの内の、総勘定元帳から財務諸表作成にいたる手続(=決算手続)は全社的な観点で評価することとなっていることから、全社的な内部統制を実施する持分法適用関連会社についても、総勘定元帳から財務諸表作成にいたる手続(=決算手続)を評価すべきと監査人は主張している。

・持分法適用会社については、原則として、全社的な内部統制のみで事足りると明記すべきである。

・重要な事業拠点における評価対象範囲の決定に際し、実施基準では「原則として、すべてを評価の対象とする。ただし、・・・財務報告に対する影響の重要性も僅少である業務プロセスについては、それらを評価対象としないことができる」としている。当社では企業活動及び管理の実態に則し、財務報告に与える重要性から真に必要な範囲に評価対象組織、業務プロセスを絞り込むべく検討しているが、担当監査法人は重要な事業拠点内における評価範囲カバレッジの絶対値に拘り、財務報告に与える影響が軽微な個々の小規模組織における詳細な業務プロセスについても評価を要求しているため、当社の作業負担増が強く懸念されている。

・金融庁にて、重要な事業拠点において評価対象外とする「重要性が僅少である業務プロセス」に関し、例えば、「各企業にて一定の金額基準等の合理的基準を設定し、個々の業務プロセスについて当該指標が基準を下回る場合には評価対象外とすることが可能である」といった解釈を明らかにしていただきたい。

 

 

公表文書等に記載のない事項に関し、監査人との間で考え方に相違が生じているため、明確化が必要な事項

内容及び影響

解決のための要望

・実施基準Ⅱ.3.(3)①②において、章末(参考2)(参考3)の図表(いわゆる3点セット)に関し、「企業において別途、作成しているものがあれば、それを利用し、必要に応じそれに補足を行っていくことで足り、必ずしもこの様式による必要はない」としているが、監査人は3点セットの作成を前提としており、また監査の効率性を目的として、3点セット相互の連関を厳格に求められるケースがある。

・金融庁から各監査法人等に対し、業務プロセス評価に関し、企業の既存文書の活用を基本とするよう、また過度の文書化を強いることがないよう、改めて徹底して頂きたい。

・その他の業務プロセスの運用状況の評価を、期首から何ヶ月経過後から開始できるかが不明である。具体的には3ヶ月経過後からサンプルを抽出し、評価可能とはいうが、その場合、追加として後の2~3ヶ月の対象からサンプルを抽出し、追加テストを必要(ないし推奨)と監査人は主張する。これでは、二度手間の非効率を回避するには、6ヶ月経過後からサンプル抽出によるテストを実行するしかない。この場合、11月以降のテストになり、2ヶ月程度で完了するには(仮基準日は12月末を想定)、大量の評価要員が専従で対応するしかないが、要員確保を含め、実行は不可能に近い。

・その他業務プロセスの運用評価で、日常行う統制としてサンプルを抽出して、テストをする場合、期首から最低3ヶ月以上経過後のデータ母集団からサンプルを抽出し、テストを実施し、統制が有効の評価を得た場合、その後の業務統制が変更されてない限り、当該期のテストは完了したものとしていただきたい。なお、変更の有無は責任者へのヒヤリング等で十分とし、監査人の確認も同じ手続きでよいこともあわせて明示していただきたい。

・決算・財務報告プロセスに係る内部統制の評価に関連し、数値計算等に使用するExcel等のスプレッドシートに係る統制の評価について、当社ではリスク評価に基づき範囲を合理的に絞り込む方向で検討しているが、担当監査法人からは全てのスプレッドシートを洗い出した上で評価を実施すべきとのコメントを受けており、当社にとって作業負担が過大となる懸念がある。

・金融庁から各監査法人等に対し、トップダウンリスクアプローチに基づく合理的な評価範囲の決定により、費用対効果を考慮した実効的且つ効率的な内部統制評価が望まれる旨を、改めて徹底して頂きたい。

・IT全般統制やIT業務処理統制について、必要以上に突出した細かな統制を求めてくるケースが散見される。

・財務報告に重要な影響を与えると判断される主要な統制項目にITが活用されている場合に限って、IT全般統制やIT業務処理統制をすれば事足りることとしていただきたい。

・強要ではないということだが、経営者による全件ウォークスルーテストや、作成文書にかかる職務分掌表の作成を要求されている。

・企業の作業負荷に大きく係わるところであり、強制ではないことを実施基準Q&A等に明示いただければありがたい。

 

 

実務運用上の緩和が望まれる事項、その他本制度に関する意見

・担当監査人によって制度の理解に相当程度のバラ付きが生じている。会社側が主体的に考える部分が多いことの反動として、監査人側の見解や判断が相当程度会社側の個別事情を踏まえざるを得ない部分が増えており、実際の評価結果を元に法人内で監査意見を表明する過程に於いて、監査法人内審査部門の内規的なものに縛られて、それまでの協議の経緯や結論が覆るような事態が生じないよう慎重な対応が必要。(財務諸表監査でもそういった事例が増えてきており、実務上困る場合がある。)

・重要な欠陥の判断指針の金額的重要性(連結税前の5)については、本来、業績と内部統制上の判断は別個のものと考えられるため、監査上、形式的に濫用されることがないよう十分徹底していただきたい。

・会社法監査終了日までに、限定的な一部を除き、内部統制手続が終了するよう、監査手続効率化を徹底いただきたい。

・EUC(エンド・ユーザー・コンピューティング)の評価の範囲を緩和して頂きたい。監査人もいまだ全社統制の評価方針や評価範囲について決まらない中、内部統制を整備、文書化するのは非効率的である。金融庁は、会計士協会の準備状況や企業への対応状況を見極め、適用時期や内容を再検討すべきではないか。

・業務プロセスに係る内部統制の不備による影響額算定方法については、実施基準等には、定性的な記載しか行われておらず、業務設計にあたり苦慮している。具体的な事例に基づく、不備による影響額算定方法を明示していただきたい。

・海外子会社とのコミュニケーション上、基準や指針の英語版が不可欠です。今後公表されるものについて出来れば英訳も同時に発表されるよう希望します。

・対象範囲の段階的引上げを認めていただきたい。特に海外子会社については、コンバージェンス対応も同時に行うことが必要であり、初年度から対象とするには負荷が大きい。

・全社的な内部統制評価の重要性は判らなくも無いが、確認項目が非常に多いため、連結対象となる関連会社には対応不可能な項目が多い。上場企業と一律の内容を求めることが必要なのか、再検討を戴きたい。

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Comments

「これをすれば十分」というのを明示しろというのは実務をする立場からすると当然ですね。
でも、「適正」を求められるとすると、そもそもその手続の十分性自体が議論の対象になるので、「監査」制度である以上は、受入は難しいでしょうね。

結局、実務会が求めているのは、監査ではなく認証ということなんでしょうから、そうなると制度の建付けから変えなければなりませんね。

次の衆議院選挙で金融商品取引法の改正案を議員立法で出しますという公約をする政党があれば得票率アップ間違いないでしょうね。

Posted by: 閑人 | 2007.11.06 16:48

● アンケートを読む限り、企業側に「甘えの構造」が見てとれ、または「一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準」(実施基準等)の理解不足が垣間見るきがします。
企業側は、きちんと、方針を策定し、説明(責任)を会計士に果せばよいと考えます。
後者は、既にグランドルールが確定しているので、今更、あらこれと蒸し返すのは、不毛の議論。少なくとも実施しての見直しは必要。

特に下記の項目について、企業側は、再度基準を精読すべきである。
・ 監査人は監査証拠の直接入手(サンプル数増)を増加させようという傾向
(ダイレクトテステイングで、証明水準が「監査」だから、当然である。)
・ 評価範囲カバレッジの絶対値に拘り (合理的な拘り)
・ サンプルを抽出期間 (基本は、1年会計期間であることを再度認識すべし)
・ 全件ウォークスルーテスト (当然でしょう)

● 実施基準の不備は確かにある。
・スプレッドシート(EUC)の表現は、基準には言及がないが、趣旨からすれば当  然含む。
・3点セットのうちRCMは、大多数の企業は、今回財務報告に係る内部統制の制度化
 で登場したツールであり、新たに用意することになるでしょう。
・実施基準の3点セットはあまりにもお粗末。フローにリスク、統制が明示されていない。(聞くところによると、当局が、監査法人に雛形の提供を依頼したところ、拒否
したとか。了見が狭い。)
  ・ 第三者に分かりやすい資料を作成すること、監査時間は減少し、両者win-winの筈ですがね。

●一番の問題点は、「これまでの協議の経緯や結論が覆る」ことである。然し、こころある
  会計士は、この点をクライアントに事前にすべきである。


Posted by: yi | 2007.11.08 13:01

閑人さん、コメントありがとうございます。
 せめて、監査ではなくてレビューということにしてくれれば、財務諸表監査の一部として内部統制の評価をする際の評価結果をほぼそのまま利用できたのではないかなぁ・・・と思ったりしますね。。。

Posted by: 丸山満彦 | 2007.11.08 19:23

yiさん、厳しくももっともな?コメントありがとうございます。

 保証レベルが監査となり、ダイレクトレポーティングではないと言っても、内部統制報告書の内部統制の有効性の意見が入っている限り、このような結果になるのは見えていましたね。。。
 また、グレーゾーンが広いこと、経営者評価をする側が内部統制及びその評価についての知識が十分にないことから、適用にあたり混乱が生じることも、まぁ見えていましたよね。。。
 で、会計士側も米国でやりすぎといわれていたSOXによる監査の経験に基づいて評価しようとし、やはり、やりすぎとなるのだろうなぁ・・・と思っていました。

 証券市場の国際競争でどうなるか・・・なんてね。。。

Posted by: 丸山満彦 | 2007.11.08 19:33

丸山 様

夏井です。

11月17日(土曜日)9:30-18:00に学習院大学で法とコンピュータ学会が開催されます。テーマはIT社会における労働問題の課題」で,個人情報保護における従業者の問題,労働者のモニタリング,公益通報者保護法等と関連する問題を含め,多角的な研究発表とパネルディスカッションが行われる予定です。学会員でない方も参加可能で,一般の参加費は2000円,学生の参加費は1000円です(懇親会は別途5000円)。

この研究会では,内部統制と深く関連する事項についても研究報告及び討議が行われる予定になっておりますので,ご興味をお持ちの方には是非ともご参加いただきたいと思います。

なお,問い合わせ先は,第一法規出版内にある法とコンピュータ学会事務局(03-3796-5437)になっています。

Posted by: 夏井高人 | 2007.11.14 23:20

夏井先生、コメントありがとうございます。
この学会に入っていないので知りませんでした。。。
 情報セキュリティと労働問題については、経済産業省でも検討するようですので、是非効きたいところですね。。。(といいながら、予定がすでにありいけないんですよね。。。残念。。。)

Posted by: 丸山満彦 | 2007.11.15 15:03

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