« IPA 情報セキュリティに関する新たな脅威に対する意識調査(2006年度第2回)報告書を公開 | Main | 総務省 パブコメ 「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン第26条解説改訂案」 »

2007.07.13

現場感覚 ダイレクトレポーティングのほうが経営者の負担は少ないんじゃないの?

 こんにちは、丸山満彦です。最近、複数の監査法人の方とお話できる機会がありました。で、表題の件です。米国では内部統制監査について、
(1)内部統制報告書の適正性と
(2)内部統制の有効性
についての意見を述べるという方法から、企業の負担を軽減するために
(2)内部統制の有効性
についての意見を述べるだけにするという方法に変更しましたね。。。
一方、日本の場合は、経営者負担を少なくすると言う観点から
(1)内部統制報告書の適正性
について意見を述べることになったわけですが、
現場感覚としては、米国の方法のほうが経営者の負担が減るんじゃないのという意見が圧倒的ですね。というか、私が聞いた数名の人は全部そうでした。。。

 
実はこの点については、

このブログの
・2006.09.06 監査がダイレクトレポーティング方式でも言明方式でも経営者評価の手間は関係ない
に対するMulliganさんのコメントでも指摘されているんですけどね。。。
=====
「間接方式」の場合、会社側は、外部監査人(監査法人)を納得させるだけの質を伴う監査を自ら実施しなければならず、「ダイレクトレポーティング方式」だと、多少内部監査の質が悪くても、外部監査人が自らチェックするので、現場がしっかりしていれば大丈夫、と思います。
 結果、「ダイレクトレポーティング方式」の方が会社側も多少は楽ができると思われます。<まぁ、作業量から考えると微々たるものと思いますし、あまりに内部監査の質が低いと、それ自体が指摘の対象になると思われますが。
=====
たぶん、このコメントの感覚は大多数の現場感覚の意見でしょうね。。。

制度改訂をするときに現場感覚のない学者(なくて当然なんですけど)や行政機関の職員の方の参考になればと思います。。。

とある会合で、「最近まるちゃんのブログに内部統制ネタがない」と言われたので、本日は内部統制ネタでした。。。


過去の今日
・2006.07.13 (おやすみ)
・2005.07.13 金融庁 パブコメ 企業会計審議会内部統制部会の公開草案の公表
・       経済産業省 パブコメ 企業行動の開示・評価に関する研究会中間とりまとめ(案)

|

« IPA 情報セキュリティに関する新たな脅威に対する意識調査(2006年度第2回)報告書を公開 | Main | 総務省 パブコメ 「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン第26条解説改訂案」 »

Comments

コンピュータ屋です。
おはようございます。

おっしゃるように、米国では直接監査のみになると言う話、
現場対応はそちらの方が気が楽だと言うこと、
私の周辺でも同じですね。
監査よりレビューの方がもっと楽という話もあります。

監査人さんの対応がどうであろうとも、
経営者側の立場としては、しっかりした評価と整備を行うこと、
これを無視してはいけないでしょう。
「不正」という出来事、身近におきています。

Posted by: コンピュータ屋 | 2007.07.13 06:07

コンピュータ屋さん、コメントありがとうございます。
> 監査よりレビューの方がもっと楽という話もあります。
もちろんそうですね。
カナダのように経営者評価のみ、というほうがさらに楽ですね。。。

投資家の投資判断を誤らせるような不正の多くは、販売プロセスの細かいところで起こるのではなくて、株価を気にする経営者及びその近くで、財務報告をつくるプロセスの中で起こることのではないかと思います。。。

そのあたりですよね。。。3点セットをつくっていて一瞬むなしくなることがあるのは。。。

Posted by: 丸山満彦 | 2007.07.14 01:26

書店に、「簡易版 COSO内部統制ガイダンス」という本が並んでいました。
 昨年の初夏に正式版がリリースされた、COSOの
”Internal Control over Financial Reporting-Guidance for Smaller Public Companies"(注1)の翻訳書です。
 この訳本のあとがきで、監訳者の八田進二さんが「企業自身ないしは企業経営者が主体性を発揮して
内部統制対応を行なうべき」と述べられています。
このポリシーが日本の「内部統制報告書の適正性」という表現の深淵に流れているような気がしています。
対して、USの、「内部統制の有効性」のみへの変更は、コスト・パフォマンスの最適化ということを配慮しているに感じました。
「簡易版 COSO内部統制ガイダンス」の「要約編」がそうした変化を示唆しているようです。
 日米の違いで、会社の法律的な枠組みでは、日本は、「監査役」制度があり、米国には
「監査役」制度がありません。監査役監査⊃ダイレクトレポーティングという解釈があるよう
に思われます。

注1:このガイダンスは、
COSOの内部統制フレームワークを財務報告の範囲にスコープを充てて、
具体化するための20の原則を解説した導入用のガイダンスです。
その際に、Smallerな機関への摘要が配慮されています。

Posted by: Mishina | 2007.07.14 10:50

Mishinaさん、コメントありがとうございます。
=====
「企業自身ないしは企業経営者が主体性を発揮して内部統制対応を行なうべき」と述べられています。
=====
「内部」統制ですから、そもそも外部から言われてするものではないですよね。。。
監査役制度とダイレクトレポーティングは関係ないと思いますが、いかがでしょうかね。。。

Posted by: 丸山満彦 | 2007.07.16 13:37

ダイレクトレポーティングのほうが、経営者の負担が少ないというのは同感です。

日本の会社の場合、外部の第三者に評価してもらう資料の作成に慣れていないので、特に内部統制初年度から数年間は監査人が納得できるレベルまでもっていくのは、現場感覚としては大変だと思います。

全体像が分かっている人からすれば、日本の方式でも、ダイレクトレポーティング方式でも大差は無いでしょうが、現場の方たちからすれば、監査人が納得するだけの証拠力のある書類を作るか、監査人がヒアリングして納得してくれるかの違いは相当大きい気がします。

会計士であれば慣れていることですが、内部監査人とはいえ、第三者を納得させる資料作成は相当な事務負担ですね。

この点は日本の経営者の方に是非とも声を大にしていっていただきたいものですが。

Posted by: つっちー | 2007.07.16 23:11

つっちーさん、コメントありがとうございます。

> 監査人が納得するだけの証拠力のある書類を作るか、監査人がヒアリングして納得してくれるかの違いは相当大きい気がします。

そう思います。

PCAOB5号の適用後の米国と比較すると、
1.経営者評価のプロセスまでも監査人の評価範囲になり、
2.財務諸表以外の部分の内部統制も評価範囲となり、
3.持分法会社までも内部統制の評価範囲となる
わけですから、世界で一番厳しい内部統制の評価制度となっていしまいそうですね。。。

Posted by: 丸山満彦 | 2007.07.20 22:01

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 現場感覚 ダイレクトレポーティングのほうが経営者の負担は少ないんじゃないの?:

« IPA 情報セキュリティに関する新たな脅威に対する意識調査(2006年度第2回)報告書を公開 | Main | 総務省 パブコメ 「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン第26条解説改訂案」 »