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2007.06.30

航空・鉄道事故調査委員会 西日本旅客鉄道株式会社 福知山線 塚口駅~尼崎駅間 列車脱線事故報告書(最終)

 こんにちは、丸山満彦です。航空・鉄道事故調査委員会からJR西日本脱線事故に関する最終報告書が公表されていますね。。。

 もっと統制環境の問題に踏み込まないと・・・と思いました。表に出ている現象面に力点があたりすぎですね。。。もっともそういう調査をすることが目的なのでしょうが・・・

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4 原 因
 本事故は、本件運転士のブレーキ使用が遅れたため、本件列車が半径304mの右曲線に制限速度70km/h を大幅に超える約116km/h で進入し、1両目が左へ転倒するように脱線し、続いて2両目から5両目が脱線したことによるものと推定される。
 本件運転士のブレーキ使用が遅れたことについては、虚偽報告を求める車内電話を切られたと思い本件車掌と輸送指令員との交信に特段の注意を払っていたこと、日勤教育を受けさせられることを懸念するなどして言い訳等を考えていたこと等から、注意が運転からそれたことによるものと考えられる。
 本件運転士が虚偽報告を求める車内電話をかけたこと及び注意が運転からそれたことについては、インシデント等を発生させた運転士にペナルティであると受け取られることのある日勤教育又は懲戒処分等を行い、その報告を怠り又は虚偽報告を行った運転士にはより厳しい日勤教育又は懲戒処分等を行うという同社の運転士管理方法が関与した可能性が考えられる。
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 なぜ厳しい日勤教育が行われるような風土であったかとか・・・についても触れてほしいですよね。。。

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所 見
6.1 同社が講ずるべき措置
 同社は、次の措置を講ずるべきである。
(1) 運転技術に関する教育の改善
 運転技術に関する教育について、例えば、①インシデント等に関する情報を分析して得られた注意配分に関する知見をもとに教育を行う、②分かりやすくイメージしやすい資料や運転シミュレータなどを適切に使用して教育を行う、③制限速度超過の危険性を十分に認識させるなど、実践的な教育を充実強化するべきである。
 また、一部の運転士にぺナルティであると受け取られている日勤教育についても、このような実践的な運転技術に関する教育を充実させるなど、精神論的な教育に偏らず、再教育にふさわしい事故防止に効果的なものとするべきである。

(2) ブレーキ装置の改良
 運転士が回生ブレーキ作動の有無に注意を払わずに済むよう、ブレーキハンドルの位置が同じならば回生ブレーキ作動の有無にかかわらず、可能な限り差のない減速度が得られるようにするべきである。
 また、ATSによる本来必要のないブレーキ作動が発生しないよう、実際のブレーキ減速度が設定基準値に対して、安全上必要とされる以上に過大とならないようにするべきである。
 さらに、ブレーキハンドルが常用ブレーキ8ノッチ位置と非常位置との間にあるときのブレーキ無作動の対策を講ずるべきである。
 運転士が多形式の車両を運転する場合があることから、車両形式等の違いによるブレーキ性能等の差を可能な限り小さくして運転士の負担を軽減し、運転士の注意が前方の安全確認等に向けられるようにするべきである。

(3) 人命の安全を最優先とした運行管理
 列車脱線事故が発生した場合に事故現場付近を原則として速やかに停電させることなど、列車脱線事故発生時等における最も安全と考えられる対応方法を定めたマニュアルを整備するなどして、どのような状況においても人命の安全を最優先とした運行管理を行うよう改めるべきである。

(4) 標識の整備
 曲線標等の標識類について、確実かつ容易に認識されるよう、改善、充実するべきである。

6.2 事故発生時における車両の安全性向上方策の研究
事故発生時における被害軽減に関しては、平成14年2月22日に発生した九州旅客鉄道株式会社鹿児島線における列車衝突事故に鑑み、衝突時の車両の安全性向上に関する取組の強化について建議した(平成14年4月26日)ところであるが、本事故の発生に鑑み、客室内の空間が確保されるよう車体構造を改善することを含め、引き続き車両の安全性向上方策の研究を進めるべきである。
また、客室内設備についても、事故発生時における被害軽減の観点から、手すりの配置、形状の改善などを検討するべきである。
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 なんていうか、粒のばらばら感がきになりますよね。。。
 もう少し突っ込んだ検討が必要なような気がします。たしかに、標識の整備も重要なんですけど。。。

航空・鉄道事故調査委員会
西日本旅客鉄道株式会社 福知山線塚口駅~尼崎駅間 列車脱線事故

本文及び別添1,2 (1.1MB) 
 1 鉄道事故調査の経過
 2 認定した事実
 3 事実を認定した理由
 4 原因
 5 建議
 6 所見
 7 参考事項
 別添1 西日本旅客鉄道株式会社福知山線列車脱線事故に係る建議
 別添2 本報告書の用語及び略語
 
添付資料目次 目次1~4頁
付図1~7 付図A1~A9頁 (3.2MB)
付図8~13 付図A10~A29頁 (3.3MB)
付図14~18 付図A30~A40頁 (3.0MB)
付図19~36 付図A41~A93頁 (2.1MB)
付図37~70 付図A94~A145頁 (2.0MB)
付図71~77 付図A146~A154頁 (1.0MB)

【参考】このブログ
・2007.03.04 航空・鉄道事故調査委員会 西日本旅客鉄道株式会社 福知山線 塚口駅~尼崎駅間 列車脱線事故報告書(案)
・2005.04.30 事件は現場で起こっているんだ!でも原因は役員室にあります (2)
・2005.04.15 事件は現場で起こっているんだ!でも原因は役員室にありま



【過去の今日】
・2006.06.30 都道府県・市区町村、全1,890団体すべてが個人情報の保護に関する条例を制定
・2005.06.30 会社法が成立したようですね

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Comments

    表に出ている現象面に力点があたりすぎですね。。。
    もっともそういう調査をすることが目的なのでしょうが・・・

こんなところに書きました。

http://youzo.iza.ne.jp/blog/entry/209713/

    日本では「事故調査は行われていない」と
    言っても過言ではない。
    その中で、今回の事故調査報告は多少とも
    本来の事故調査に近づいたと思う。
    そこで遺族が「誰のための事故調査か」というのも
    無理はない、
    事故調査の歴史には直接の当事者の協力が得られなかった
    ことが山積みになっている。
    今回は、事故調査の現実が多少とも明らかになったのは
    よしとするべきだし、遺族のコメントが出てくるのも、
    日本が事故調査後進国であることの証明でもあろう。

丸山さんが、問題にしている面はわたしには「それ以前に事故調査をちゃんと位置づけろ」という感じで、質の問題を論じる以前なんです、という感じです。

実は、わたしの中学の同学年生が(なんと11クラスぐらいだった)日航123便(御巣鷹山墜落事故)の被害者団体の一つ(全員参加の団体は無いらしい)「8・12連絡会」事務局長の美谷島邦子さんでした。
これを知ったのは今から10年ぐらい前で、事故後10年以上経ってからです。

それ以来、彼女の仕事をちょっと手伝ったりして色々と話を聞いていますが、やはり大問題の一つが「事故調査が出来ていない」なんですね。

なんのための事故調査なのかが日本ではまだ確立していないことが問題です。

Posted by: 酔うぞ | 2007.06.30 08:52

酔うぞさん、コメントありがとうございます。酔うぞさんのコメントは、ごもっともです。こんなこと書いて、実はもやもやしながら寝たのですが、今朝起きてふとおもったことは、
・現象面の事故調査
・管理面(というか、現象面の裏にある本当に要因)の分析調査
というのをもう少し意識的に分けて考えたほうがよいのではないかということです。
 もっとも実務的には、両者の間に明確な線が引けるわけではないのですが。。。

107名の死
(その原因)
・・・
(その原因)
脱線
(その原因)
スピードオーバー
(その原因)
ブレーキ使用の遅れ
(その原因)
集中力が十分ではなかった
(その原因)
車掌と輸送指令員との交信に特段の注意を払っていた
(その原因)
オーバーラン等をしたことにより日勤教育を受けさせられるのではないかと言う不安

日勤教育を生んだ背景・・・
日勤教育をとめれなかった背景・・・

両者を分けて考えることにより、
・現象面の課題に対する対策
・管理面の課題に対する対策
それぞれ力点をおいて考えることができます。

これは、セキュリティ対策でも同じですよね。
・ウイルス感染を防ぐためにアンチウイルスソフトを導入するという対策と
・アンチウイルスソフトをいれなければリスクがあるということを理解してもらうための対策
というのは違うわけで・・・

因果関係のツリーと組織ツリーとをマッチさせ、だれがどのような対策をすべきかを検討するような整理術が考えられそうです。。。

Posted by: 丸山満彦 | 2007.06.30 09:16

中島です。

調査委員会の委員の名簿を見ると、工学系の方ばかりで組織管理とかそういう部分の専門家は一人該当するかどうか?。

そうすると技術系・操作系・設備関係の部分の分析は出来るのかもしれませんが、人間系・組織系の話については、実際の運転および運行に関わる部分までしか、議論は出来ないでしょう。

そういった意味でこの報告書はあくまで工学的な見地から書かれているものと看做すべきでしょう。

Posted by: なかじま | 2007.07.03 10:01

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