米国の費用対効果分析によると日本の方法は費用がかかる?
こんにちは、丸山満彦です。先日SECから公表された経営者評価のためのガイダンスでは、監査人が経営者評価に対する監査意見を表明することが、経営者が主体的に行うべきリスクアセスメント等について経営者の判断を萎縮させてしまい、過剰対応につながったと分析しているようですね。。。
日本では、内部統制報告書の適正性について監査意見を付すことになっていますが、内部統制報告書には経営者の評価についての内容も含みますので、監査人は経営者評価の適正性についての意見形成も必要となりますね。そこを気をつけなければいけないようですね。
まるちゃん的分析ではたぶんこんな感じかなぁ・・・
1.監査人は監督機関から厳しく監督されているため、保守的な行動に走りがちになる
2.監査人は一つのクライアントを失うよりも行政処分を受けることについてのリスクを非常に大きく考えている。
3.従って、監査人がクライアントに対して保守的な要求を行うという素地がある。
4.クライアントは監査で不適正意見を述べられたくない。
5.クライアントは監査人ほど内部統制の評価についての知識や評価実務経験がない。
6.従って、クライアントは監査人の意見を受け入れやすい素地がある。
7.3.6.よりクライアントは監査人の保守的な要求を受け入れ、過剰な対応をしてしまった。
8.特にそれは、
1)業務プロセスに係る内部統制の評価範囲の決定
2)そのための監査人との調整プロセス
の分野(内部統制の有効性には直接的に関係しない部分なんですよね。。。)
なので、監査人は経営者評価の適正性についての意見を表明せず(とはいうものの、経営者評価はモニタリングの一部として内部統制ですからまったく評価対象外というわけにはならないはずですが・・・)、内部統制の有効性についてのみ意見を表明するという構造をとることになったかなぁ・・・と思います。
日本は経営者評価の適正性に重きが置かれるようですから。。。
P55では次のように書かれていますね。。。
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Managers may choose to rely on the interpretive guidance, as an alternative to what is provided in existing auditing standards or elsewhere, for two key reasons. First, we are proposing a rule that would give managers who follow the interpretive guidance comfort that they have conducted a sufficient ICFR evaluation. Second, elimination of the auditor’s opinion on management’s assessment of ICFR in the auditor’s attestation report should significantly lessen, if not eliminate, the pressures that managers have felt to look to auditing standards for guidance in performing those evaluations.
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【参考】
■このブログ
・2006.12.25 SEC Management's Report on Internal Control Over Financial Reporting(公開草案)における2つの原則
・2006.12.21 SEC Management's Report on Internal Control Over Financial Reporting(公開草案)公表
・2006.12.21 PCAOB 監査基準書第2号(公開草案)の改訂ポイント
・2006.12.20 PCAOB 監査基準書第2号(公開草案)公表
・2006.12.14 SEC Votes to Propose Interpretive Guidance for Management to Improve Sarbanes-Oxley 404 Implementation
・2006.12.12 米国 PCAOB監査基準書第2号の改訂公開草案の公表は19日?
・2006.12.08 PCAOB 監査基準書第2号の改訂公開草案の公開は12月19日
・2006.12.02 米国 内部統制評価と監査制度 負担の緩和
・2006.10.18 PCAOB 監査基準書第2号の改訂は11月? これは、12月19日に公開されました。。。
・2006.10.05 内部統制監査 米国とは違う道を歩む日本?
・2006.09.23 2006.09.19 House Committee on Financial Services >Hearing entitled ”Sarbanes-Oxley at Four: Protecting Investors and Strengthening the Markets.”
・2006.09.06 監査がダイレクトレポーティング方式でも言明方式でも経営者評価の手間は関係ない
・2006.08.06 監査人が「内部統制は有効であると監査意見を述べる場合」と「内部統制は有効であるという報告書の内容が適正であるという監査意見を述べる場合」の監査対象(保証又は証明対象)の違い
・2006.06.12 PCAOB監査基準2号改正の方向性
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