監査がダイレクトレポーティング方式でも言明方式でも経営者評価の手間は関係ない
こんにちは、丸山満彦です。昨日のブログに書いたのですが、日経新聞の記事によると
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金融庁は、日本の内部統制ルールでは企業の負担は比較的軽いと見ている。米国は監査法人が直接企業に立ち入り調査するが、日本は報告書を点検する間接方式となっているためだ。
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と認識しているようですが、経営者評価の手間は監査の方式には依存しないと思います。わかっているのかなぁ・・・。
■このブログ
・2006.09.05 内部統制ルールは新興上場企業にも適用らしい
日本の場合は、経営者評価の仕方を内部統制部会の基準と実施基準で規定することになっていますね。なので、どの程度しっかりと評価をすれば、内部統制は有効であると経営者は結論付けることができるのかを実施基準で示せば、経営者評価の手間は大体決まります。
米国の場合は、経営者評価の基準がなかったので、経営者評価はPCAOB2号で監査をする監査人の行動に影響を受けました。
経営者評価の手間は、経営者評価の保証水準に依存することになります。経営者評価の保証水準が監査と同程度の水準が要求されるのであれば、米国と同程度の手間が必要となります。一方、レビューと同程度であれば米国よりも少ない手間ですみます。
監査の方法がダイレクトレポーティング方式か、言明方式かの違いでは経営者評価の手間は変わりません。ただし、日本の場合は、経営者評価をレビュー(限定的な保証水準)で実施し、監査人による評価を監査(合理的な保証水準)で実施することにすれば、経営者評価の手間は減ります。しかし、このロジックでは、
・内部統制の有効性の程度は限定的な保証水準
・内部統制の有効性の評価の程度は合理的な保証水準
ということになります。
内部統制はそこそこ有効ですという経営者の評価は、かなり正確です。という感じですね・・・。
Comments
またまたコメントさせてください。
あの記事、読みましたが、日本では間接評価方式であるから、負担は減るから大丈夫と言う認識は本当なのでしょうか?
お書きになっていらっしゃいますが、対応が迫られる企業側の準備とすると、その違いは実態的には、何も影響ないとしか思えません。
本当に、記事通りの認識だとすると、実施が近くなっていくにつれ、小規模上場企業の反発大きいような気がします。
Posted by: みちあき | 2006.09.09 12:33
みちあきさん、コメントありがとうございます。
経営者評価のコストを削減するためには、経営者評価のための基準を明確に策定し、不必要な作業をさせないことだと思います。グレーゾーンが広いと、監査人が保守的に作業をさせようとし、経営者評価のコストがあがると思います。
監査意見の表明方法によって、経営者評価の負担が変わることはないと思います。
Posted by: 丸山満彦 | 2006.09.09 20:50
亀レスすいませんが…。
「間接方式」の場合、会社側は、外部監査人(監査法人)を納得させるだけの質を伴う監査を自ら実施しなければならず、「ダイレクトレポーティング方式」だと、多少内部監査の質が悪くても、外部監査人が自らチェックするので、現場がしっかりしていれば大丈夫、と思います。
結果、「ダイレクトレポーティング方式」の方が会社側も多少は楽ができると思われます。<まぁ、作業量から考えると微々たるものと思いますし、あまりに内部監査の質が低いと、それ自体が指摘の対象になると思われますが。
Posted by: Mulligan | 2006.09.17 23:45
Mulliganさん、コメントありがとうございます。米国の場合は
1)内部統制報告書の適正性
2)内部統制の有効性
の2つについて意見を述べ、日本の場合は
1)内部統制報告書の適正性
にのみ意見をいう構造を考えているようなのですが、企業側の負荷の軽減と言う意味では、具体的な経営者評価の仕方が日米でどのように違うと実施基準に記述されるかによるのでしょうね。
内部統制報告書に内部統制は有効であると書かれている以上、それを証明するためには、監査人が内部統制は有効であるという心証を得るしかなく、そうなると結局、内部統制は有効であるという監査人が意見を言えるのと同じ心証を得る必要があるわけで、監査手続は同じになるんですね。
どうなるんでしょうね。
Posted by: 丸山満彦 | 2006.09.18 11:15