経営者評価を期末日現在にした理由
こんにちは、丸山満彦です。米国SOX法404条の経営者評価でも、日本の内部統制の経営者評価でも内部統制を評価する時間枠については、事業年度にわたる期間ではなく、期末日現在となります。財務報告の信頼性を確保すると言う観点から考えると、財務報告である財務諸表に損益計算書、キャッシュフロー計算書等が含まれるので、事業年度にわたる期間が本来あるべきかもしれませんが、制度では期末日現在となっていますね。
これについては、COSO内部統制報告書の外部報告篇で次のように説明されていることが参考になると思います。
・COSO:トレッドウェイ委員会組織委員会 内部統制の統合的枠組み(理論篇) 鳥羽至英、八田進二、高田敏文共訳 1996年 白桃書房
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■外部報告篇 外部の関係者に対する報告
●経営者報告書の時間枠
(前略)・・・経営者報告における内部統制についての報告を期間を基準とするか、あるいは時点を基準とするか、という経営者報告の時間枠の問題は、二つの点で重要である。それは、内部統制の評価プロセスという側面と、事業年度中に識別・是正された内部統制上の欠陥の開示という側面に影響を及ぼすからである。
(中略)・・・一事業年度における内部統制を対象とする報告書の場合には、内部統制システムの有効性を時間枠全体について評価することが必要となり、したがって、時点を対象とした報告書に比べて、遥かに広範囲な評価プロセスが必要とされるであろう。
内部統制上の欠陥の開示に関していえば、経営者報告書がある特定時点における内部統制について作成されている場合には、経営者は、多くの場合、当該特定時点までに検出された内部統制上の欠陥については、それを是正することのできる機会を持てるであろう。それゆえ、内部統制上の欠陥が是正されている場合には、経営者は、特定時点において有効な内部統制システムが存在していた、と報告することが可能であろう。一方、報告書の対照がある一定期間―たとえば一事業年度―である場合において、その期間の相当部分にわたって重大な欠陥が存在していた場合には、内部統制システムが当該期間中有効であった、と述べることはできないであろう。
内部統制についての報告は、期間を基準で行う場合であれ、決算日といったある特定時点を基準に行う場合であれ、投資家およびその他の報告書の利用者のニーズに応えるものでなければならない。しかしながら、より望ましい選択肢として、内部統制の時点報告が検討されることになるであろう。内部統制の時点報告は、内部統制上の欠陥の識別と是正をより積極的に促す環境を提供するものである。・・・(中略)・・・内部統制の時点報告は、期間中に識別され、すみゃかに是正された内部統制上の欠陥を開示することよりもむしろ、適時に問題解決を図ることに、経営者が主たる関心を注ぐことができるという意味で、建設的な視点を提供するものである。
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是正に中心をおいているということですね。
【参考】このブログ
・2006.07.09 財務諸表監査における内部統制の評価は会計年度における期間評価で、内部統制監査のための内部統制の評価は期末日における期日評価
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