内部統制の評価と監査の制度は軌道にのるのか?
こんにちは、丸山満彦です。財務報告に係る内部統制の評価と監査の制度は、「平成二十年四月一日以後に開始する事業年度から適用」されることになるのですが軌道にのるのかなぁ・・・。
米国でSOX法404条対応に会社が大変だったということの中には
1.財務報告に係る内部統制の経営者評価をするための準備
2.財務報告に係る内部統制の経営者評価の実施する
3.財務報告に係る内部統制の監査の対応
の3つがあります。
そして、リソースという切り口で言えば、「人」の話と「金」の話があります。
日本は米国の実務を考慮して内部統制監査を軽減することになるというのは明確になっています。監査人は財務報告に係る内部統制の有効性について意見を表明する必要がないと言っているからです。つまり、3は少なくなりそうです。では、1.2.はどうなんでしょうか?
米国と同様に、財務諸表に重要な記載誤りがないことを保証するために内部統制が有効に機能しているかどうかということを経営者評価で確認することにするのであれば、「重要性」については、米国と同じ考え方になります。そうなれば、文書化し、評価の対象とする範囲をどの程度にするかは、米国と同じになるはずです(理論的には・・・)。
つまり、「重要性」の考え方が米国と日本で同じであれば、文書化及び評価の範囲も米国と同様になるわけです。
このことは、経営者評価(1.2.の話)については、米国と同じ負荷が発生することを意味します。
ここで、1.2.の問題を「人」の話と「金」の話にわけて考えてみることが次に重要となります。極端な話をすると「金」の問題は、なんとかなるんです。問題は「人」の問題なんです。
経営者評価の内容は、ほとんど監査人が監査をするのと同じ作業を会社の人がするわけです。つまり、社長が「財務報告に係る内部統制が有効に機能していて、財務諸表には重要な記載誤りが生じない仕組みになっていることを保証します」と言わなければならないわけです。そのためには、監査人の内部統制監査と同じような作業を会社でしなければならないわけです。
そのような体制が今の上場企業全体にあるかというと、そんなことはないですよね・・・。
だから多くの企業は今、その対応に躍起になっているわけです。ところが、「監査人の内部統制監査と同じような作業」がわからないから、会社は「ハタ」と困ってしまうわけです。
つまり、この制度が「わかっている人がほとんどいない」わけです。つまり「人」の問題となるわけです。
極論すると、普段から財務諸表監査業務に携わっている人しかわからないのかもしれないわけですね。
ちなみに、米国の公認会計士の数は約33万人です。一方、日本の公認会計士及び会計士補の合計数は、約2万2千人です。
SOX法の対象となる会社は約4000社、日本の上場企業の数は、東証で約2300社、ジャスダックで約1000社です。
ということで、タイトルの話になります。
「内部統制の評価と監査の制度は軌道にのるのか?」
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