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2006.04.21

ダイレクトレポーティング方式と言明方式で監査コストが異なるのか

 こんにちは、丸山満彦です。内部統制の監査について、日本ではダイレクトレポーティング方式を採用せず言明方式を採用するので監査コストが下がると説明されていますが・・・

 
まず、PCAOB No.2のAppendixの中では、次のような記述があります。

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PCAOB No.2 APPENDIX E
BACKGROUND AND BASIS FOR CONCLUSIONS

Form of the Auditor's Opinion
E25. The proposed auditing standard required that the auditor's opinion in his or her report state whether management's assessment of the effectiveness of the company's internal control over financial reporting as of the specified date is fairly stated, in all material respects, based on the control criteria. However, the proposed standard also stated that nothing precluded the auditor from auditing management's assessment and opining directly on the effectiveness of internal control over financial reporting. This is because the scope of the work, as defined by the proposed standard, was the same, regardless of whether the auditor reports on management's assessment or directly on the effectiveness of internal control over financial reporting. The form of the opinion was essentially interchangeable between the two.
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 提案された監査基準は、内部統制の規準に照らして特定日現在における会社の財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者の評価がすべての重要な点において適切か否かについて、監査報告書において監査人が意見を述べることを要求した。しかしながら、提案された監査基準は、また、監査人が経営者の評価とともに財務報告に係る内部統制の有効性について直接意見を述べることを排除していない。提案された監査基準により定義されたとおり、監査の範囲が同じであれば、経営者評価についての監査報告書も財務報告に係る内部統制の有効性について直接評価をすることも同じであるからである。監査意見の様式は、本質的に両者の間で交換が可能である。
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 「ダイレクトレポーティング方式も言明方式も監査意見の対象が同じであれば、両者には違いがない」と、言っているように読めます。

 金融庁企業会計審議会内部統制部会より2005.12.08に公表された「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方について」においては反対に、ダイレクトレポーティング方式は、言明方式よりも監査コストが少なくなるような説明のしかたをしています。

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(4)公認会計士等による検証の水準とコスト負担の考慮
③ダイレクト・レポーティングの不採用
 監査人は、経営者が実施した内部統制の評価について監査を実施し、米国で採用されているダイレクト・レポーティング(直接報告業務)は採用しないこととした。この結果、監査人は、経営者の評価結果を監査するための監査手続きの実施と監査証拠等の入手を行うことになる。
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 実務の人は、ダイレクト・レポーティング方式も言明方式も監査対象が同じであれば両者に違いがないという意見の人が多いように思います。

 したがって、米国と日本で監査コストが違うのであれば、それは監査対象が異なるということになるのではないかと思います。つまり、

米国では、「内部統制の有効性」について監査意見を述べる。
日本では、「経営者の内部統制の有効性評価プロセス」について監査意見を述べる。

ということになり、したがって、日本の内部統制監査の負荷は米国の内部統制監査の負荷より少なくてよい。

 そうすると・・・

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Ⅲ.財務報告に係る内部統制の監査
4.監査人の報告
(3)内部統制監査報告書の記載事項
 監査人は、経営者の作成した内部統制報告書が、一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠し、財務報告に係る内部統制の評価について、すべての重要な点において適正に表示していると認められると判断したときは、その旨の意見を表明しなければならない。
(中略)

(4)意見に関する除外
 監査人は、内部統制報告書において、経営者が決定した評価範囲、評価手続き、及び評価結果に関して不適切なものがあり、無限定適正意見を表明することができない場合において、その影響が内部統制報告書を全体として虚偽の表示に当たるとするほどには重要ではないと判断したときは・・・
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 との関係を次に整理しないといけなくなりますね。

【参考】
■このブログ
・2006.04.19 米国が内部統制監査報告書においてダイレクトレポーティング方式を採用した理由
・2006.03.07 財務報告に係る内部統制の評価及び監査の制度導入は2009年3月末決算から?


このブログの中の意見は私見であり、所属・関係する組織の意見ではないことをご了承ください。

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Comments

追加です。
AS2の前文です。
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D. Attestation vs. Audit

Throughout Auditing Standard No. 2, the auditor's attestation of management's assessment of the effectiveness of internal control is referred to as the audit of internal
control over financial reporting. The Board has noted, in comment letters and in other communications, that some people have drawn a distinction between an "audit" and an "attestation," suggesting that an attestation is a different type of engagement that involves a lesser amount of work than an audit. This idea is erroneous. An attestation engagement to examine management's assessment of internal control requires the same level of work as an audit of internal control over financial reporting.

The objective of an audit of internal control over financial reporting is to form an opinion "as to whether management's assessment of the effectiveness of the registrant's internal control over financial reporting is fairly stated in all material respects." Further, Section 103(a)(2)(A)(iii) of the Act requires the auditor's report to present an evaluation of whether the internal control structure provides reasonable assurance that transactions are recorded as necessary, among other requirements.

Importantly, the auditor's conclusion will pertain directly to whether the auditor can agree with management that internal control is effective, not just to the adequacy of
management's process for determining whether internal control is effective. An auditing process restricted to evaluating what management has done would not provide the auditor with a sufficiently high level of assurance that management's conclusion is correct. The auditor needs to evaluate management's assessment process to be satisfied that management has an appropriate basis for its conclusion. The auditor, however, also needs to test the effectiveness of internal control to be satisfied that management's conclusion is correct and, therefore, fairly stated. Indeed, as the Board heard at the internal control roundtable and in comment letters, investors expect the independent auditor to test whether the company's internal control over financial reporting is effective, and Auditing Standard No. 2 requires the auditor to do so.


D. アテステーションと監査

監査基準第2号全体にわたり、内部統制の有効性に関する経営者の評価に対する監査人のアテステーションは、財務報告に関連する内部統制の監査とよばれている。PCAOBは、アテステーションが監査ほど多くの労力を必要としない別のタイプの業務であると提案し、「監査」と「アテステーション」を区別すべきというコメントやその他に留意した。この考えは誤っている。内部統制に関する経営者の評価をテストするアテステーション業務は、財務報告に関する内部統制の監査と同様の労力を必要とする。
 財務報告に関する内部統制の監査の目的は、すべての重要な点において、登録企業の財務報告に関する内部統制の有効性に対する経営者の評価が正しく表明されているか否かに関する」意見を形成することである。さらに、サーベンス・オクスリー法第103条(a)(2)(A)(iii)項は、要求事項の中でも特に、内部統制構造が必要に応じて取引が記録されているという合理的な保証を提供しているか否かについての監査人の報告を求めている。
 重要なこととして、監査人の結論は、内部統制が有効であるかどうかを判断する経営者のプロセスの適切さにとどまらず、監査人が経営者による内部統制が有効であるという点に同意するか否かに直接関係している。
 経営者が行ったことの評定に限定された監査プロセスでは、監査人は、経営者の結論が正しいという十分に高いレベルでの保証を得られない。監査人は、経営者が結論に至る適正な根拠をもっていることに満足できるように、経営者による評価プロセスを評定する必要があるが、監査人は、経営者の結論が正しく、それ故に適正に述べられていることに満足するためには、内部統制の有効性をテストする必要がある。まさに、PCAOBが内部統制に関する公聴会やコメントにおいて耳にしたとおり、財務報告に関する企業の内部統制が有効であるかどうかを独立監査人がテストすることを投資家は望んでいるため、監査基準第2号はその実施を監査人に義務づけている。
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Posted by: 丸山満彦 | 2006.04.27 at 07:03

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