東海道新幹線の新ATCにプログラムミス
こんにちは、丸山満彦です。情報セキュリティというより、ソフトウェアの品質の問題だと思うのですが、気になったので・・・。というのも、東海道新幹線の利用が多いからです。3.18のダイア改正から新しいATC(列車自動制御装置)のプログラムで列車がより滑らかに運行できるようになったらしいのですが、新しいプログラムにミスがあったようですね。
新聞によると、
状況は、車両などに異常がないのに、運転台がATCから「停止信号」を受信し、新幹線が緊急停止するトラブルが3月18日以降4月10日までに22件発生したようですね。
原因は、
(1)「両列車の速度差が大きい場合に発生している。両列車の位置情報は一定距離を走ると自動的に消去され、新たな両車の位置情報が車載コンピューターに入る。ところが先行列車が速いと、軌道回路から次々に新たな先行列車の情報が送られてきても、肝心の列車が遅くて一定距離を走っていないため、情報が過度に集積。処理能力を超えたコンピューターが異常事態と判断。列車の停止装置を作動させた。」(2006.04.12中日新聞)[12件]
(2)「軌道回路とトランスポンダから〇・一秒以内の差で位置情報が車載コンピューターに送られてきて処理不能となった。」(2006.04.12中日新聞)[3件]
(3)「車輪が空転したため、位置情報が狂った。」(2006.04.12中日新聞)[1件]
人の命のかかわる部分には絶対フェールセーフ機能が働いていてほしいわけですが、今回は働いているようですね。
システムはそれぞれの機能単一にバグがあってもだめですし、機能間の連携の中にバグがあってもだめなので、システムのコントロールは難しいのかもしれません。複雑なシステムというと、自然界の生態系があると思うのですが、生態系をコントロールできると思っている人はいないと思うのですが、ソフトウェアも肥大化すると生態系のようになってくるのかもしれませんね。そういう場合は、生態系のように自律的な制御システムとならざる得ないのかもしれませんね。
ただし、考えるべきことはたくさんあるような気がします。
【参考】
●2006.04.12
・日経新聞 東海道新幹線の新ATCにプログラムミス・JR東海
・読売新聞 東海道新幹線ATC新型にミス、非常停止など19件
・産経新聞 東海道新幹線 新ATCにプログラムミス
・東京新聞 ATCプログラムミス JR東海新幹線の緊急停車続発
・中日新聞 JR東海で新幹線突然停止22件 先月から新ATCに不具合
このブログの中の意見は私見であり、所属・関係する組織の意見ではないことをご了承ください。
Comments
詳細が分からないので何とも言えないですが、自動制御の範囲で言えば、コンピュータ化で徐々に危なくなっている、と言って大筋では間違えないです。
一般には技術が進歩すると安全になるといった理解をされていると思いますが、パソコンなんてものが普及するよりもずっと前から自動制御は現在と同じ事をほぼ実現しています。
パソコンなどの利用で変わったのは劇的なコストダウンでした。
2005年の湯沢のシンポジウムでの病院システムの紹介にあったことが新幹線で起きている、と考えて良いでしょう。
以前は出来ていたことがダメになるとは、やはりシステム屋の不勉強というか判断力不足の結果でしょう。
以前は話題になったノンストップコンピュータなんてのは最近は聞きませんが、技術的には生き残っているそうで、一部では重宝されているそうです。
結局「止まらないことが重要」といった話が理解されない時代になってきた、ということですね。
Posted by: 酔うぞ | 2006.04.12 10:57
酔うぞさん、コメントありがとうございます。命にかかわることについては、フェールセーフだけでも確保してほしいわけです。
Posted by: 丸山満彦 | 2006.04.13 13:14