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2006.04.10

八田先生の本 これだけは知っておきたい内部統制の考え方と実務

 こんにちは、丸山満彦です。八田先生が「これだけは知っておきたい内部統制の考え方と実務」を読みました。わかりやすく書かれていますね。
 財務報告に係る内部統制の評価と監査の制度については、弁護士の方のブログなどで、監査役監査との関係がわかりづらいというコメントなどもあるようですね。八田先生の本では、この点について触れている部分があるので紹介します。

 
P52
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資産の保全
 そうした意味では、四つ目の目的である<資産の保全>がもっとも密接に財務報告の信頼性とかかわってくるかもしれません。資産の取得や使用、処分が正当な手続きや承認のもとで適切におこなわれるように資産の保全をはかることは、直接、金額数値にかかわってくるため、財務報告とは密接不可分の関係です。
 くわしくは後で述べますが、<資産の保全>はCOSOでは明示されていない日本独自に追加された目的です。わが国独自の監査役制度に対応せる、つまり監査役の役割と内部統制とのかかわり方をより明確に示すために、この目的を追加しました。
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P68
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監査役の役割を明示化する-COSOの国内化
 国内化、すなわち日本に合うかたちでローカライズすると言った点においては、内部統制の目的をひとつ増やし、第四目的の<資産の保全>を加えました。
 わが国では従来より株式会社のなかの常設必置期間として監査役制度があります。委員会等設置会社の場合は監査委員会となりますが、商法の規定により監査役には業務調査権と財産調査権があります。このうち、財務調査権というのは、まさしく企業財産を保全することです。
 したがって、監査役の役割や内部統制とのかかわり方をより明確に示すために、目的を明示的に示しました。
 実は、<業務の有効性および効率性><事業活動にかかわる法令等の遵守><財務報告の信頼性>といった他の目的のなかにも<資産の保全>という要素は十分に入っています。また、COSOの報告書が公表されたときには、実際にそうした説明がなされていました。しかし、われわれはそれを明示的に抜き出すことで、再認識してもらおうと考えたのです。
(中略)
 <資産の保全>を付加したことによって、COSOが示した内部統制の目的を変えてしまったわけではありません。より明示的に示すとともに、説明内容を付加したのです。国内化をはかりつつも、ひとつ目的を増やしたことで、わたしたちはCOSOを超えたのではないかという自負を持っています。
(後略)
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P120
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監査役は内部統制の番人
(前略)
 監査役の役割は、商法第274条の規定で「取締役の職務の執行を監査する」とあります。これは、経営トップの職務の執行、すなわち、すべての業務内容について独立的な立場で株主の代表という観点からこれを吟味しなさいということです。こうした職務を果たすためにも、監査役は、経営管理が機能しているかどうかを見る必要があります。このことは、経営者の意向にのっとった健全な内部統制が張りめぐらされ、機能しているかどうかを吟味しなさいということと同じだと思います。
 ですから、企業内にあっては監査役こそが、内部統制議論の推進役でなければなりません。内部統制の番人だともいえるでしょう。「何でおれが監査役から評価されなければいけないんだ」という経営者がいるかもしれませんが、そういう時代ではないのです。
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 以後、米国の監査委員会制度との比較などを踏まえ、監査役への期待がつづきます。八田先生が考える、監査役と内部統制の考え方をよく理解することができます。

また、P123では、監査役の機能を充実するために、社内での支援体制、具体的には資源(ヒト、カネ)の確保について示唆的な発言をしています。

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(前略)
 しかし、ヒトとなると、現実には厳しい状況があるのではないでしょうか。内部統制の基本的要素のモニタリングをおこなうには、人的資源の拡充が避けられないでしょう。
 現実的にいちばん可能性が高いのは、内部監査部門をここに当てることだと思います。内部監査部門、あるいはそうした役割を担ってきた人たちを監査役のもとに集約させることで、より効率的にモニタリング機能を発揮できるようになると思います。
(後略)
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 八田先生の意見に対する論点としては、次のようなものが考えられますね。

・監査役の役割と内部統制とのかかわり方をより明確に示すために、資産の保全目的を明示的に示した。
(1)資産の保全は、結局、他の内部統制の目的の一部と考えてもよいのか。
(2)委員会設置会社の場合は、監査役はいないので、上記論点について、「監査委員会の役割と内部統制とのかかわり方をより明確にしめすために、資産の保全目的を明示的に示した。」と読み替えることが単純にできるのか。

・資産の保全を内部統制の目的として増やしたことで、COSOを超えたのではないかという自負をもっている。
(3)COSOを超えたという意味は、どのようなことを言っているのか。

・監査役の職務として「取締役の職務の執行を監査する」ということを説明し、続けて、それは、経営管理が機能しているかどうかを見る必要があり、このことは、経営者の意向にのっとった健全な内部統制が張りめぐらされ、機能しているかどうかを吟味しなさいということと同じだと説明している。
(4)この表現であれば、「経営者の意向」がすでに健全であることが前提として、その意向にそった内部統制が張りめぐらせれて機能しているかどうかを吟味することになっているように読めるが、経営者の意向そのものが健全であることも監査役の重要な職務であり、中心的な職務ではないのか。

・内部監査部門を監査役のもとに集約させることでより効率的にモニタリング機能を発揮できるようになる
(5)内部監査を監査役の職務の一部と位置づけ、内部監査を監査役の職務を補助するもの位置づける場合と、CEOの直下におく場合で効率性に差が出るとすれば、どこにでるのか。




このブログの中の意見は私見であり、所属・関係する組織の意見ではないことをご了承ください。

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