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2006.03.08

Significant DeficiencyのSignificantは「重大」というより「注目すべき」という意味ではないか

 こんにちは、丸山満彦です。昨晩は、中央大学商学部の児嶋教授夫妻と食事をしました。先生は、発想が豊かで、いつも楽しいひと時を過ごせます。昨日は、Significant Deficiencyについて面白い議論があったのでご紹介します。

 
 昨日もいつもの通り、内部統制監査の監査意見形成論、国際会計基準への統合の話、国際監査基準と日本の監査基準、日本公認会計士協会と監督官庁のあるべき関係などなど・・・まったくとりとめも無い話ばかりでしたが、いつも話は面白いんです。
 昨日の話の中で面白かったのは、内部統制監査の時に出てくるSignificant Deficiency の訳を今まで「重大な不備」としていたけど本当は「注目すべき不備」なのではないか、という話です。
 米国の基準では、監査人は、内部統制の不備(コントロールの設計又は運用が適時に会計上の記載誤りを防止又は発見できないような状態)を発見した場合、それがSignificant Deficiencyとなるかどうかを判定することになります。もし、Significant DeficiencyでないただのDeficiencyであれば、それは監査上無視してもよいことになります。
 しかし、DeficiencyがSignificant Deficiencyであれば、それがMaterial Weakness(重要な欠陥)に該当するかどうかを検討することになります。昨日盛り上がった点は次のような話です。
米国の基準の論理的な流れは、
(1) 不備が発見された場合、それが重要な欠陥につながる不備かつながらない不備かに区分する。
(2) 重要な欠陥にはつながらないような不備は、その後検討しない。
(3) 重要な欠陥につながる恐れのある不備について他の不備と区別するためにSignificant Deficiencyという名前をつける。
(4) 監査人はこのSignificant Deficiencyが単独または組み合わせによってMaterial Weaknessになるかどうかについて検討する。
たしかにSignificant Deficiencyは「重大な不備」と訳してもおかしくはないのですが、論理的思考からするとそれは、「重大な」というよりも、「注目すべき」と訳したほうがよいのではないかという話になりました。そうすると、Material WeaknessにはMaterialという用語を、Significant DeficiencyにはSignificantという用語を使っている理由もすっきり説明できそうな気がします。

 翻って日本の内部統制部会案を考えると、内部統制部会案では、不備を「重要な欠陥」と「不備」の2つにしか分類していない(3つに分類することにより評価手続が複雑になっているという理由)のですが、それは逆に実務家にとっては使いづらくなります。だって、およそすべての不備(単なる不備も含む)について、いちいち重要な欠陥につながるかどうかを判定しなければならなくなってしまうからです。大変な手間が生じてしまいますよ。メリハリの利いた(つまり、リスクに応じた)監査ができなくなり、監査報酬もあがりそうです。


■参考1
 PCAOB No.2 An Audit of Internal Control Over Financial Reporting Performed in Conjunction With an Audit of Financial Statements
=====
Definitions Related to Internal Control Over Financial Reporting

7. For purposes of management's assessment and the audit of internal control over financial reporting in this standard, internal control over financial reporting is defined as follows:
A process designed by, or under the supervision of, the company's principal executive and principal financial officers, or persons performing similar functions, and effected by the company's board of directors, management, and other personnel, to provide reasonable assurance regarding the reliability of financial reporting and the preparation of financial statements for external purposes in accordance with generally accepted accounting principles and includes those policies and procedures that:
(1) Pertain to the maintenance of records that, in reasonable detail, accurately and fairly reflect the transactions and dispositions of the assets of the company;
(2) Provide reasonable assurance that transactions are recorded as necessary to permit preparation of financial statements in accordance with generally accepted accounting principles, and that receipts and expenditures of the company are being made only in accordance with authorizations of management and directors of the company; and
(3) Provide reasonable assurance regarding prevention or timely detection of unauthorized acquisition, use or disposition of the company's assets that could have a material effect on the financial statements.
Note: This definition is the same one used by the SEC in its rules requiring management to report on internal control over financial reporting, except the word "registrant" has been changed to "company" to conform to the wording in this standard. (See Securities Exchange Act Rules 13a-15(f) and 15d-15(f).2/)

Note: Throughout this standard, internal control over financial reporting (singular) refers to the process described in this paragraph. Individual controls or subsets of controls are referred to as controls or controls over financial reporting.

8. A control deficiency exists when the design or operation of a control does not allow management or employees, in the normal course of performing their assigned functions, to prevent or detect misstatements on a timely basis.
• A deficiency in design exists when (a) a control necessary to meet the control objective is missing or (b) an existing control is not properly designed so that, even if the control operates as designed, the control objective is not always met.
• A deficiency in operation exists when a properly designed control does not operate as designed, or when the person performing the control does not possess the necessary authority or qualifications to perform the control effectively.

9. A significant deficiency is a control deficiency, or combination of control deficiencies, that adversely affects the company's ability to initiate, authorize, record, process, or report external financial data reliably in accordance with generally accepted accounting principles such that there is more than a remote likelihood that a misstatement of the company's annual or interim financial statements that is more than inconsequential will not be prevented or detected.
Note: The term "remote likelihood" as used in the definitions of significant deficiency and material weakness (paragraph 10) has the same meaning as the term "remote" as used in Financial Accounting Standards Board Statement No. 5, Accounting for Contingencies ("FAS No. 5"). Paragraph 3 of FAS No. 5 states:
When a loss contingency exists, the likelihood that the future event or events will confirm the loss or impairment of an asset or the incurrence of a liability can range from probable to remote. This Statement uses the terms probable, reasonably possible, and remote to identify three areas within that range, as follows:
a. Probable. The future event or events are likely to occur.
b. Reasonably possible. The chance of the future event or events occurring is more than remote but less than likely.
c. Remote. The chance of the future events or events occurring is slight.
Therefore, the likelihood of an event is "more than remote" when it is either reasonably possible or probable.

Note: A misstatement is inconsequential if a reasonable person would conclude, after considering the possibility of further undetected misstatements, that the misstatement, either individually or when aggregated with other misstatements, would clearly be immaterial to the financial statements. If a reasonable person could not reach such a conclusion regarding a particular misstatement, that misstatement is more than inconsequential.

10. A material weakness is a significant deficiency, or combination of significant deficiencies, that results in more than a remote likelihood that a material misstatement of the annual or interim financial statements will not be prevented or detected.
Note: In evaluating whether a control deficiency exists and whether control deficiencies, either individually or in combination with other control deficiencies, are significant deficiencies or material weaknesses, the auditor should consider the definitions in paragraphs 8, 9 and 10, and the directions in paragraphs 130 through 137. As explained in paragraph 23, the evaluation of the materiality of the control deficiency should include both quantitative and qualitative considerations. Qualitative factors that might be important in this evaluation include the nature of the financial statement accounts and assertions involved and the reasonably possible future consequences of the deficiency.
Furthermore, in determining whether a control deficiency or combination of deficiencies is a significant deficiency or a material weakness, the auditor should evaluate the effect of compensating controls and whether such compensating controls are effective.

=====
<仮訳>
7.本基準では、経営者による評価及び財務報告に係る内部統制の監査の目的に照らし、財務報告に係る内部統制は、次のように定義される。

財務報告の信頼性及び一般に認められた会計原則に準拠した外部目的の財務諸表の作成に関する合理的な保証を提供するため、企業の主要な経営陣や財務責任又はこれらと同等の職務を遂行する者によって又は彼らの監督のもとで設計され、取締役会、経営者及びその他の担当者によって遂行されるプロセスであり、次のような方針と手続を含んでいる。

(1) 企業の取引や資産の処分について、合理的な詳細さで正確かつ適切に反映する記録を維持することに関係する方針と手続
(2) 一般に認められた会計原則に準拠した財務諸表を作成できるように取引が必要に応じて記録され、入出金が経営者や取締役のみによって承認されているという合理的な保証を提供する方針や手続
(3) 財務諸表に重大な影響を及ぼし得る企業の資産の未承認の取得、使用や処分が防止又は適時に発見されるという合理的な保証を提供する方針や手続

注:この定義は、SECが財務報告に係る内部統制を報告するよう経営者に要求している規則において用いている定義と同じである。ただし、この基準の用語に合わせ、「登録企業」は「企業」に変更されている。(証券取引法規則13a-15(f)および15d-15(f)参照 )

注:本基準を通じて、財務報告に係る内部統制(単数)は、この項に記述されているプロセスに関連して言及されている。内部統制又はコントロールの部分集合は、コントロール又は財務報告に関するコントロールとして言及されている。


8.経営者・管理者や従業員が、割当てられた職務を実行する通常の過程で、適時に記載誤りを防止又は発見できないようなコントロールの設計又は運用の場合には、コントロールの不備が存在している。

• 設計の不備:(a)コントロール目標の達成に必要なコントロールが欠けている場合、又は(b)既存のコントロールが適切に設計されていないため、コントロールが設計どおり運用されていたとしても、コントロール目標が必ずしも達成されない場合
• 運用の不備:適切に設計されたコントロールが設計どおり運用されていない場合、又はコントロールの実行者が、コントロールを有効に実行するために必要な権限又は資格を有さない場合

9.注目すべき不備は、それ自体又は他のコントロールの不備との組み合わせで、コントロールが財務諸表又は期中財務諸表(訳注:四半期財務諸表)の軽微よりも大きな記載誤りを防止又は発見しない可能性がほとんどないとはいえないほどに、一般に認められた会計原則に準拠して信頼できるように外部向け財務データを発生、承認、記録、処理又は報告する企業の能力に悪影響を及ぼす、コントロールの不備である。

注:注目すべき不備と重要な欠陥(第10項)の定義に用いられた「可能性がほとんどない」という用語は、財務会計基準審議会基準書第5号「偶発事象の会計」(FAS No.5)で用いられた「ほとんどない」と同じ意味である。FAS No.5第3項は次のように述べている。

偶発的損失が存在する場合、一つ又は複数の将来事象が資産の損失や減損又は負債の発生を確実にする可能性は、「可能性が高い」から「ほとんどない」までの範囲がある。この基準書では、この範囲に三つの区分を識別するために「可能性が高い」「合理的に可能性がある)」「ほとんどない」を用いる。

a. 可能性が高い 一つ又は複数の将来事象の発生が見込まれる。
b. 合理的に可能性がある 一つ又は複数の将来事象が発生する可能性はほとんどないわけではないが、可能性が高いほどではない。
c. ほとんどない 一つ又は複数の将来事象が発生する機会はわずかである。

従って、事象の発生可能性は、合理的に可能性がある又は可能性が高いのいずれかの場合には、「可能性がほとんどないとはいえない」に該当する。

注:合理的な人が発見した記載誤り以外に発見していない記載誤りが存在する可能性を検討した後に、発見した記載誤りが、個別に又は他の記載誤りとあわせても、財務諸表にとって明らかに重要でないと結論づけた場合、その記載誤りは軽微な記載誤りに該当する。合理的な人が記載誤りに関してそのような結論に達することができなかった場合、その記載誤りは軽微よりも大きな記載誤りに該当する。


10.重要な欠陥は、財務諸表又は期中財務諸表の重要な記載誤りが防止又は発見されない可能性がほとんどないとはいえないことになる単独の注目すべき不備又は複数の注目すべき不備の組合せである。

注:監査人は、コントロールの不備が存在するか否か、又は複数のコントロールの不備が、それ自体か又は他のコントロールの不備とあわせて、注目すべき不備または重要な欠陥となるかどうかを評定するに当たり、第8項、第9項、第10項の定義、ならびに第130項~第137項の指示を考慮しなければならない。第23項で説明するように、コントロールの不備の重要性の評定には量的及び質的事項の両方が含まれる。この評定において大事になるかもしれない量的要素には、財務諸表の科目と関連するアサーションの内容や不備の合理的に可能性のある将来の結果などが含まれる。さらに、監査人は、コントロールの不備がそれ自体か又は複数の組合せによって、注目すべき不備かそれとも重要な欠陥かを評定するに当たり、(あるコントロールの不備に対する)補強コントロールの効果と、そのような補強コントロールが有効であるか否かを評定しなければならない。

=====
■参考2
・2006.12.08 内部統制部会案

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②内部統制の不備の区分
 本基準では、内部統制の不備を、財務報告に与える影響に応じ「重要な欠陥」と「不備」との2つに区分することとした。米国では不備を「重要な欠陥」「重大な不備」「軽微な不備」の3つに区分していることから、財務報告への影響等についての評価手続きがより複雑なものになっているとの指摘がある。

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Comments

重要な不備と重要な欠陥のどちらがMWなのか迷っていたのですが、SDが注目すべき不備に名称が変わるだけで、どちらの方が重要性が高いのかわかりやすくなると思います。

今からでも遅くないので、日本語の名称を変えて欲しいです。

Posted by: koneko04 | 2006.03.08 12:07

koneko04さん、コメントありがとうございます。
英語の語感でどうしょうか?Significantを「注目すべき」って訳して違和感ありますか?

そういえば、統計の分野では、significant differenceを有意差と訳すわけですけど
、この場合は、significantは、「意味のある」という意味になるんですね。

そうすると、significant deficiencyは「(検討する)意味のある不備」というほうがよいのかもしれませんが、どうでしょうか?

 

Posted by: 丸山満彦 | 2006.03.08 13:33

Material Weakness

Significant Deficiency

こうして二つの単語を並べてみて思ったのですが、一つの言葉で言い表すのは難しいなと思います。

SDはRemedial planを検討する必要があるレベルの不備ということになるので、それを簡潔に言い表すことが出来たら、DeficiencyとSignificant Deficiencyとの違いを明確化できるので、日本版SOX法の内部統制の不備を評価する際にも使えるかなもしれませんね。

Posted by: koneko04 | 2006.03.08 14:48

koneko04さん、コメントありがとうございます。

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SDはRemedial planを検討する必要があるレベルの不備
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なんですけど、SDだからRemedial Planを検討しなければならないように思うんです。

material というのは、財務諸表の重要な記載ミスの時に使いますよね。significantとは違う次元の概念だと思っているのですが、どうでしょうか?

Posted by: 丸山満彦 | 2006.03.08 16:42

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