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2006.02.13

監査人以外の他の人の作業の利用 PCAOB 監査基準書第2号

 こんにちは、丸山満彦です。PCAOB監査基準書第2号の監査人以外の他の人の作業の利用について、自分のためにまとめておきます。原文を確認すること。

PCAOB第2号

【概要】 
●基本的な考え方[108]
 監査人は、自らの作業が監査意見のための主要な証拠をもたらすように、自ら十分なテストを実施しなければならない。
 ただし、監査人は、自らのが実施する作業、その実施時期又は範囲に代えて、他の人の作業を利用することができる。
 
●他の人の作業を利用するに当たってすべきこと[109]
 監査人は、他の人が行った作業を利用できるか否かを評定しなければならない。
 監査人は、他の人の作業を利用する範囲を決定するためにすべき事項
 a. 他の人の作業の対象となる「コントロールの評定」([112]~[116])
 b. 作業実施者の「能力」 及び「客観性の評定」([117]~[122])
 c. 他の人が行った「作業の質」と有効性の評定のための当該「作業のテスト」([123]~[125])

●他の人の作業から入手した監査証拠についての留意点[110,111]
 監査人は、自己意見を裏付ける十分な証拠を入手しなければならない。
 監査意見に影響を及ぼす要因(入手した証拠の十分性、識別したコントロールの不備の重要性など)の判断は、監査人が行わなければならない。
 監査人が直接入手した情報(知識、観察、再実施及び文書の査閲)は、一般に他の人から間接的に入手した情報よりも説得的である。
 監査意見のための主要な証拠は監査人自らの作業により入手しなければならない。

【他の人の作業の対象となるコントロールの評定】
●評定の要素[112]
 下記の要素の重要性が高まるほど監査人自身が作業を行う必要性が大きくなる。
 ・コントロールが対応している科目及び開示の重要性並びに重要な記載誤りのリスク
 ・有効性の評定に必要な判断の程度(どの程度監査人の主観的な判断が必要か)
 ・コントロールの影響する範囲
 ・科目若しくは開示において必要とされる判断又は見積もりの程度
 ・経営者がコントロールを無視する可能性

●統制環境についての留意点[113~115]
 監査人は、統制環境の評価について、自らの作業を減少させる目的で他の人の作業を利用してはならない。
 ただし、自らの作業を増加させる必要の兆候がある場合は、統制環境の分野において行った他の人の作業結果を検討しなければならない。

●ウォークスルーの実施[116]
 監査人は、他の人の作業の対象となるコントロールの評定を行うためにウォークスルーを自ら実施しなければならない。

【作業実施者の能力及び客観性の評定】
●原則[117]
 他の人の作業を利用する範囲は、作業を行う人の能力と客観性の程度に依存する。
 ・能力と客観性が高いほど、他の人の行った作業を利用する範囲は大きくなる。
 ・能力の如何に拘わらず、客観性の低い人の行った作業を利用してはならない。
 ・客観性の如何に拘わらず、能力の低い人の行った作業を利用してはならない。

●証拠の入手と評定[116]
 監査人は、作業を行う人の能力と客観性に関する要素に関する情報を入手(更新)しなければならない。
 監査人は、これらの要素との存在及び質を評定して、テストするかどうかを判断しなければならない。
 テストすると判断した場合、テストする範囲を判断しなければならない。

●他の人の能力に関連する要素[119]
 ・教育レベルと職業専門家としての経験
 ・職業専門家の資格と継続教育
 ・作業領域での実務経験
 ・業務実施に関する監督とレビュー
 ・文書(報告及び勧告を含む)の質
 ・業務実施に関する評価

●他の人の客観性に関連する要素[120]
 ・テスト権限者(他の人の作業について責任を負う人)の組織上の地位(以下、例示)
  a. テスト権限者が十分なテスト範囲を確保し、発見事項及び勧告についての適切な検討及び措置を確保するための十分な地位にある執行役員に対して報告するか。
  b. テスト権限者が、取締役会又は監査委員会に直接アクセスでき、定期的に報告を行っているか。
  c. 取締役会又は監査委員会が、テスト権限者の雇用に関する決定を監督しているか。
 ・テスト対象領域に関する客観性を維持するための方針(以下、例示)
 a. 親族が重要な職務又は内部統制に影響を受ける職務に雇用されている領域におけるコントロールをテストすることを禁止する方針
 b. 最近また配属していた領域又はコントロールをテストする職務の終了後に配属される領域におけるコントロールをテストすることを禁止する方針

●内部監査組織の利用に関する留意点[121]
 一般に内部監査人は、高い能力と客観性を有している。
 ただし、以下の場合は、監査人が自らテストする範囲を拡大しなければならない。
 ・内部監査人が経営者にのみ報告を行っており、それによって内部監査人の客観性が減少している場合
 ・内部監査機能に限られた資源しか与えられていないために検証手続きが非常に制限されている場合等

【他の人が行った作業の質と有効性の評定のための当該作業のテスト】
●概要[123]
 監査人は、他の人が行った作業の質と有効性を評価するため、作業の一部をテストしなければならない。
 テストの方法
 (a) 他の人がテストしたコントロールの一部をテストする。
 (b) 他の人がテストしていない類似のコントロールをテストする。

●留意点[124]
 テストの内容と範囲は、監査人が検討対象である作業の全体的な質と有効性を評定できるほどに十分でなければならない。
 監査人は、この評定が作業実施者の能力と客観性に関する監査人の結論に影響を及ぼすか否かも評価しなければならない。

●他の人の作業と質を評価する際のポイント[125]
 ・作業範囲が目的に適合し適切であるか
 ・作業プログラムが妥当か
 ・実施した作業が、監督とレビューに係る証拠を含めて、十分に文書化されているか
 ・結論が個々の状況のもとで適切か
 ・報告書が、実施した作業結果と一致しているか

【例示】 [126]
●財務報告プロセスに関連するコントロール
 ・このコントロールは、財務諸表の科目及び開示の記載誤りに関する重大なリスクに対処している
 ・コントロールの運用の有効性にかかわる評価にはかなりの判断力が必要となる
 ・経営者によるコントロールの無視の可能性が高いかもしれない
 =>部分的に内部監査人の作業を利用することがあるが、その他の企業内部者の作業を利用できない。

●IT全般統制
 ・(IT全般統制は統制活動の一部であるため)コントロールの内容によっては、監査人が他の人の作業を利用できる場合がある。
 (例)定期的な保守変更に関するプログラム変更に関するコントロール
 ・・きわめて広範囲に影響を及ぼすが、
 ・・判断のレベルが低く、客観的なテストが実施でき、
 ・・経営者によって無視される恐れが少ない
 =>テスト実行者の能力と客観性が適切なレベルを超えない範囲で、他の人の作業を利用できる。

●コントロールに関する経営者による自己評価
 ・自己評価は、コントロールの実行責任者と同一人物によってなされ、自己評価の実行者はテスト対象に関係しているため、十分な客観性を有していない。
 =>自己評価を利用することはできない。

●固定資産の減価償却費計算に関連するコントロール
 ・広範囲に影響を及ぼさない
 ・有効性を評価するために高度な判断を必要とせず、客観的な判断ができる。
 =>経営者による無視の可能性が低い場合は、テスト実行者の能力と客観性が適切なレベルを超えない範囲で、他の人の作業を利用できる。

●他の人の内部統制テストの交互実施

=====
 日本の場合、実施基準にどこまで書き込まれるか・・・。
 

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Comments

去年の11月だったと思いますが、AS No.2の採用についてのガイダンスがPCAOBから出ていたと思います。うろ覚えで申し訳ないのですが、外部監査はもっとクライアントによるテストにも目を向けるようにというようなことが書いてあったような気がします。

それから米国のDeloitteが定期的に行っているウェブ上のセミナーでも、self testingについて去年の末頃に触れていたと思います。

米国デロイトの無料のセミナーはアーカイブに入っているので家で夜に聞くようにしていますが、かなり参考にしています。

お時間がおありの際に上で取り上げましたガイダンスと資料についてのコメントもお願いします。

Posted by: koneko04 | 2006.02.13 08:56

デロイトのオンラインのセミナーのリンクですが、

http://www.deloitte.com/dtt/section_node/0,1042,sid%253D58770,00.html#SO

です。12月8日のセミナーでセルフテストについて取り上げています。

Posted by: koneko04 | 2006.02.13 09:01

koneko04さん、コメントありがとうございます。
=====
AS No.2の採用についてのガイダンスがPCAOBから・・・
=====
については、
【このブログ】
・2006.02.09 外部監査人は内部監査人の結果を利用できる PCAOB 監査基準書第2号第121項にも記載している。

●PCAOB
Report on the Initial Implementation of Auditing Standard No.2, An Audit of Internal Control over Financial Reporting Performed in Conjunction with an Audit of Financial (PCAOB Release No. 2005-023)
のUsing the Work of Othersに書いています。

Posted by: 丸山満彦 | 2006.02.13 10:38

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