« 会社法施行規則 業務の適正を確保するための体制 | Main | 外部監査人は自己評価の結果を利用できない PCAOB 監査基準書第2号第126項 »

2006.02.09

外部監査人は内部監査人の結果を利用できる PCAOB 監査基準書第2号第121項

 こんにちは、丸山満彦です。財務報告に係る内部統制の経営者評価及び外部監査人による監査の制度が日本でも導入されそうな勢いです。米国では導入コストもさることながら、監査コストの上昇も問題となりました。新しい制度を導入するわけですから、コスト増加は避けれませんが、効率的にやればコストの上昇は抑えられますね。本日は内部監査を整備すれば監査コストを抑えられるという話です。

 
PCAOB No.2
 「Using the Work of Others(監査人以外の他の人の作業の利用)」については、PCAOB AS2の第108項から書かれています。(以下、項目番号を[第XXX項]と書きます。)

 外部監査人の意見形成については

1)自らの作業が監査意見のための主要な証拠をもたらすように、自ら十分なテストを実施する。

ことが基本ですが、

2)自己が実施する作業に代えて自己以外の他の人の作業を利用することができる。

わけです[第108項]。(ただし、統制環境に係る内部統制には、自らの作業を減少させる目的で他の人の作業を利用してはならない[第113項、第114項]。)

ただし、他の人の作業を利用する場合には、

1)他の人の能力
2)客観性

を評定する必要があります[第118項]。能力や客観性がない場合は、他の人の作業の結果を利用することができませんから、自ら実施する必要があります。

 内部監査人は、一般に、財務報告に係る内部統制に関して高い能力と他の担当者よりも客観性を有しています。なので監査人は、他の担当者による作業よりも広い範囲で内部監査人による作業を利用することができる[第121項]ことになります。
 一方、内部監査人が経営者のみに報告を行って(監査役や監査委員に報告せずに・・・)いて、内部監査人の客観性が低くなっている場合や、内部監査機能に十分な資源が割り振られておらず、検証手続が十分ではないなど内部監査の能力が低くなっている場合は、監査人は、内部監査人の作業を利用する範囲を狭くして、監査人自らがテストをする範囲を拡大しなければならないことになります[第121項]。(経理部門や企画部門が内部監査のようなことをすることもあると思いますが、客観性が低くなるので注意が必要です。)

 外部監査人自らが監査をするコストよりも、内部監査部門を強化するコストほうが一般的には低くなりますね。

 ということで、外部監査のコストを抑えるためには、内部監査の機能充実させることが重要となるわけです。
 
 米国では、外部監査人に支払う監査コストが上昇して問題となったわけですが、その理由のひとつに内部監査の結果を有効に利用できていない・・・ということが書いていますね。
●PCAOB
・2005.11.30 Report on the Initial Implementation of Auditing Standard No.2, An Audit of Internal Control over Financial Reporting Performed in Conjunction with an Audit of Financial (PCAOB Release No. 2005-023)
・2005.05.16 Staff Questions and Answers Auditng Internal Control over Financial Reporting

 もちろん、内部監査機能の強化は、財務報告に係る内部統制以外、つまり経営者の善管注意義務を果たすためにも重要ですから、財務報告に係らず、すべての内部統制の目的のために重要となりますね。

 優秀な経営者であれば、自らの身を守るために内部監査機能の強化をすると思います。従業員を疑うということではなく、自分が適正な経営を行っていることを利害関係者に証明することが少しでもできるからです。
 これから、内部監査機能の充実がキーになるでしょうね・・・。




このブログの中の意見は私見であり、所属・関係する組織の意見ではないことをご了承ください。

|

« 会社法施行規則 業務の適正を確保するための体制 | Main | 外部監査人は自己評価の結果を利用できない PCAOB 監査基準書第2号第126項 »

Comments

丸山 様

夏井です。

「客観性って何?」と問われると,なかなか難しい問題がありますね。

特に,自分に報酬を与えてくれる経営陣に対して監査の担当者が本当に客観的な気持ちでいられるかどうかは,(人間である以上)かなり疑問なわけで,もともと根源的な限界のようなものがあるのかもしれません。

超極論を言えば,捜査権限をもった公設監査人のような存在だけを認め,国がすべての企業に派遣して常に企業を徹底監視するというような社会システムでも構築しなければ経営陣から距離を置いた監査を完全に実施することなどできそうにないようにも思います。

しかし,そのような社会は,すでに「自由な社会」ではないですね。

ほんと,難しいです・・・

Posted by: 夏井高人 | 2006.02.11 22:40

夏井先生、コメントありがとうございます。

内部監査から離れて外部監査についてですが、
=====
自分に報酬を与えてくれる経営陣に対して監査の担当者が本当に客観的な気持ちでいられるかどうかは,(人間である以上)かなり疑問なわけで,もともと根源的な限界のようなものがあるのかもしれません。
=====
おっしゃるとおりです。人間社会で生きている限り誰とも何らかの利害関係なしに生きていくわけにはいきませんから客観性を100%確保できる状況というのは難しいと思います。

精神的な独立性は当然としても、周りの人から見て「客観的なの?」と疑問をもたれないようにすることが重要ですね。
制度的な監査の場合は、
客観性を確保できないリスト(例えば、監査対象企業の株を持つこと)などにより社会的な合意を作っていくしかないです。
で、その合意を監査人は守らないとだめですね。違反すると厳しい罰則ということにしないとだめですよね。
一定の資格要件を満たさないとその業務をすることを許されないように法律で規制されている専門家は特に専門家としての自覚と責任をもって日々の生活もしないとだめなんでしょうね。

Posted by: 丸山満彦 | 2006.02.12 08:59

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 外部監査人は内部監査人の結果を利用できる PCAOB 監査基準書第2号第121項:

« 会社法施行規則 業務の適正を確保するための体制 | Main | 外部監査人は自己評価の結果を利用できない PCAOB 監査基準書第2号第126項 »