総務省試算 電子投票を全面導入すると国費負担1400億円
こんにちは、丸山満彦です。総務省が出した試算によると、国政選挙を電子投票にすると1400億円の国費がかかるようです。
■日経新聞
・2006.02.011 電子投票、全面導入なら国費負担1400億円・総務省試算
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電子投票を国政選挙に全面的に導入した場合、投票所に配備する投票機や票集計用のパソコンの購入に約1400億円、レンタルでは約350億円の新たな国費負担が必要になることが11日、総務省の試算で分かった。
(中略)
購入した場合、投票機1台は約40万円。1投票所に平均6台設置すると、サポート費用など約20万円も含め経費は約260万円。全国で昨年9月の衆院選と同じ約5万3000カ所に配備すると計約1378億円かかる。開票所では、2600カ所で約16億円必要。総額は約1394億円となる。
レンタルの場合、1投票所当たりの経費は約62万円、全体で約329億円で済む。開票所経費は約16億円。総額約345億円となる。
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実施したら、何箇所で選挙無効になるのかがちょっと気になります。
【このブログ】
・2005.11.15 総務省 電子投票システム調査検討会発足
・2005.07.19 総務省 電子投票の普及促進 有識者検討会設置
・2005.07.10 可児市市議選 選挙無効確定!
・2005.03.11 名古屋高裁 可児市電子投票 無効
Comments
丸山 様
夏井です。
投票に用いるPCのセキュリティを確保するための予算(見積もり額)が1円も計上されていないのは,政府のセキュリティポリシーにも明白かつ完全に反するのでまずいのではないでしょうか?
Posted by: 夏井高人 | 2006.02.12 06:49
夏井先生、コメントありがとうございます。
さすがに、政府のセキュリティポリシーに準拠するためのコストも含まれているでしょう・・・
Posted by: 丸山満彦 | 2006.02.12 09:03
丸山 様
夏井です。
1投票所あたり20万円のサポート費用の中にセキュリティのためのコストも含まれているというわけですね。
「セキュリティ対策など何もしない」と明言しているのと全く同じような金額ですね。
やっぱり1円も計上されていないですよ。(爆笑)
Posted by: 夏井高人 | 2006.02.12 16:50
夏井先生、コメントありがとうございます。
投票機1台あたり約40万円の中に入っているのではないかと勝手に想像していましたが、どうなんでしょうね。
Posted by: 丸山満彦 | 2006.02.13 10:20
丸山 様
夏井です。
投票日は1日だけですが,テストや事後の確認などを含めると投票日前後のべ20日間くらいはマシンを動かしている必要性がありますね。テストなしでぶっつけ本番なのであれば,当然,選挙無効訴訟が多発する結果となり社会的コストが異常に増大することになります。国が勝訴しても敗訴してもそのための費用を税金で払うことになるのでしょうから,そのような事態は避けてもらいたい。
メンテナンスについては1日1万円として20万円でしょう。これだとメンテナンスをする業者に利益は発生しないので,もちろん手抜きになりますね。
マシンについては,業者の利益を0円として考えても40万円で20日分のセキュリティのコストを確保するのは無理だと思います。
ちなみに,利益を0円として試算しているので,マシンの機能それ自体にも何も保証がない状態だと考えて良いと思います。利益が出ないのに万全の保証をする企業なんて存在するはずがないです。
なお,上記推定では20日としましたが,実際には20日以上の日数を要する場合には,ほとんど破綻していると思いますし,公租公課その他の余計なコストを考慮に入れると,ほぼ間違いなく滅茶苦茶空想に近い非現実的な金額だと思います。
実際には,想定されている金額の2倍以上の金額が最低限必要になるでしょう。ここでいう「必要となる」ということの意味は,ちゃんとやろうとすればそれだけお金がかかるという意味であり,お金をかけなければ当然手抜きになって選挙無効訴訟が続出するという社会的コストが増大することになります。こっちのほうが何倍も大きなコストかもしれません。
ちなみに,レンタルの場合,投票終了後のPC内蔵ハードディスクの完全破壊と廃棄物処理のコストを含むデータ消去のコストなども必要になりますね。シンクライアントマシンの場合には,ホストのディスクの完全破壊と廃棄物処理のコストに置き換わることになります。
Posted by: 夏井高人 | 2006.02.13 12:50
夏井先生、コメントありがとうございます。電子投票システムは、現在のところ個人と投票結果が紐づかないようになっていると思います。
多分ですよ(実際に経験したことないので・・・)、投票所で通知書(投票前におくられてくるもの)と引き換えにカードをもらって、そのカードを機械に入れると1回投票できる仕組みになっているような感じです。で、そのカードは、毎回初期化しているはず。なので、ディスクの中には、投票結果のみが保存されているはずです。で、その集計結果は、正しいはず、、、です。
確か、岡山の新見市の選挙では250万円かかったという話をきいたことがあります(確か、記憶によると・・・)、どの程度のセキュリティがされているのかはよくわかりません。
集計結果も本当に正しいのかどうかはよくわかりませんね。そういわれるとそういう気もするし・・・
Posted by: 丸山満彦 | 2006.02.13 13:02
丸山 様
夏井です。
電子投票では,個人情報とのからみで投票の秘密が論じられることが多いですが,むしろ投票結果の操作の問題のほうがずっと大きな問題だろうと思っています。
これを避けるためには,1回の投票毎にそのデータに正確なタイムスタンプを付した上で任意のハッシュ関数を用いてハッシュ値をとり,取得したハッシュデータ及びそれに用いたハッシュ関数を示す符号を組みにしたデータを完全にセキュアなデータベースに入れて管理する必要があります。
これらすべてについて完全にセキュリティが確保されていなければならないし,投票者の数が相当数に及ぶ場合には1個の投票所全体の管理のために要する費用はかなり高額になると予想しています。
でも,きっとこんなことは誰も考えていないんでしょうね。
というわけで,選挙無効訴訟の続出により,国民の税金がまたまた浪費されてしまうことになりかねないなと危惧しているわけですよ。
この場合,国が勝訴しても敗訴しても,結局,税金から費用が支弁されるというところが最大の問題です。すごい額に及ぶかもしれません。(苦笑)
Posted by: 夏井高人 | 2006.02.13 13:32
夏井先生、コメントありがとうございます。自分も勉強不足なんですが、どうやって本当に投票数だけが機械的にカウントされているのかを保証しているのでしょうね。その保証の程度はどの程度の確からさなのでしょうね。
●総務省
・2005.05 電子投票導入の手引き(PDF)
Posted by: 丸山満彦 | 2006.02.13 15:08
丸山 様
夏井です。
伝統的な投票方式の場合でも電子投票の場合でも投票数が正確にカウントされたのかどうかは実は誰もわからないわけなんですが(笑),作為や操作が入りやすいかどうかについては,紙の投票用紙を用いた場合と電子投票とでは雲泥の差があるように思います。
紙の投票用紙の場合には,手間がかかりますが,その結果として,かなり多数の人間が共謀しないと大規模な情報操作がしにくいと思います。これに対し,電子投票では,手間がほとんどかからないので,極論すればたった一人で大規模な情報操作をやれてしまいますね。
だからこそ,会計監査などよりもずっと厳格かつ電子的に投票マシンを監視し,マシンの稼働状況を監査し,その結果を検証できるようにしておかないと駄目なんです。これが電子投票におけるセキュリティの基本です。この場合の問題点の多くは人間系の問題なので,理系の人が対処すべきではなく文系の人が対処すべきなんでしょう。
そして,この場合の監視の対象として絶対に省略できないのは,電子投票マシンを管理する人間です。また,メンテナンスする人間も監視の対象としなければなりません。選挙を運営する人間を最も疑うべき対象として捉えない限りセキュリティを実現することができないというかなり非情な世界だということができます。
また,遡って投票計算プログラムの健全性も国民によって検証可能でなければ民主国家であるとは言えませんね。ですから,そのソースコードが公開されており,公開されたソースコードからコンパイルされたオブジェクトによって動作しているということが完全に証明可能でなければならないと思います。
そのような諸点について「大丈夫だ」と明言して断行された某国大統領選挙の実例では,幾つかの選挙区において全選挙民の総数よりも多い投票数がカウントされていたことが判明したということがありましたね。とても有名な事例です。でも,誰もその奇妙さを最後まで追及しなかったところに何やらもやもやした不気味さを感じてしまいます。たぶん,その問題を追及しなかったマスコミも完全に買収されていたのでしょう。
というわけで,完全にセキュアで情報操作が困難な電子投票を実現することはかなり難しい状況にあると言わざるを得ません。これは,投票マシンのできが良いとか悪いとかいう問題なのではなく,完全に正しいシステムであればあるほどそれを悪用する者にとっては好都合だという自己矛盾みたいな世界の問題なんです。
そうは言っても,どうしても電子投票を断行しようとする人々もいるのでしょう。でも,もしそうしたいのであれば,セキュリティ対策としうて相当多額の費用を支出しなければならないと思います。
でも,残念ながら,そのための費用は今回の見積もりでは1円も計上されていないだろうと思うといわざるを得ないわけです。
Posted by: 夏井高人 | 2006.02.14 00:39
夏井先生、コメントありがとうございます。
1)電子投票では、集計が早い
というのが一番の社会的メリットのような気がします。ただ、
2)情報の管理が電子媒体になるので偽造・改ざんが紙よりも容易にできるかも
3)特定の人がそれを容易に変更できるかも
という問題がある。
とすればですね。
1)タッチパネル式の投票を行った後に、紙のバウチャーが出てきて、それを自分で確認して、紙のバウチャーを投票箱に入れる。
2)集計は原則、電子媒体の情報に依拠するが、紙のバウチャーと実際の集計結果をサンプルで評価する。
ということをするのがよいのかもしれません。
もちろん、紙の情報が紛失したり、投票者が持ち帰ったりする可能性もあるし、電子投票のデータが欠損したり、喪失する可能性もあるわけですが、その時は紙と電子情報を比較して決めればよい
3)決まらない場合は、再選挙
という方法がよいのかもしれませんね。単なる思い付きですが・・・。紙のバウチャーを残しておくと後で検証可能ですね。
発想としては、会計監査に近い発想です。
Posted by: 丸山満彦 | 2006.02.14 09:25
丸山 様
夏井です。
丸山説(?)に一票(!)です。
要するに,自動集計マシンだけでいいんですよ。
バウチャーの持ち帰りや破損もあるだろうけど,従来のやり方でも無効票が多数存在するわけだし,その数と比較して悪くなければ,その程度で十分じゃないでしょうか?
電子投票の場合,1つの投票所における投票全部が無効にされてしまう危険性もないわけではなく,それと比較すればずっと良い方法だと思います。
ちなみに,電子投票に関する法律問題については,湯浅先生が判例タイムズ誌にとても良い論文を書いておられるので,ご参照ください。
Posted by: 夏井高人 | 2006.02.14 17:15
夏井先生、コメントありがとうございます。湯浅先生の判例タイムズの記事は、出版と同時?に買って読みました。
丸山案の問題は、インターネット投票では採用できないことですね。
Posted by: 丸山満彦 | 2006.02.15 04:55
丸山 様
夏井です。
インターネット投票なんて全く存在しなくてもかまわないでしょ?
様々な支障があって投票日に投票所に行けない人々のためには,不在者投票制度をよりよいものにするための検討をさらに重ねればそれだけで十分です。
何でもかんでも(特に電波をつかって)リモートでやろうという考え方は,根本的に狂っていると思います。
本当に狂っている人は,自分が狂人であることに気づかないほどひどく狂っているのでますます手がつけらない。(苦笑)
これまでの人生で,私は,裸で歩いている王様を公道で見かければ,「裸だ」と声に出してきました。
当然のことながら,いろんなえらい人々から嫌われてばかりの人生だったけど,でも,裸の王様は裸の王様ですよ。(笑)
Posted by: 夏井高人 | 2006.02.15 08:36
夏井先生、コメントありがとうございます。
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インターネット投票なんて全く存在しなくてもかまわないでしょ?
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夏井説(?)に賛成ですね・・・
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様々な支障があって投票日に投票所に行けない人々のためには,不在者投票制度をよりよいものにするための検討をさらに重ねればそれだけで十分です。
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そうですよね・・・
インターネット投票ができるようになれば、投票率が上がるとかいう意見もありますが、それは違うような気がします。
そして、気持ちも込めずに簡単に投票できるようにすることの意味は何なのか?という気もしますね。
Posted by: 丸山満彦 | 2006.02.15 10:38