文書化のポイント
こんにちは、丸山満彦です。ISMSの認証取得、内部統制の監査など、いろいろと文書化を要求する話が増えてきていますね。多くの人から「文書化はどこまですればよいの?」と聞かれます。「全部しないといけないとすると切がない・・・」と言われます。
また、文書化をすすめることについて「マニュアルに書いていることしかしないマニュアル人間ばかりになる・・・」とか、批判的な発言もありますね。
個人的には、文書化をするメリットは
●物事がはっきりする
ということです。
どのような項目を文書化すればよいのか・・・ですが、
●みんなの意識がそろっていないようなところ
だと思っています。
もともと、みんなが間違いなく同じようにおもっていることや、同じようにできることは文書化する必要はありません。
「扉の開け方マニュアル」というのは普通ないですよね。「ドアのノブを握り、右に回し、回したまま手前にゆっくりとひく。」
ところが、ドアを開ける際に、カードをかざしたり暗証番号を入れたり複雑なことをしなければならない場合は、「扉の開け方マニュアル」が必要となるかもしれません。例えば、「ドアの横にある黒い部分(画面の下にあります)に従業員カードをかざしてください。ピっという音がし、「暗証番号を入力してください」という表示が画面に現れたら、暗証番号を入力し、確定キーを押してください。ピーという音がします。その後もう一度従黒い部分に従業員カードをかざしてください。扉が開錠されますので、そのまま扉のノブを引いてください。以上の手順により扉が開かない場合は、内線9910に連絡するか、B1の警備室までおこし下さい。」というようなマニュアルがいるかもしれません。
ということを考えれば、文書化をする時に気をつけることは、はっきりしないような文書化は意味がないということです。
例えば、「パスワードの変更は適切な期間内にすること」という文書があったとします。これでは、適切な期間について人により差が生じます。なので、適切な期間というのはどういうことかを明確にする必要があります。
例えば、「パスワードは1ヶ月以内に変更すること」というように明確にして文書化する必要があります。上位文書では適切な期間と規定し、下位文書で具体的に、XXシステムについては1ヶ月以内とする。という書き方もOKです。
どこまで文書化すればよいのかというと
●みんなが同じように行動できるようになるところまで
です。
適切な期間というのが、全員1ヶ月とわかっているのであれば適切な期間でもいいです。
文書化すべき項目と程度は、その組織によって異なりますので一概にどこまでとは言えません。組織の方針が明確に構成員全員に伝わっていて、リテラシーの高い組織では文書化の程度は少なくてすむでしょう。
次に、文書化するとマニュアル人間ばかりになるという批判ですが、これはマニュアルの利用の仕方を理解していない管理職のセリフだと思います。文書化の問題ではなく、文書化した後の運用の問題です。なので、マニュアル人間ばかりになるという管理職は、自分の管理能力がないということを宣言しているように思います。
マニュアルに書いていることは最低限することです。それさえすればよいというわけではありません。また、すべての状況をすべて文書化することはできません。これらははじめからわかっていることです。
管理職に必要なことは、なぜそれをしなければならないのかを理解させることです。日本のマニュアルはすることは書いていてもなぜしないといけないのかを書いていないことが多いですね。マニュアルの作り方にも工夫が必要でしょう。
管理職にとって重要なことは、「なぜそれをしないといけないのか」を理解させることです。そして、マニュアルでは対応できないことについて、主旨に反しない代替策を提示することです。
文書化を少なくしようと思えば、組織構成員の意識の共有化に力を入れる必要があります。例えば、教育なんかも有効な策でしょうね。
かつての日本の企業では、意識の共有化が十分にできていたのでマニュアルがなくても方針のぶれが少なかったのかもしれません。最近、コスト削減の目的で、さまざまな施策をとっているのかもしれませんが、その結果、マニュアルを整備しなければ方針が理解されて伝わらないのかもしれませんね。
そうなると、好き嫌いに関係なくマニュアルの整備は必要です。
あと、マニュアルで重要なことは、会社として正式な承認プロセスを経て承認されていることです。担当者が自分でマニュアルを作っていることがありますが、それではダメです。承認されていないマニュアルは裏マニュアルと思われてもしかたないです。
このブログの中の意見は私見であり、所属・関係する組織の意見ではないことをご了承ください。
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