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2005.10.25

社内不正を本当に知らなかった経営者の責任

 こんにちは、丸山満彦です。経営者が不正にかかわっている場合の経営責任は論外として、現場で大きな不正が行われていることを経営者自身が本当に知らなかった場合の経営者の責任ってどうなるのでしょうね。
 経営者が現場の一人一人の行動までいちいちチェックできないですよね。そんな中で従業員が不正をしてしまって経営責任を取らされるなんてひどい話って思いませんか?
 ましてや、合併相手の会社がやっていたことがそのまま現場でこっそり続けられていた場合の不正を行っていなかった経営者が責任をとらされるのであればすごく気の毒ですよね・・・

 
 なんて、ことはないですよね。

 たとえば現場の従業員が会社のお金(たとえば、1億円)を着服していた場合、そういうことが行われないようにする責任が経営者にあるわけで、それを怠っていた経営者の責任ですよね。
 本来支払うべき費用を支払わずに利益として計上していたのであれば、虚偽の財務報告をした・・・ともいえますよね。
 
 たとえ事の発端が自分が経営者でない時であっても、その後違法な状態が続いていたのであれば、その期間に経営者であった人にも経営責任は及びますよね。

 日本でもサーベンス・オクスリー法とよく似た法制度を導入しようという動きがあるようですが(サーベンス・オクスリー法と比較してどこまで厳しい法律になるかはよく見ておかなくてはなりませんが)、このような法制度が導入されると経営者は言い訳ひとつできなくなると思います。
 そして、最後に厳しい刑事罰・・・。経営者になる人はそれなりの「覚悟」を決めないといけないですね。

 「給料はそんなに増えんでもええ。気楽に生きたいから取締役なんていやや・・・」と大企業の取締役や執行役になることをあえて断り続けている友人がいるのですが、目先の報酬につられずに良く考えているように思います。




このブログの中の意見は私見であり、所属・関係する組織の意見ではないことをご了承ください。 

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Comments

丸山 様

夏井です。

要件事実論から考えて行くと,この問題の解答は明らかだと思います。

普通の不法行為(使用者責任)で考えてみると,使用者である法人の責任の根拠は,使用者としての雇用・監督における注意義務違反ということになり,かつ,使用者責任の場合には,その注意義務を尽くしたということを使用者の側で主張・立証しなければなりません。
この場合の注意義務の前提として,予見可能性と回避可能性の2つが存在していなければならず,誰にも予見できない事態や回避できない事態にまで過失責任が認められることはないということになります。

そこで,特に「予見可能性」が問題になるわけですが,実際には,当該法人の取締役会を構成する取締役が予見可能であったか否かによって判定されることになります。そして,予見可能か否かの基準は,特定の具体的な取締役の能力や資質などとは無関係に,一般に同種・同業の法人の取締役であれば予見可能であったと考えられる事態であれば予見可能だと判断されます。つまり,無能な取締役は,結果的に,無能ということだけで責任を負うことになりますね。逆に,非常に有能な取締役は,個人的には予見可能であったとしても普通の人であれば絶対に予見不可能であったと考えられる事態については責任を負わないという結論になります(そのような非常に有能な取締役が現実に認識していた場合には,故意または過失による責任を負うことになるので,ご注意あれ。)。

株主代表訴訟などで取締役の損害賠償責任が問題となる場合にも同じようにして考えることができるでしょう。

このように,民法上も商法(会社法)上も,取締役には非常に重い責任があります。会社の業務遂行上で誰かに損害を発生させないようにする一般的な注意義務だけではなく,当該業務に固有の危険を避けるべき注意義務を負っているわけです。

私は,優れた経営者には非常に高額の報酬を与えるべきだとこれまでも書いてきました。

世の中には,単に金額だけ見て「ひがみ」から非難する人もありますが,責任を負う可能性のない人がそのような非難をするのは完全に筋違いだと思います。重い責任を負っているからこそ,取締役としてなすべきことを全うするのに相応しい報酬が支払われて当然でしょう。

逆に,なすべきことを何もせず,銀座やゴルフ場などで遊んでばかりいる取締役が結果的に株主や第三者に対して損害賠償責任を負うことがあるのはこれまた当然のことで,そのような取締役が「お手盛り」で高額の報酬を得ることは,株主の利益(配当可能利益)を損なう横領行為または背任行為になるだろうと考えています。

したがって,「何も知らなかった」が問題となるのではなく,「悪い事態を知るべき立場にあったかどうか」及び「知ることができたかどうか」そして「悪い事態を避けるべき立場にあったかどうか」及び「避けることができたかどうか」が一番重要なポイントだということになりますね。もちろん,そのような事態の発生を現実に認識または予見していた場合には,それを避けるためになすべき回避義務を尽くしたかどうかがポイントになります。

Posted by: 夏井高人 | 2005.10.25 06:19

夏井先生、コメントありがとうございます。
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「何も知らなかった」が問題となるのではなく,「悪い事態を知るべき立場にあったかどうか」及び「知ることができたかどうか」そして「悪い事態を避けるべき立場にあったかどうか」及び「避けることができたかどうか」が一番重要なポイントだということになりますね。もちろん,そのような事態の発生を現実に認識または予見していた場合には,それを避けるためになすべき回避義務を尽くしたかどうかがポイントになります。
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きれいにまとめていただいてありがとうございます。
取締役(執行役)も自分がどのような執行責任があるのかを明確にしておかないといけないことになりますね。
 事業部が起こした粉飾決算の責任は事業部の責任者の責任になるのか、財務担当役員(いわゆるCFO)という人にも責任が及ぶのかということを明確にしておくべきでしょうね。
 サーベンス・オクスリー法のような法律ができると、いわゆるCFOは経理部の親分というのではなく、財務報告全体に責任を持つということで、権限も責任も大きなものになるのだと思います。
 財務報告だけでなくて、情報セキュリティでも、他のリスクマネジメントでも同じですね。気軽にCXOという役職をつくるのではなくて、責任と権限を明確にしないと・・・と思いますね。

Posted by: 丸山満彦 | 2005.10.25 08:59

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