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2005.10.21

敵対的買収を受けた経営者はどうするべきか?

 こんにちは、丸山満彦です。ここ1、2年の話だけでもないのですが、最近、「敵対的買収」という記事が多いようですね。まぁ、昔から敵対的買収というのはあったわけですが、本来敵対的買収というのは、現経営陣の了解を得ないで買収するということを言いますね。でも、それが悪いかどうかとは別ですね。

 
 私が商法を勉強したころは株式会社というのは、
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 大きな事業をするためには多額の資金が必要となるが、多額の資金を特定の人から集めるのは容易ではないので、多くの出資者を募ることにした仕組み。出資者は利殖には興味があるけど、経営には興味がない。なので、利益を上げてより効率的に儲けさせてくれる人を経営者としてつれてくる。その経営者が儲けさせてくれないなら、報酬を払うのもあほらしいので、クビにして、より儲けてくれる経営者をつれてくる。
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と教えてもらった記憶があります。

 経営者は、株主のために誠心誠意つくして働かなくてはなりませんね。現経営陣に敵対的な株主により買収された場合に経営者がとるべき対応は、経営者を辞めることかもしれませんね。もっと経営者として自分の価値を認めてくれる株主を探したほうがよっぽどよいですよね。

 なんで、経営者は辞めないのでしょうね。

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Comments

丸山 様

夏井です。

全く同感です。

すべての経営者は,多数株主に対して奉仕すべきであり,経営に興味のない株主であってもその株主に最大限の利益をもたらすために存在しているのですから,多数株主を経営陣が「敵対」と評価したとたんに背任の一種を開始したことになると思います。

「敵対」と評価することのできる法的地位を有する唯一の存在は,今後多数株主になりそうな株主によって利益を損なわれる危険性があると判断した現時点での多数株主だけです。そのような現時点での多数株主が現在の経営陣に命じて株式買収対策を講じさせることは法的にも認められることでしょう。

しかし,多数株主の意向とは無関係に,経営陣だけの判断で多数株主を「敵対」と判断し,そのような声明を出すことは,「商法(会社法)を遵守しない!」と自ら宣言するのと同じことになります。検察当局は,そのような経営陣を発見したときは,直ちに背任などの容疑で捜査を開始すべきなのでしょうね。

そのようにされるのがいやなら,何度も言うとおり,上場をやめて個人商店にすれば足りることなので,そうすべきなのでしょう。株式会社である限り,個人商店であることは許されません。

それなのに形式は株式会社のままで実質は個人商店であろうとすれば,それ自体としてコンプライアントではない状態を造りだしていることになる(=取締役の忠実義務違反・善管注意義務違反の状態を積極的に造りだしていることになる)のだという自覚をもって欲しいです。

Posted by: 夏井高人 | 2005.10.21 08:29

夏井先生、コメントありがとうございます。
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多数株主を経営陣が「敵対」と評価したとたんに背任の一種を開始したことになると思います。
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なるほどです。経営者の方は気をつけないといけませんね。

Posted by: 丸山満彦 | 2005.10.21 20:32

丸山 様

夏井です。

経営陣にとってプラスになることも書かないと公平でないので,経営陣が困らなくてもよくする方法についてコメントをしたいと思います。

経営陣は,現時点での多数株主によって支持されている(少なくとも非難されていない)ということが前提ですが,自分の気に入らない株主が出現しないようにするためには,現在の株主が誰かに株式を譲渡してしまわないようにすればよいということになりますね。

誰かが新たに多数株主になろうとしても,増資でもない限り,誰か他の株主が保有する株式を何らかの方法で取得する必要があります。

ですから,現在の多数株主が他の誰かに株式を売って売買益を獲得するよりも株主のままでいたほうがずっと得だと思うような経営をすればよいことになります。

言い換えれば,経営陣が株式の買収を避けたいのであれば,現在の株主の利益を重視する経営をすればよいわけです。

これは,とても簡単かつ単純な道理ですね。

もし,株主重視の経営をしていないのであれば,現在の多数株主は保有株式を売却してその売却益を得たほうが得だと考えるでしょう。つまり,その時点で,経営陣を支持していた(または,少なくとも非難していなかった)多数株主は,現在の経営陣を見限った(または,見捨てた)ことになります。いわば,そのような経営陣は,参謀本部から見捨てられた前線司令官のようなものです。

そうならないためには,参謀本部が常に喜んでくれるように,刻苦勉励,連戦連勝し続けなければなりませんが,そういうことをやるのが好きな人が経営者になるのでしょうから,苦痛でも何でもないどころか毎日毎日がとても楽しくてしょうがないことになるでしょう。

もしそれがいやになったり疲れたりしたならば,退役して田舎で暮らす自由は認められているわけですしね。

というわけで,経営陣にとっても非常にハッピーなコメントをしました。

Posted by: 夏井高人 | 2005.10.21 21:32

丸山 様

夏井です。

一連の買収劇を観戦していると,「双方ともに非常に奇妙なことをやっているなァ」という気分になってしまいます。

新たな多数株主が経営陣に対して新たな企業戦略を遂行するように要求するチャネルは基本的には株主総会なので,それ以外の場で要求するのはおかしいし,そもそも経営陣に対して何も要求しなくてもぜんぜん構わないのにマスコミや経営陣はそれを要求する。むちゃくちゃだと思います。新たな多数株主は,何の説明もなしに,現経営陣をばっさりと切り捨てて新たな経営者を送り込むことも全く自由なので,そもそも現経営陣に対する説明義務が存在していない。これは,会社の所有者として当然のことだと思います。所有者は,自分の持ち物をどのように運用しようと基本的に自由です。

にもかかわらず,新たな多数株主は,それを説明しようとする。だから,ますますもって妙なことになっていく。

また,会社内の従業員が反対の意見を述べる。意見を述べる自由はあるけれども,労使交渉ではないので権利ではない。権利ではない意見について,多数株主が何ら耳を傾けなくても何も問題はないと思います。

にもかかわらず,新たな多数株主は耳を傾けているようなポーズをとろうとする。だから,更にますますもって妙なことになっていく。

何となく,株主の意向や利益と関係なく,経営者と労働者が勝手に企業を運営してよいことになっている国のように見えます。これは,経営者と労働者の共同正犯による横領または背任に相当する行為になりますね。

法律上は,「会社」というものは,株主に利益を与えるために,経営陣がマネジメントを担当し,労働者が実際に働くというための組織に過ぎず,それ以上でもそれ以下でもないのに,そのことが知られていないということになりますね。

もし仮にそうであるとすると,法人格否認の法理により,株式会社としての法人格を否認されるべきものであり,会社でないのに会社のような形式を整えて株式上場していることそれ自体を詐欺行為としてとらえるべきことになるだろうと思います。

検察当局は,大至急,捜査を開始すべきでしょう。

Posted by: 夏井高人 | 2005.10.22 07:56

夏井先生、コメントありがとうございます。

 なるほど・・・の切り口です。

【経営者が株主に買収理由を質問する意味】
 株主総会以外の場で一部の株主と経営者が経営方針について話し合いをするのはおかしいと思うんですよね。特に上場企業でそれを密室でするのは良くないような気もします。他の株主や投資家を無視したことになりますよね。
 そういう必要性を感じるのであれば少なくとも株主総会を開催し、その場で株主と取締役が議論すべきだし、取締役としてふさわしくないと思えば自分を含む株主全体の利益にかなう経営をしてくれる別の経営者を取締役にするための決議をするできですよね。
 株主がいちいち経営に口を挟むべきではないし、経営者が株主にどういう経営を望んでいるのかを聞く必要もないですよね。株主が望んでいるのは企業価値をあげて配当をすることですよね。それは買収する側の経営者に対しても同じですよね。

【経営者と労働者の共同正犯説】 
 本来株主の財産である会社の財産を、経営者と労働者が共同して自分達のために利用しているのであれば大問題ですね。
 以前、ネット関連会社が報道機関を買収しようとした時に、報道機関の労働者が強固に反対した背景に、ネット関連会社と報道機関の労働者の賃金格差があるのでは?という話を聞いたことあります。買収されると賃金が下がるかも・・・という話です。そうであれば、経営者と労働者の利害が一致し、労使共同で買収に反対しますよね・・・。
 適切な労働対価として労働者に給料を支払わなければなりませんが、適切な労働対価以上の給料を労働者に支払い、その結果、本来ならば株主に支払うべき配当が削られているのであれば、それは問題ですね。
 大手のテレビ局でみれば、有価証券報告書からみると平均給与は1200万円~1600万円(40歳前後)、役員報酬2500万円~3500万円ってところでしょうかね・・・(全部見たわけではないですが・・・) 

Posted by: 丸山満彦 | 2005.10.22 10:41

丸山 様

夏井です。

株主は,労働者との間での団体交渉の当事者となる法的地位を一切有しないので,労働組合が株主に対して労働条件をつきつけることは本来的に完全に筋違いのことだと思います。

むしろ,労働組合は,経営陣に対して,誰が株主になっても労働条件を低下させないように要求し,経営陣との間で団体交渉をすべきですし,法律もそのように命じています。

もし,経営陣が労働者と談合して株主の利益を一方的に損なう行為をしているのであれば,それは,株主に対する横領または背任そのものですね。

会社の利益は,借入金の返済や公租公課などの支払いにまわす分を除き,株主と経営者と労働者との間で適切に配分されなければなりませんが,その決定権を持っているのは経営陣だけです。その経営陣が労働者と談合し,株主に対して一方的に不利な利益配分を決定することは明らかに違法ですね。そして,経営陣と労働者がそのような違法行為を共同して実行している場合には,共同正犯として全員処罰されるべきことになるだろうと思いますし,取締役が会社に対して損害賠償責任を負う場合にも労働者もまた共同不法行為者として連帯して損害賠償責任を負うこととなり得るでしょう。

ですから,労働者としては,経営陣と決して談合することなく,正々堂々と労使交渉をすれば良いのだし,また,それ以上のことをしてはならないわけです。そして,経営陣は,株主に対する配当利益のことをきちんと判断した上で正々堂々と労使交渉に臨めば良いと考えています。労働組合法に定める適法な団体交渉は正当な権利の行使ですから,犯罪行為にはならないし,不法行為にもなりません。

ただし,株主に一方的に不利になるような内容で談合してはならないし,本来なら株主に対して回すべき利益を横取りして山分けする行為は,会社との関係では横領または背任になるということなのです。

Posted by: 夏井高人 | 2005.10.22 12:53

夏井先生、コメントありがとうございます。
一連の事件でいろいろなことが明らかになってきましたね。
 個人的な見解ですが(って、わざわざ断らなくてもこのブログは全てそうなんですが・・・)、企業買収って仕組みについては、批判的な声も多いのですが、不効率なものを効率化するための仕組みとして、社会的に見て非常に重要な機能だと思っているんです。
 行き過ぎると別の問題を生むわけですが、それは別途解決策を考えればよいわけです。

Posted by: 丸山満彦 | 2005.10.22 23:57

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