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2005.09.15

経済産業省 バプコメ 営業秘密管理指針改訂(案)

 こんにちは、丸山満彦です。経済産業省から「営業秘密管理指針改訂版(案)」に対する意見募集が行われていますね(2005.09.08)。

 
■経済産業省 産業構造審議会 知的財産政策部会 不正競争防止小委員会
・2005.09.08 「営業秘密管理指針改訂版(案)」に対する意見募集について
・・営業秘密管理指針改訂版(案)

 前から変更されていないところもあるけど、情報セキュリティに関係するところで気になる部分をピックアップ。

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第3章 営業秘密を保護するための管理のあり方
(2) 判例にみる秘密管理性

(前略)
①情報の秘密保持のために必要な管理をしていること(アクセス制限)
②それが(アクセスした者に)客観的に秘密であると認知されること(客観的認識可能性
(後略)
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これを更に整理して
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(前略)
A.アクセスできる人が限定され、権限のない者によるアクセスを防ぐような手段が取られている
B.アクセスした人が、管理の対象となっている情報をそれと認識し、またアクセス権限のある人がそれを秘密として管理することに関する意識を持ち、責務を果たすような状況になっている
C.それらが機能するように組織として何らかの仕組みを持っている(組織的管理)
(中略)
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【判断材料】
A.アクセスできる人が限定され、権限のない者によるアクセスを防ぐような手段が取られている

・ アクセス権者の限定(大阪高裁平成14年10月11日、東京地裁平成16年5月14日)
・ 施錠されている保管室への保管(東京地裁平成11年7月23日)
・ 事務所内への外部者の入室の禁止(東京地裁平成16年5月14日、大阪高裁平成17年2月17日)
・ 電子データの複製等の制限(大阪高裁平成17年2月17日)
・ コンピュータへの外部者のアクセスの防止措置(東京地裁平成16年5月14日、大阪地裁平成15年2月27日)及びその実効的な実施(東京地裁平成15年5月15日)
・ システムの外部ネットワークからの遮断(東京地裁平成17年6月27日)


B.アクセスした人が、管理の対象となっている情報をそれと認識し、またアクセス権限のある人がそれを秘密として管理することに関する意識を持ち、責務を果たすような状況になっている

・ 「秘」の印の押印(東京地裁平成12年9月28日、東京地裁平成17年6月27 日)
・ 社員が秘密管理の責務を認知するための教育の実施(大阪高裁平成14年10月11日、東京地裁平成16年5 月14日)
・ 就業規則における秘密保持義務についての明確な規定(東京地裁平成11年7月23日、東京地裁平成17年2 月25日)
・ 誓約書や秘密保持契約による責務の設定(京都地裁平成13年11月1日、東京地裁平成17年6月27日)


C.それらが機能するように組織として何らかの仕組みを持っている(組織的管理)

・ 情報の扱いに関する上位者の判断を求めるシステムの存在(東京地裁平成11年7月23日)
・ 外部からのアクセスに関する応答に関する周到な手順の設定(大阪地裁平成14年10月11日)

(中略)

 それぞれの企業の規模や組織形態、情報の形態等の状況により、これらの要素のうち不可欠な要素は異なり、したがって、これらのすべての要素を満たさなければ秘密管理性が否定されるというものでもないが、裁判例では、営業秘密の管理についての肯定的な要素の積み重ねが秘密管理性の認定につながっている(大阪高裁平成14年10月1 日)。
 一方、これらの要素の一つでも満たせば秘密管理性が認められるというものでもなく、肯定的な要素もあるが否定的な要素もある場合においては、秘密管理性が否定されたものもある(大阪地裁平成14年9月26日)。

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あと、退職者や派遣従業者に係る部分ですね。

【退職者】
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退職者に対して秘密保持義務を課す場合には、一般的に秘密保持契約を締結する必要がある。特に、現職の従業者等及び退職者と秘密保持契約を締結する際には、秘密保持義務が必要性や合理性の点で公序良俗違反(民法第90 条)とならないよう、その立場の違いに配慮しながら、両者がコンセンサスを形成でき
るようにすることが重要である。
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【派遣従業者】
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派遣従業者をどのような業務に従事させるかについては、派遣契約で明確化する義務があるが、営業秘密管理に関する秘密保持規定については、特段の義務は課されていないため、どの程度の秘密保持義務を課す必要があるのかを派遣契約等で明確化する必要がある。
(中略)
派遣先企業と派遣従業者とが直接秘密保持契約を締結することが直ちに法律違反になるわけではないが、労働者派遣事業制度の趣旨からは、派遣先は、派遣従業者と直接秘密保持契約を締結するよりもむしろ、雇用主である派遣元事業主との間で秘密保持契約を締結し、派遣元事業主が派遣先に対し派遣従業者による秘密保持に関する責任を負うこととすることが望ましいものである。このほか、労働者派遣法によれば、派遣従業者は、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない法律上の義務を負うものとされている。
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個人情報保護法の安全管理措置との関係についても一言ふれていますね。
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※個人情報保護法の施行に伴う留意点
平成17 年4 月の個人情報保護法の施行を期に、個人情報保護を名目として、個人情報とは無関係の営業秘密をも対象とする包括的な秘密保持契約を締結する場合がある。
しかしながら、個人情報と営業秘密はその保護範囲等も異なるため、従業者側の「納得感」の向上の観点からは、個人情報保護に関する契約と営業秘密に関する秘密保持契約は峻別する(別書面であるか否かは問わない)ことが望ましい。
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よく読んでおこっと・・・



このブログの中の意見は私見であり、所属・関係する組織の意見ではないことをご了承ください。

 

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