児童ポルノ 検挙数の約20%がサイバー犯罪?
こんにちは、丸山満彦です。児童ポルノと言えば・・・の奥村弁護士に、児童ポルノってサイバー犯罪ですかね・・・っと素朴な質問をしたところ・・・・
サイバー犯罪の面と福祉犯の面の両面があります。児童ポルノ犯人にとっては、ネットが有力なツールになっています。
実務的には「サイバー」の面が強調されて、かつ、見た目の「わいせつ図画」との類似性から「わいせつ図画」と混同されて、被害者の存在を忘れているような感じです。
と言うコメントをいただきました。
児童ポルノのうちどれほどがサイバー犯罪なのか・・・・
内閣府の「青少年白書H16年版」によるとH15年中は児童買春・児童ポルノ法違反で1,945件,1,374人を検挙しているそうです。
http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h16zenbun/html/honpen/hp020304.html
平成16年の「サイバー犯罪の検挙及び相談受理状況等について」から数字をひらうと、H15年中の児童買春・児童ポルノ法違反によるサイバー犯罪としての検挙数は、児童買春269件、児童ポルノ102件合せて371件となります。
児童買春・児童ポルノ法違反の検挙数のうち約20%がサイバー犯罪ということになるようですね・・・
他の法律のサイバー犯罪検挙率を見ないとわからないのですが、多いような気がします。。。=>専門家の方、どうですか?
しかし、青少年白書を見る限り、福祉犯としての児童買春・児童ポルノの割合も多いですね。
このブログの中の意見は私見であり、所属・関係する組織の意見ではないことをご了承ください。
Comments
現象として観察すると、児童ポルノは伝統的存在としては有体物ですが、質量・体積がある場合は大量流通にもコストやリスクが伴います。データとして無質量・無体積で存在するようになりインターネットが行き渡るようになると、かさばらないのでネット上で爆発的に拡散するようになった。「サイバー」の部分で問題が顕在化した。だからサイバー犯罪の代表選手とされるのだと思います。
純法律的に観察すると、児童ポルノがサイバー犯罪になるとき、典型としては、メール送信やweb掲載で流布されたり、pcで編集・ダビングされたりすると、擬律が難しくなります。サイバー空間で行われる全ての行為を評価し尽くせないです。件数的には少なくても、懸案としては大きい。
たとえば、児童ポルノのweb掲載。
旧法時代に「ダウンロード『販売』は『販売罪』ではない」という判決をもらっています(大阪高裁h15.9.18)。http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/WebView2/27642C03FB01140B49256E6700180854/?OpenDocument
現行法で擬律しても、同様の行為は、
① サーバーへの提供罪(7条1項)
② サーバーを児童ポルノ化するから製造罪(7条5項)
③ サーバー上での保管罪(5項)
④ サーバー上での陳列罪(4項)
⑤ サーバー上での提供罪(4項)
に該当します。
web掲載という社会通念上まとまった行為・児童ポルノ犯としては顕著な行為類型について、5通りの評価があるというのは、立法が遅れている・未成熟な証拠です。児童ポルノ法は99年施行、04年改正なのにこのありさま。
ここにも、サイバー犯罪として注目される理由があります。
Posted by: 奥村(大阪弁護士会) | 2005.03.08 07:30